第4話 NYであなたにエスコートされて。~パーティ研修会。
朝のミーティングで、伝えられる。
「え~。柴崎と佐藤は、ドレスについて、
打ち合わせがあるから、
このミーティングの後に、残るように。
自前のどレスなら、終わったあとに
ドレスを持って、ここに集合。」
二人は返事をする。
「佐藤さんは、ドレスはどうなの?」
「自分のを持ってきてる。」
「すごい!自前なの?」
「うん。無理矢理持たされて。」
「え?」
「なんでもないよ。柴崎さんは?」
「私は、この間の買い物で、買ってきた。」
「そうなんだ。」
「じゃ。ヘアメイクの打ち合わせだね。」
「そうなるかな?」
「うん。」
「話し方で思うんだけど、聞いていい?」
「なあに?」
「佐藤さんて、何者?」
「へ?私は私だけど?」
「うん。でも何か、引っかかるのよね。」
「宮下さんと仲いいし、ドレス自前だし?
もしかして、専務とも仲よかったりして?」
「ははは。」
「ん?」
あたしは少しの沈黙のあと。。。
「はっきりとは言えないけど、多分。」
「多分?」
「今日、パーティに来るかも。」
「え?専務が?」
「うん。」
「だって、今月、超忙しくなかったっけ?」
「あの人の全力は、誰にも止められないから。」
「え?」
私は、苦笑しながら小さい声でつぶやいた。
メークの済んだあと、上司の上田課長が来て、
「ええと、パーティのエスコートだけど。」
「柴崎さんは、野村くんね。」
「はい。」
「佐藤さんは・・・。」
止まったので、視線を上田課長に合わせると、
上田課長は、紙と私とを交互にみて、
びっくりした顔をしている。
私は、苦笑してしまった。
その顔をみて、我に返った上田課長は、
やっと声に出してくれた。
「佐藤さんのエスコートは、伊能専務が、
是非ということだそうです。。」
柴崎も、あんぐりしてるし。
私は、苦笑い。
上田課長は、紙を凝視して、私に言う。
「佐藤さん、知ってたの?」
「知っていたというか…。多分専務が、
この間、食事研修会に乱入してきた人に、
色々、ハッパをかけられたんじゃないかと。。」
「え?」
余計なこと言ったらいけないと思い、
そこで、口をつぐんだ。
しばし私が口を閉ざしていた時、
私の携帯電話が鳴る。
「ちょっとすみません。」
「どうぞ。」
「はい。佐藤です。」
「佐藤?俺。」
「うん。」
「今、大丈夫か?」
「少しなら。」
「分かった。さっき、空港に着いて、
あと30分で着くから、部屋に居てくれるか?」
「わかった。待ってる。」
「うん。じゃ、あとでな。」
携帯を切って、椅子に戻る。
「あと、30分で、こちらに着かれるそうです。」
「専務からの電話だったの?」
「はい。」
「どうして、佐藤さんの携帯番号を。。」
私は、途中で言った。
「専務のことですから、部長に聞いて
おいたのではないでしょうか。」
「あ。そうね。そうよね。」
「はい。」
それ以後はしらばっくれて、
私は無言になった。
コンコン。
ノックする音がする。
ドアのそばの椅子に座っていた
上田課長が対応してくれた。
「伊能です。」
すぐにドアを開ける上田。
「すみません。待ってもらって。」
「いえ。専務もお疲れでしょう。」
上田課長の笑顔がいつもより甘い。
「来てすぐに悪いですが、あまり
時間もないので、すぐに行きましょうか。」
「野村も廊下で待っていますし。」
「そうですね。」
柴崎が先に出て、上田課長が出て、
私もパーティバックに携帯を
入れて、戸締りをする。
廊下に出ると、伊能さん。
「じゃ。佐藤さん。」
「はい。よろしくおねがいします。」
「こちらこそ、お願いします。」
私は、一度だけジッと、
伊能さんの目を見て、
伊能専務のさし出す手に
腕を絡めた。
あたしの腰に軽く手をあてて、
エスコートしてくれる。
伊能専務と私は、伊能さん家の車に乗った。
ドアが閉められて、私は、少し力を抜く。
「ごめん。急にエスコートすることになって。」
「類に、ハッパかけられたんでしょ。」
「なっ…。」
珍しく、伊能さんの顔が赤くなってる。
「疲れてるんじゃない?大丈夫?」
「飛行機のなかで、爆睡してきたから、
大丈夫。」
「それなら、いいけど。」
「ところで佐藤。そのドレス似合ってるよ。」
「ありがとう。」
私は、少し頬が熱くなった。
しばらく走ると、車が会場の入口に付けられる。
私は、伊能さんにエスコートしてもらって、
車を降りたのだが、そこは…。
NYのあいつの本拠地、Mホテルだった。
「え?なんでここ?」
「どうせなら、実践で学んでもらおうって
ことになって、直前に社長から連絡が
入ったんだ。
ってことで、俺は佐藤より、他の5人の方が
心配。」
「ははは。」
私は、乾いた笑いをするしかなかった。
伊能さんと伊能さんの秘書、それから、
私は、エレベーターで、会場の階へ昇る。
泊まる直前に、伊能さんの秘書、斎藤さんが
言う。
「お二方とも、何かありましたら、
私の携帯まで、ご連絡下さいませ。」
伊能さんは、うなづいている。
私は、はいと、返事した。
伊能さんがエスコートしてくれるから、
とても自然に、私は会場入りした。
会場では、伊能さんが来たといういうことで、
ザワザワとした空気になる。
小さな声で話す。
「伊能専務。」
「ん?」
「挨拶周りは。。。」
「今日は社長がいて、あいさつ回りして
くれるから、俺は、佐藤のそばにいるよ?」
「でも。そういうわけには。。」
「仕事を超特急で済ませたご褒美だって。
だから、いいの。」
「ご褒美?」
「そういうこと!」
私は、なんにも言えなくなってしまった。
そんな私に、シャンパンを持たせて、
乾杯しようと、促す伊能専務。
グラスを軽く合わせて、ゆっくりと飲む。
いつの間にやら、お皿にも、食べ物を
取ってきてくれて、私に持たせてくれる。
お腹に収まって、ようやく落ち着いてきた。
その時を待っていたのだろう。
伊能さんが、グラスとお皿を奪い取って、
テーブルに置くと私に手を差し出す。
「踊っていただけますか?」
私はびっくりしたけれど、断るわけには
いかなかった。
裕之の手に、手を静かに合わせると、
ダンスホールの真ん中へと、連れ出される。
途中、上田課長と仲間達のあんぐりした顔が
視界の隅に入ったけれど、苦笑するしかない。
踊っている間、私はしっかりと美作さんに
ホールドされて、甘い声で耳元で話され続けた。
「佐藤。」
「何?」
「明日、研修見学に行くよ」
「なんで?」
「佐藤参観?」
裕之は、耳元でクククと笑う。
「ていうか、どうせ行くなら、佐藤と英会話の
講師して来いって。」
「何それ?」
「社長から、提案?」
さすが、伊能のおじさまであり、社長さん。
「ってことで、パーティのあと打ち合わせな。」
私は、伊能さんの目を見て、小さいため息を
ついた。
*
パーティが、終わりに近づいて、私は、
伊能さんに、Mホテルのスィートに拉致られた。
そこで、伊能さんが、カクテルを作ってくれて、
飲みながら、打ち合わせしている。
「ねえ。伊能さん。
二人で講師するってことは、二人が友人同士
だって、言うって事よね?」
「ま。そうなるな。イヤか?」
「そんなことないけど。」
「ならいいけど。」
「そうだ。社長から伝言。」
「社長から?」
「ともかく、伝言。」
「う、うん。」
スーツのポケットからメモを取り出し、
それを読み上げる。
「聖美ちゃん。うちはいつ来ても、
構わないよ。」
っ!
美作さんも、今、メモを見たみたいで、
目を見開いていた。
「へ?遊びに来てもいいよってこと?」
裕之は、聖美の言葉に笑って、言う。
「今は、そう思っておいて。」
「そういう意味じゃないの?」
「まあまあ。今はそうでいいよ。」
伊能さんは微笑んで、明日の打ち合わせの
話をしだす。
こうなると、絶対話してくれないもんね。
妙なとこで、頑固だし。
「聞こえてるぞ。佐藤。」
「あら。続きしましょうか。」
「ったく。」
二人での打ち合わせは、2時間になった。。。
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