第42話 勘違い

「――あっ、けーくんおかえりっ♪」


 勉強合宿3日目の放課後である。

 僕が帰宅すると、蜂蜜色の天使が出迎えてくれた。


「あぁそっか……今日からカラオケでの勉強会がなくなったんだもんな」


 自浄作用が働いて、琴葉さんの所属グループは期末テストに向けて大人しく自習する道を選択した。

 だから琴葉さんは用事もなく僕んちに直帰しているわけだ。

 合い鍵を合宿期間中だけ持たせているから、先に帰っている光景は特に不思議でもない。


「ねえねえけーくん、ところでさ」

「何か?」

「お風呂にする?」

「え?」

「ご飯にする?」

「へ?」

「それとも……――わ・た・し?w」


 ――あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……!!!

 突然新婚さんっぽい3択が繰り出されて景太郎王国無事陥落(何日かぶり4度目)。

 緊急可愛い事態宣言発令。我が国はもうダメです(白旗)。

 属国化不可避。


「へっへー、一度でいいから言ってみたかったんだ~コレw」


 ……そんな思い付きの行動で僕を亡き者にしようとしないでくれ。

 自らの破壊力を理解してください本当にお願いします……。


「で、けーくん実際どうする? お風呂もご飯もまだ早い?」

「……早すぎだよ」

「だよねw」

「あぁ……だから僕はその3択なら琴葉さんとすることを選ぶよ」

「!?」


 ぼふんっ、と頭から煙を出す勢いで琴葉さんが顔を真っ赤にしてあわあわし始めている。

 ……おや、どうした。


「す、するって何を……? わ、私まだお風呂入ってないし色々と心の準備が……」

「? ……勉強とお風呂になんの関係が?」

「へ……? ……も、もしかして私とする、って勉強のこと……?」

「それ以外に何があるんだ?」


 今の状況で3択から琴葉さんを選んでやることなんて勉強しかないだろ。


「――んもぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」


 急に猛牛と化した琴葉さんである。


「変な言い回ししないでよっ、んもぅ、ばかばかっ……!」


 ポカポカと僕の胸元を軽く叩き出す琴葉さんであった。

 な、なるほど……僕の返事を妙な方向に捉えてしまったのか……。

 日本語ってムツカシイネ。


「わ、悪い……でもそれは琴葉さんが勝手に勘違いするのが問題というか……」

「ふんだ……けーくんのえっち」

「はっ? いやいや……どっちかって言うとこの場合えっちなのはそういう勘違いをした琴――」

「それ以上言ったら私泣く……」

「……ごめん……」


 ……忘れてあげるのが優しさだな。


「じゃあ琴葉さん……気を取り直して勉強だ」

「うん……しよしよ」


 照れ臭そうに頷いた琴葉さんと共に僕の部屋へ。


 それでもしばらくは多少気まずいモジモジ空間と化していたのはここだけの話である……。

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