灯火と廻る残響

叶崎奏命

1-1

朝。春の日差しが顔に当たり、なんとなくで起きてしまった。寝起きは悪い方なのだが、今日は珍しく素直に起きれた気がする。


「時間は...8時!?遅刻じゃん!!」


気のせいだった。なお目覚ましは7時から10分おきにセットしている。何かの間違いだと思いたい。


とにもかくにも準備をしなければ。そう思い布団を退けて起きあがろうとしたが、両腕はそれぞれ気持ち良さそうに寝ている2人の寝坊助にホールドされていた。


「こら、起きろ光莉。麗華もだ。遅刻だぞ俺たち。あと服を着ろ」


右の茶髪を広げて伸びている光莉の頬をペチペチし、左にいる銀髪を横たわらせている麗華の胸を揉んで起こす。なお2人とも生まれたままの姿だ。相変わらず寝る時に服を着ない。


「ゆうちゃん...まだ寝たい...」

「あん、揉まないでくださいまし!」


光莉は寝ぼけながら、麗華は恥じらいながらも意識を覚醒させる。毎度のことだが起動まで時間がかかる。


腕が解放されたので素早く抜け出して目玉焼きを3人分作る。自分の分は醤油、光莉は塩。麗華はソース。好みが違いすぎる。


3つ目の目玉焼きを皿に盛ったところで、寝室からリビングへ歩いてくる音が聞こえた。やっとか、と息を吐きながらも声をかけた。


「もう遅刻だから、朝飯は目玉焼きだけだぞ」

「えーっ!?ゆうちゃん足りないよ〜〜」

「ソースはかけてくれたのかしら?」

「麗華の分はこれだ。光莉は塩な。マジでやばいから早く食って行くぞ!」

「「はーーい」」


緊張感0のまま、朝食を胃に流し込む。全員同じタイミングで食べ終わると、皿を水に漬けてすぐ玄関へ。


今更ではあるが、茶髪のセミロングを靡かせながら白衣の下にブレザーの制服を見に纏い、少し丈を詰めたチェックのスカートに紺のハイソックスでローファーを履こうとしているのが光莉。なぜ白衣を着ているのか、は突っ込んではいけない。


対して銀髪のツーサイドアップをリボンで纏めており、ブレザーの制服(こちらは普通に)に膝丈のチェックスカート、黒のタイツで既に靴を履いているのが麗華。完璧でしょ、とドヤ顔をしているが口元のソースが拭えていない。


最後に靴を履き、光莉の白衣とシャツの襟を直し、ハンカチで麗華の口元に付いているソースを拭いながら玄関のドアを開けた。外に出たのだ。


「ありがとゆうちゃん!」

「むぐっ...感謝しますわ」

「いいから走るぞ。門が閉じるとまずい」

「「はーい」」


そう言ってマンションのドアからエレベーターまで走り、10階から地上に降りたらすぐに走って学校へ行く。


側から見たら贅沢な、しかし忙しない朝。

今日も始めよう、2年生の学生生活を。

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