第41話 私だけの
「弟が過保護~……」
勉強合宿2日目の夜。
僕の部屋でテスト対策を進めていると、着信したスマホを見て琴葉さんが嘆きのため息を吐き出していた。
「シスコンブラザーから何か来たのか?」
「今何してるか写真撮って送って欲しいんだってさ」
まさかの抜き打ちチェック。
それは心配性だな。
まぁ気持ちは分かる。
僕もいちるがお泊まり会に出掛けたときは定時連絡を約束させる。
親が海外赴任中ゆえに僕がしっかりしなきゃ、という気持ちから来る行動ではあるけれども。
「ねえ、いちるちゃんのこと一瞬借りてもいい? 一緒に撮って弟にアリバイ写真送りたいからさ」
「いちるが許可するなら全然どうぞ」
「ほなちょっとお隣の部屋行ってくる~」
琴葉さんがよいしょと立ち上がって居なくなる。
僕は勉強を続ける。
琴葉さんは1分ほどで戻ってきた。
「いちるちゃんマジ天使☆ 快くアリバイ工作に付き合ってくれたしw」
「弟くんは納得してたか?」
「とりあえずはね」
「なら良かったな。にしても、弟くんがシスコンの理由って何かあるのか?」
「まぁやっぱり昔の私が貞子だったからじゃない? 先日も言ったけど、俺が強くなって姉ちゃんを守らなきゃ、とでも思ったんだと思う。それが今も続いてるのはオイオイって思っちゃうけどさ」
「姉貴としてはウザいだけ?」
「ううん、ありがたさはあるよ。でも私がこうやって気を遣って機嫌を保ってあげる感じはめんどいよね正直。私にカレシ出来たらどうなっちゃうの? って話だし」
琴葉さんはやれやれと肩をすくめている。
「何かしら能力を持ってる男じゃないと、弟くんは琴葉さんのカレシとして認めてくれなさそうだな」
「そだね。だからたとえば……本当にたとえばの話だけど、けーくんのことならあっさり認めてくれたりして」
チラ、と横目で僕を眺めてくる琴葉さん。
ちょっと赤いお顔でのチラ見。
僕もたまらず気恥ずかしくなってしまう。
「ど、どうだろう……僕は勉強くらいしか取り柄がないからな……」
「学生だからそれでいいじゃん……」
「それはそうなんだが……」
「ま、弟がけーくんを知ってどう思うかは別にしてさ……こうやって実際に助けられてる私はすっごくすっごくけーくんの能力買ってるからね?」
……ありがたきお言葉。
その気持ちを裏切らないようにせねば。
「ところでさ、けーくんって勉強っていう武器があるのにホントにモテないの?」
勉強を再開しつつ呈された疑問に僕は頷いておく。
「モテないよ。モテるのは結局社交性と行動力があるヤツだ。僕にはどっちもない」
「勉強教えて~、とか今の時期言い寄られたりせんの?」
「あー、まぁ、昼休みにちょっと頼られるくらいは――」
――ビリッ!
琴葉さんが急に消しゴムの力加減を誤ってノートを破っていた。
「ど、どうした?」
「あはは~……なんでもないなんでもない。ちょっとそっちに転校して羽虫退治でもやろうかな~とか思っただけであってね~」
なんかとんでもない思想を育んでないですかね……。
「にしても……やっぱりけーくん頼られてんじゃん」
ぷくっ、とほっぺを膨らませながらのお言葉。
それはなんだろう……独占欲?
もしそうなら嬉しいというか、可愛いというか。
「……今の時間はけーくん、私だけの先生だかんね?」
引き続きぷっくらほっぺ。
そんなキュートな妬みに対して、僕はもちろんしっかりと頷いておくのを忘れなかった。
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