第29話 スナック茜へ行く
春樹は自分がアルコールを飲めないので、
玲香が気をつかって家ではお酒を飲んでいない事を知っていた。
今日も38.5度の暑さだ。
久しぶりに二人一緒に休みになったので
春樹は玲香を喜ばしてやろうと思った。
「玲香 たまには〔スナック茜〕に行くか!」
「なに、ハルキ どうしたの!ねぇ、連れて行ってくれるの 本当に!」
玲香のテンションが急に上がる
PM7時、〔スナック茜〕に入ると、
もう、お客が7人もいた。 中沢さん・吉村さんがいる。
加藤さん沢田さんもいた、金山さんもいる、
あとの二人は知らない人たちだ。
玲香は、「はーい」って、手を挙げて〔スナック茜〕に入った。
そのあとに春樹が続く。
みんな、玲香の声に振り向くと、
「れいちゃん、久しぶりだな」
「れいちゃん、こっちに来て一緒に飲もうよ」
「れいちゃん、待ってたよ」
「れいちゃん、スカンクのボトル、空になって入れたけど、
また、このボトルにもスカンクを書いてよ」
もう、玲香ファンで大変だ。
「ちょっと、今日はれいちゃんはお客さんだからね、
ダメよ、そっとしてあげて ね!」
あかねも、玲香が来るとお客がみんな
玲香に向いてしまうので戸惑う
春樹と玲香は玄関側の一番端のカウンター席に座った。
春樹はジンジャーエール 玲香はあかねに薦められて〔桜美人〕にした。
玲香が智美と香奈子を呼ぶと
「前に言ってたピアスを持ってきたから、
どれがスキかな、二人にプレゼントよ!」
と言って、カウンターでピアスを四セット開いて見せる。
「これ全部、ティファニーだよね、こんな高価な物本当にいいんですか」
香奈子が声を上げる。
「すご~い、こんなのが欲しかったです」 智美の目が輝いている。
「春樹が使いもしないもの、しまっておいてもしょうがないだろって。
香奈ちゃんと智ちゃんにあげろって・・・・・」
「春樹さん、本当にもらっていいんですか、ありがとうございます。
春樹さん、好きになっちゃった」智美も香奈子も大喜びだ。
「えぇっ、今まで嫌いだったのかな~」
ピアスに釘付けの視線をずらして春樹をチラッと見ると智美が言った
「もう、春樹さんたら・・・・・いじわるなんだから」
「こんなの、玲香の小物入れにガラクタばっかり、たくさんあるよ」
玲香がつぶやく
「ジュエリーの価値なんて、全く判らない人だから1セットずつだからね」
「私、これ、いいですか、やったぁ うれしい」
「香奈、これがいい」
二人はあかねにもらっていいのか目で確認をとっている。
「ママ、れいちゃんにこれ、もらっちゃった!」
智美も香奈子もお客をそっちのけにしてピアスを見ている。
嬉しくて仕方がないようだ。
「今、してもいいかな~」智美が玲香に聞くと
玲香が
「家に持って帰って、ゆっくり、入れたら・・・・・
下手に入れて耳に傷がついたら大変、ね、」
二人は納得してバックに仕舞った。
しばらくして、玲香は奥にあるトイレに行った。
トイレから出てくると、誰かが、お尻フリフリと踊ってみせる。
すると、いつものメンバーがおしりふりふりを歌い出した。
玲香はつられて、おしりふりふりを踊り出す。
だんだんみんなの手が伸びてきた。
あかねは困った顔だ、春樹をみる。
春樹も、あきれているが、口には出さない。
玲香が踊りながら歩く、みんな、この時とばかりに、お尻をさわる
盛り上がる。
(おしりふりふり おしりふりふり おしりふりふりプイプイ )
みんながさわっているので、春樹もさわろうとした時だ。
「やめて、ダメ、イヤ、」
玲香が春樹から離れる。みんなも、どうしたって顔だ。
玲香があかねに救いを求める。
「春樹 、あんたがみんなと一緒になってどうするの、
もう、女心もわかんないんだから・・・・・」
「えぇ、なんで、何が?どういう事、」 春樹は訳がわからない。
「ママ、帰る、しらけちゃった」 玲香が急に帰ると言い出した。
「お勘定」
「何言ってるの、いいから、
智ちゃんも香奈ちゃんも高価なジュエリーを貰ったんだから」
玲香は笑顔で両手を横に振りながら、
加藤さん沢田さんたちにもさよならを言って、
ジャンボパーキングに向かった。
智美と香奈子が、いつまでも見送りをしていた。
赤いマツダⅡを出すと、車内で格闘が始まる
「さっきの何だったんだ」
「さっきのって?」
「もう、とぼけるな、あれって、俺が怒るならわかるけど、
なんで、玲香がダメって言うんだ」
「わかんない?」
「わかんないって、どういう事?
前にも、客にケツをさわらせていた時、
『ごめんなさい、もうしません』って謝っていたのは・・・・
あれは何だったんだ
ふざけんな!まったく、
あの時、『もう、しません』って言ってただろうが・・・・・」
「だって、お客さんが踊りだすんだもん」
「お客が踊り出したら玲香も踊るのか、
それでケツをさわってもらって喜んでるんだろう、
アホか お前やっぱり エロ女だ!
お前と一緒になったのが間違いだったわ」
「ごめんなさい ハルキ 本当にごめんなさい」
「あやまればすむと思ってるのか、ふざけるな
あやまったって、泣いたって、もう、ついていけん、別れよう」
「そんなに怒んないでよ!
ハルキも私のお尻 触ろうとしてたじゃない」
「あれはみんなが楽しそうにしているから、
じゃぁ、俺もって、思っただけだ」
「でしょう、ね! だから、今ならどれだけさわってもいいから」
「バカか、お前のケツなんか、さわっても嬉しくもなんともないわ
まったく、だから、なんで、他人にケツさわらせて喜んでいるんだ」
「喜んでなんかいないもん!
ただ、お店がパ~と盛り上がれば楽しいかなって・・・・・」
「お前〔スナック茜〕の何なんだ、
バイトでもホステスでもない玲香が
なんで、〔スナック茜〕を盛り上げなならんのだ」
「だって、私 ママの妹だもん」
「妹?嘘だろ!」
「姉妹の契りをしたの」
「姉妹の契り? 何が契りだ
どうして俺がさわろうとしたら、なんで逃げたんだ、おかしいだろ
だいたい 俺がケツさわったって、何も問題ないはずなのに、
なんで、客にはさわらして、俺がさわったら、
『ダメ』って言うんだ、訳が分からん」
玲香が答えた
「わかんないよ?だって、なんて言えばいいのか、説明がつかない」
「わかんないじゃないだろ、答えろ!
まぁ、そんな事はどうでもでもいい 分かれる」
春樹はそういうと、出て行った!
そろそろ22時だ。修平の所に行こうかと思ったが、何処にいるかわからない
もしかするとママの所に行っているかもしれないと思った。
取り敢えず電話をするとやはり、勝川にいた。
「修平、もう、やってられないから、玲香と別れる事にした」
「えぇっ、なんだってー!何があったんだ、どういう事だ、
おい、春樹、何処にいるんだ」
「何処にって!何処に行こう、今、車の中だけど、そっちに行っていい!」
「家 分かるか」
「例の公園までなら・・・・・」
「着いたら電話をしろ」
春樹があかねの家に着いたのは23時を過ぎていた。
「修平 ゴメン もう、寝る時間だろ」
「そんな事はいい!それよりもれいちゃんと何があったんだ」
1階ではお父さんが寝ているからと春樹は2階に連れていかれた。
「先月、いつだったけ!ママに玲香が店を手伝わされた時・・・・・」
「8月上旬だったか、お盆前だ、
なんだ、まだ、あれをもめているのか、春樹も根に持つ奴だな」
「違うよ、今日な、たまにはいいかと思って、
玲香をママの所に飲みに連れて行ったんだ」
「そりゃあ、れいちゃん 喜んだろ!」
「それがね、行ったら、また、客と一緒にお尻ダンスをやってるんだ。
俺の目の前で、また、ケツをさわらせて踊ってるんだから、参っちゃうよ
あんまり、ふざけているから・・・・・
頭に来て『別れよう』って言って出て来たんだ
どう思う、修平!」
「そうか、そりゃあ、れいちゃんにも問題があるな
春樹、チョット、結婚するのが早かったかな・・・・・
もう、少し様子を見てからの方がよかったかもしれんな」
「だろ、やっぱり、あっちの人間は普通じゃないのかな
俺にはついていけん」
「そうか、でも、れいちゃん 性格はいい子なんだがな
とは言え、そんな簡単に男たちにさわらせるのもな~」
修平も困っているようだ!
その時、下で玄関のドアが開いた音がした。
「また、お父さんが徘徊したら大変だ」
と言って修平が階段を降りようとすると
あかねが玲香を連れて帰ってきた。
あかねがお父さんの部屋を少し開けてお父さんが居るのを確認すると
真っ直ぐ2階に上がって来る。
「春樹、やっぱりここにいたのね、よかったわ!れいちゃんも座って」
4人が顔を突き合わす、と云うより、春樹を3人で囲む状態だ。
春樹があかねに挨拶をすると春樹の顔を見るなり
「春樹 よかったわ、ここに来てくれて!
れいちゃん 泣いているじゃない!
あんたの言う事もわかるけどね、
そりゃあ、れいちゃんも悪いわよ
だけどね、そんな事で別れてどうするのよ!」
「だって、前にさわらせた時、しっかり玲香と約束をしたのに、
まただよ!ママも見ていただろ、
普通、そんな簡単に自分のケツをさわらせるか、考えられんわ
しかも、今度は俺の目の前で客にケツをさわらせてるんだから!
やっとれんわ」
玲香が小さくなって聞いている
あかねが一息ついて
「春樹の言う事はわかるけど、だけどね!
あんた、れいちゃんと一緒になる時、なんて言った?」
「なにを?『結婚しよう』って、言っただけだけど」
「あんた、もう忘れたの 『身も心も過去もすべて受け止めます』って、誓ったの忘れた?」
「たしかに言ったけど、それとこれとは違うんじゃない」
春樹があかねに反論した。
「違わないわよ、いいい!
れいちゃんは以前 AV女優してたって事は知っているんでしょう、
つまり、さわられてなんぼの世界で生きて来たのよ
さわられる事なんか、日常茶飯事なのよ、
今更、さわられる事なんかどうでもないことなのよ。
別にさわられたからって減るもんじゃないし・・・・・
ねぇ、春樹はれいちゃんの過去を受け止めたんじゃなかったの」
「そんな!そうかもしれないけれど・・・・・」
春樹は玲香に言った
「俺はな!ケツをさわらさせてる事をどうのこうの言ってるんじゃないんだ
どうして、最初に・・・・・ママが仕事中の玲香に店を手伝わせた時に、
客にケツをさわらせて・・・・・その時、玲香、お前はもう、
『2度とケツはさわらせません』って俺と約束したのに、
それをいとも簡単に破ったのはどう云う事か!って言っているんだ」
「ごめんなさい!だって、いい気持ちで飲んでいたら
酔っぱらちゃって、つい、踊っちゃたの、ごめんね」
「あ” そうだったわ、あの時、れいちゃんに出したお酒〔桜美人〕
あのお酒 すご~く度数が強いの、
だから、れいちゃん、すぐ、酔っぱらったのね、
あのお酒、そうそう、
れいちゃんが手伝ってくれたあの日、桑名の吉田さんが飲むからって!
封を切ったんだけど、度が強いから、いらないと言って
そのままになっていたの。
だから、れいちゃんなら飲んでくれるかな!と思って飲ませちゃったのよ
れいちゃん ごめんね!
そりゃあ、あんな強い酒を飲めばおかしくもなるわ」
すると、修平が言った
「ママ、それじゃ、れいちゃんがおかしくなっても当たり前だ
私もあのお酒〔桜美人〕を1度飲んだ事があるけど、
度数が強いもんですぐにテンションが上がって、たいへんだった
まぁ、れいちゃんがおかしくなっても仕方がないぞ、
なぁ、春樹 勘弁してやれ」
「そうかな、でも、車の中ではそんなふうに見えなかったよ」
春樹が言うと、あかねが尽かさず
「度数の強いお酒って、引き際がいいのよ、パーッと酔っぱらって、
一刻もすればすぐに引いちゃうの、ねぇ、修平さん」
「そう、ママの言う通り、パーッと酔っぱらってパーッと散るんだ、
なんてったって〔さくら 美人〕ってんだから・・・・・
そうか、春樹、れいちゃんが酔って美人に見えたもんだから
お前もさわりたくなったんだろ」
あかねと修平が大笑いだ。
春樹も納得したのか、そのあと、玲香と家に帰った。
と言っても、玲香も春樹も別々に来たので、自分の車で家に帰ったのだ。
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