物語は、燃え広がる謁見の間という極端な状況から静かに始まる。、
炎に照らされた惨劇の描写は具体的でありながら、冷徹に抑えられ、視覚と心理を同時に刺激する。主人公の内面描写も緻密で、兄の存在と王への使命との狭間で揺れる葛藤が、ページを追うごとに確かに伝わってくる。血の模様や剣の動き、落下する王冠といった細部まで意識された描写が、物語の緊張感を増幅させている。
会話の一つ一つが余白を残すように配置され、読む者は行間から人物の感情や状況を推測する楽しみを得られる。過酷な状況下での決断の重さと、瞬間の躊躇、そして覚悟の表現が鮮烈で、文章全体に緊密な呼吸が宿っている。
読み終えた後も、炎の匂いや、玉座の冷たさまで思い返してしまうような、濃密で生々しい読書体験を提供する一作。
ー1話目を読んでの感想です