2話「初めてのテイム!」

8月10日 一部訂正、書き足しを行いました


◻︎ ◻︎ ◻︎


 突然目の前が光に包まれ、目を開けるとそこには一面の緑が広がっていた。


「森スタートかよ…。」


 声に出してしまったのも無理はないと思う。転移してきて早々森からのスタート、しかもどこに行ったら街があるのかさえわからない。


 とにかく状況整理を優先しよう。まずここは異世界。ということは何が起こるか全く予想のできない世界だ。いつどこからモンスターとかが出てきてもおかしくない。


 そういえば、ステータスとか見れたりしないのだろうか。試しに…。


「ステータス、オープン。」

name ムギ・ワタシロ

レベル 1

ジョブ テイマー

HP 13

MP 8

STR 5

VIT 6

DEX 18

AGI 12

INT 12

LUX 100(MAX)

スキル:「テイム:もふもふ」「鑑定Ⅰ」「言語理解」


 でた!どうやらここではゲームのような数値で自分の強さを測れるらしい。


 というか、これ絶対弱い数値だよな。DEXとAGI、INTが比較的高いものの他のステータスは1桁だ。こんなんで、果たして異世界は生きていけるのか…?


 このステータスが僕のあっちの世界の運動神経とかを加味したものなんだろう。それならまあ、現代社会を生きる一般人はこんなものだろう。それはさておきLUX100でカンストしてるってどうなってるんだ。


 まずは、この森を抜けるのが最優先か。とはいえ、戦闘をするのは危険すぎる。

 とすると、テイムをして少しでも生存の可能性を高めるのが最初だな。


「わんわん。」


 背後から犬の鳴き声がして咄嗟に飛び退きながら、振り返った。

 振り返った先にいたのは、あの時助けた子犬だった。


「どうしたの?また迷子?」


 声をかけてからハッとする。そういえばこの子犬は、神の子孫だった。

 きっと森の抜け出し方を教えにきてくれたに違いない。


「森の抜け方ってわかる?教えて欲しいんだけど。」


『わかんない。も迷子だから。』


 突然の声に驚いた。そうか、言語理解で会話ができるんだ。

 それより、なんだ今の。まるでゲームでバグってセリフが飛んだみたいじゃないか。考えたくはないが、何か神様が隠すように干渉している…?


「そっか。それよりもどうしてここにいるの?」

『ついてきたんだよ。だってあそこにいてもつまらないし。』


 えー。つまらないって言われても、ねぇ。

 というか、じっと見たことはなかったが、よく見るとこの犬ふんわりとした白い毛、丸く綺麗な目、丸く丸まっている尻尾、可愛い。もふもふ、もふもふだ。


 いやいや、この子を拾って神様から目をつけられたら面倒だし…。やっぱり置いていこう。



『これからどこにいくの?』


 …結局連れてきてしまった。あんなに可愛い目を向けられて断れる人がいるだろうか。いや、いないだろう。


 まあ、もう覚悟を決めるとしてこの子のいう通りどこにいくかを考えなくては。このまま森をうろうろしていても死ぬのは時間の問題だ。

 

 そういえば、スキルを試してなかったな。

 試しに鑑定あたりを使ってみるか。鑑定するのは、あの草でいいか。


「鑑定」

鑑定内容

名称:薬草


 渋すぎる内容だな。やっぱりレベル1だと大した内容は、わからないか。

 レベルを上げたいところだけど、レベルを上げれる方法がわからない以上、何回も鑑定してみるしかないな。


 あと2つのスキルのうち、言語理解はこのこと話せているから、問題なく発動できているんだろう。


 となると、あとはテイムか。

 そういえば、この子はテイムしたりできないんだろうか。試してみる価値はあるな。


『ねぇ、無視しないでよ。ひどいよ。』


 すっかり忘れてた。スキルのことで頭がいっぱいになっていたが、そういえばどこにいくのかを決めているんだった。


「ごめん、ごめん。どこに行けばわからない以上、高くて見渡しのところに行こうと思っているんだけど…。その前に君をテイムしてみてもいいかな。」


『できるのかなぁ。でもやってみて!そしたら解放されるかもしれないし。』


 テイムのやり方は、事前に聞いてきていた。


 やり方はとっても簡単だ。

 手を前に伸ばし、自分と対象の心が繋がるイメージで「テイム」と唱える。これだけだ。


 一つ懸念点があるとすれば、対象の強さに応じて消費するMPが増えるということ。ただでさえ、僕のMPは8しかない。それに対してこの子は神の子孫だ。ステータスが低いとは考え難い。


 とはいえ、やってみる価値はあるか。


「テイム」


【システムスキルの発動を確認。ピー エラーを検知 システムを終了し、通常スキルに切り替えます。】


 は?なんだこれ。発動と同時に、頭に機械音声のような女性の声が流れた。

 システム?これじゃゲームの中にいるみたいだ。さっきのバグもそうだが、この世界は何かを隠そうとしている…?


【ワールドシステムを終了。テイムスキルを発動します。】


 その声が終わると同時に、目の前にいた子犬が光に包まれた。

 しばらくすると放たれていた光がなくなった。


『終わった?なんか体の中にあった違和感がなくなったよ!』


 やけに元気になった子犬とは対照に僕の体は突然の倦怠感に襲われていた。

 きっとこれがMP切れなんだろう。ステータスを開くと、そこにはMP0となっていた。


 立っていることすらままならなくなり、意識を失ってその場に倒れた。



 目を覚ますと、そこは大きな木の下だった。


『大丈夫?突然倒れるからびっくりしたよ。』


 この子の話を聞くに、突然倒れた僕を襲われないようにこの木の下まで引っ張ってくれてきたらしい。


 考えたくはないが、この子がいなかったら今頃もうこの世界にはいなかったかもしれない。


「ありがとう、助かったよ。」


『うん!それよりね、テイムされたら名前がなくなっちゃったんだよ。だからつけて欲しいんだ。』


 名前がなくなった?それはこの子が神様からいただいた名前がなくなったということになる。やはり、僕は相当罰当たりなことをしてしまったのではないか?


 そうだとしても、やってしまった以上どうしようもない。この子にぴったり名前をつけよう。


 それにしても名前か。家で飼っていた犬はシロとかコマみたいなテンプレの名前だったから、ネーミングセンスというものが僕にはない。


 この子の特徴は白い毛、綺麗な目、丸いしっぽ、ぐらいか。とすると…。


「ハク…とかどうかな。」


 自分で考えておきながら安直な名前だとは思う。白を読み方を変えてハク。でもそれしか思いつかなかったんだから仕方ない。


『ハク…いい名前だね。前の贅沢すぎる名前に比べたらとってもいい名前だよ!』


 贅沢な名前…。そうだよな、神様の名前はきっととっても長ったらしいんだろう。本人に気に入ってもらえたならよかった。きっと神様は不服だろうけど。


【ハクをテイムしました。】


「これからよろしくね、ハク。」


『よろしく!』


 こうして、僕とハクの異世界生活が幕を開けることになる。

 これから、1人と1匹に様々な困難が襲いかかることをまだ知る由もなかった。

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