第11話

海水浴から数日。俺は今、佐野志保の部屋にいた。公認の関係になったとはいえ、彼女の自宅に二人きりで来るのは初めてのことだ。前回、カフェでの勉強会の後、次回の場所として彼女の家を提案された時、俺は内心、喜びと同時に戸惑いも感じていた。美保や緑との関係が「公認」されたとはいえ、志保が俺を独占したいと願っていることは、彼女の言葉の端々から感じ取っていたからだ。


志保の部屋は、彼女の性格を表すように、整理整頓が行き届いていた。机の上には参考書がきちんと積まれ、ベッドの上には可愛らしい動物のぬいぐるみがいくつか置かれている。窓から差し込む午後の光が、部屋全体を明るく照らしている。


今日の志保は、薄手のニットのカーディガンに、柔らかな素材のロングスカートという、部屋着らしいリラックスした服装だった。それでも、その清楚な雰囲気は健在で、俺は改めて彼女の美しさに目を奪われた。


「本田くん、今日はありがとうございます。ここ、どうしても分からなくて……」


志保は、参考書を指差しながら、少しだけ頬を染めて俺に話しかけた。その声は、以前よりもずっと甘く、俺の心に直接響くようだった。


勉強を進める中で、志保は以前よりも積極的に俺に身体を寄せてきた。俺が解説のためにペンを動かすと、彼女のショートボブの髪が、俺の腕に触れる。そのたびに、清潔なシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。彼女は、俺の顔を覗き込むように近づき、その視線は、俺の言葉だけでなく、俺の表情の一つ一つを真剣に追っているようだった。


「なるほど……! 本田くん、やっぱり分かりやすいです」


そう言って、志保は俺の腕にそっと手を重ねた。その指先が、俺の肌を優しく撫でる。その小さな仕草一つ一つに、彼女の「忠勝を独占したい」という強い願望が込められているのを感じた。彼女は、親友である美保や緑への裏切りという葛藤を抱えながらも、俺との二人だけの時間を何よりも大切にしているのだ。


「佐野は、本当に真面目だな。だから、こうして頑張れるんだろうな」


俺が言うと、志保は少し寂しそうに微笑んだ。


「そう、かもしれません。でも、真面目すぎると、損することもあるんです。他の人には理解してもらえないことも、たくさん……」


その言葉の裏には、彼女がこれまで抱えてきた「正義感ゆえの孤独」が垣間見えた。そして、温泉旅行での一件以来、彼女が抱える「複雑な気持ち」も。


「でも、本田くんは、私を理解してくれます。だから、私、本田くんとの時間が、一番、大切なんです」


彼女は、俺の目をまっすぐに見つめた。その瞳には、深い信頼と、そして俺への強い独占欲が宿っていた。


勉強が一段落ついたところで、志保は、ふっと息をつき、参考書を閉じた。


「本田くん。私、もっと、あなたのことを知りたい」


彼女の声は、先ほどまでとは違う、誘惑的な響きを帯びていた。志保は、ゆっくりと俺に身体を寄せた。その指先が、俺のシャツのボタンに触れる。真面目で貞操観念も高い彼女が、ここまで積極的になったことに、俺は驚きと同時に、喜びを感じた。彼女の貞操観念の高さが、忠勝との関係を特別なものとして深く求めていることの表れだと理解する。


「二人だけの秘密を、もっと増やしたいんです」


そう言って、志保は俺をベッドへと誘った。彼女は、ためらうことなく俺の服に手をかけ、一つずつボタンを外していく。その指先は、微かに震えているが、その瞳には強い意志が宿っていた。


俺は、志保の新たな積極性を受け入れた。美保や緑との経験で、俺は女性の身体の快感を高める術を学んでいた。そして、今、真面目な志保が、どれほど俺を求めているのかが、その手つきや視線から痛いほど伝わってくる。


二人の性的な行為が始まった。志保は、温泉での初体験を経て、性的な行為に積極的になったことを、全身で示していた。最初は、真面目な性格ゆえの羞恥心と抵抗感があったが、俺の優しいリードと、愛撫によって、彼女の身体は、以前よりも素直に快感に反応する。


「んんっ……あぁっ……本田くん……もっと……」


彼女の喘ぎ声は、最初は小さく、控えめだったが、次第に大きく、情欲に満ちたものに変わっていく。肌は紅潮し、全身が汗で濡れていく。彼女の身体が、性的快感で活性化され、全身が快感に震える。


「……そこ、です……もっと、深く……っ」


志保は、饒舌に、自分がどうしてほしいのかを言葉にした。真面目な彼女の理性は、すでに快楽の波に飲み込まれている。俺は、彼女のペースに合わせて、緩急をつけながら時間をかけて快感を上げていく。その中で、俺は志保が「独占したい」という強い欲求を性的な行為を通じて表現していることを感じ取った。


「……はぁ、はぁ……も、もっと、本田くん……っ、もっと私を……あなたに夢中にさせてください……!」


志保は、すべてを捧げ、すべてを欲していた。その瞳は潤み、恍惚とした表情を浮かべている。体力を使い果たした彼女は、心地よい疲労感に目を潤ませながら、俺の腕の中で眠りに落ちた。


行為後、俺は志保を抱きしめながら、彼女の精神的な成長を強く感じていた。彼女は、自分の「真面目さ」と「性的な快感」が両立することを発見し、女性としての自信を得たのだ。この多角的な関係性の中で、自分自身を表現し、成長しようとしている彼女の姿に、俺は改めて魅了された。そして、彼女が俺との二人だけの時間をどれほど重要視しているか、その一途な愛情に心を打たれた。


俺は、彼女に「選ばれ続ける」ため、自分ももっと成長しなければならないという意識を強めた。俺たちの間に、より深く、特別な精神的な絆が生まれたことを、俺は確信していた。


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