登場人物(第十巻)と今回までのあらすじ


オデュッセウス (Ulysses/Odysseus)

イタケの王で、ラエルテスの子。物語の語り手として、アイオロス島、ライストリゴン人の地、キルケの島での冒険を語る。アイオロスから風の袋を受け取るが、部下の愚かさで失敗。ライストリゴン人の攻撃で11隻を失い、キルケの魔法に抵抗し、ヘルメスの助けで部下を救う。ハデスへの旅をキルケに命じられ、決意する。知略、忍耐、リーダーシップが強調される。


アイオロス (Aeolus)

ヒッポタスの子で、風の支配者。アイオロス島の王で、神々に愛され、12人の子と豪華な暮らしをする。オデュッセウスを1か月もてなし、風を閉じた牛革の袋を贈るが、部下の失敗で彼が再訪すると、「天に嫌われた者」として追い出す。


アンティファテス (Antiphates)

ライストリゴン人の王。巨大な妻を呼び、部下を食べ、叫び声を上げて民を率い、岩を投げてオデュッセウスの艦隊を壊滅させる。野蛮で残忍な敵として登場。


アンティファテスの娘 (Daughter of Antiphates)

ライストリゴン人の王の娘。アルタキアの泉で水を汲み、オデュッセウスの部下に父の家を教えるが、間接的に彼らの破滅を招く。


キルケ (Circe)

アイアイエ島の狡猾な女神。太陽とペルセの子で、アイエテスの姉。部下を薬で豚に変え、豚小屋に閉じ込めるが、オデュッセウスの抵抗とヘルメスの助けで降伏。部下を人間に戻し、1年間もてなし、ハデスへの旅を指示。魔法と寛大なもてなしの両面を持つ。


エウリュロコス (Eurylochus)

オデュッセウスの部下で、近親。キルケの家で裏を疑い外に残り、仲間の豚化を報告。キルケの家への再訪を恐れ反対するが、オデュッセウスの叱責で従う。慎重だが臆病な性格が描かれる。


ポリテス (Polites)

オデュッセウスの信頼する部下。キルケの家で歌を聞き、呼びかけることを提案。キルケに誘われて家に入り、豚に変えられる。


ヘルメス (Mercury)

使者の神。金の杖を持ち、若者の姿でオデュッセウスに現れ、モリーの薬草を授け、キルケの魔法を防ぐ方法を教える。オデュッセウスの守護者として重要な役割。


エルペノル (Elpenor)

オデュッセウスの部下。知恵も勇気も乏しく、酔ってキルケの屋根で寝て落ち、首を折って死に、魂はハデスへ。物語の最後に悲劇的な末路を迎える。


キルケの侍女たち (Circe's Handmaids)

森、泉、海の聖なる水の娘たち4人。キルケの家で紫の布、銀のテーブル、金の杯、風呂を用意し、部下を洗い、服を与える。キルケの魔法を支える存在。



ヒッポタス (Hippotas)

アイオロスの父。アイオロス島の王の家系を示す。


ゼウス (Jove)

神々の王。アイオロスを風の支配者にし、オデュッセウスの旅の困難を間接的に定める。部下の愚かさで風が解放された際、運命の背景として言及。


アイオロスの子ら (Aeolus' Children)

6人の娘と6人の息子。互いに結婚し、両親と豪華な暮らしをする。物語冒頭でアイオロスの家庭の豊かさを示す。


アガメムノン (Agamemnon)

アカイア人の指導者。アイオロスがオデュッセウスに尋ねるトロイ戦争と帰還の文脈で言及。


アイエテス (Aeetes)

キルケの兄で、太陽とペルセの子。魔術師としてキルケの家系の魔力を示す。

ペルセ (Perse)


オケアノスの娘で、太陽の子キルケとアイエテスの母。キルケの神聖な出自を示す。


オケアノス (Oceanus)

海の神で、ペルセの父。キルケの家系とハデスへの旅の文脈で言及。


テイレシアス (Teiresias)

テーバイの盲目の予言者。死後も理性を持ち、プロセルピナが知恵を残した。キルケがオデュッセウスに相談を命じる重要な亡魂。


プロセルピナ (Proserpine)

ハデスの妻で、冥界の女王。テイレシアスの理性を残し、オデュッセウスが訪れる冥界の支配者として言及。


ハデス (Hades)

冥界の神。キルケがオデュッセウスに訪れるよう指示する冥界の主。供物と祈りの対象。


1


 神々の王ゼウスと知恵の女神ミネルヴァ(アテナ)は、オデュッセウスの運命について議論する。オデュッセウスはトロイア戦争後、ポセイドンの怒り(キュクロプス・ポリュフェモスの目を潰したため)により帰郷できず、女神カリプソにオギュギア島で7年間幽閉されている。ミネルヴァはオデュッセウスの解放を主張し、ゼウスは同意する。一方、イタカでは、オデュッセウスの妻ペネロペが108人の求婚者に悩まされている。求婚者たちはオデュッセウスの財産を食い潰し、ペネロペに結婚を迫る。息子テレマコスは求婚者の傲慢さに憤るが、若さゆえに無力。ミネルヴァはメンテス(タフィア人の首長)に変装し、テレマコスを訪ね、父の消息を求めてピュロスとスパルタへ旅立つよう助言。テレマコスは決意を固め、旅の準備を始める。


2


 テレマコスはイタカの民会を開き、求婚者たちの横暴を訴えるが、アンティノスやエウリュマコスら求婚者は責任をペネロペに押し付け、退かない。テレマコスは父の帰還を信じ、ピュロスとスパルタへの旅を宣言。ミネルヴァ(メンテスに変装)が船と乗組員を用意し、テレマコスは老女中エウリュクレイアに秘密裏に準備を依頼。求婚者はテレマコスの旅に気づき、彼を海上で待ち伏せして殺す計画を立てる。テレマコスは夜に船で出発し、ミネルヴァの導きで旅を始める。


3


 テレマコスはピュロスに到着し、ネストル(ピュロスの王)がポセイドンに牛を捧げる祭事に参加する。ミネルヴァ(メントルに変装)がテレマコスを励まし、ネストルに父オデュッセウスの消息を尋ねるよう促す。ネストルはトロイ戦争の回想を語り、オデュッセウスの知恵を称賛するが、彼のその後の行方は知らないと答える。トロイ陥落後のギリシャ軍の分裂(アガメムノンとメネラオスの対立)や、アガメムノンの殺害(アイギストスによる)、オレステスの復讐を語り、テレマコスにメネラオス(スパルタの王)を訪ねるよう勧める。ネストルの息子ピシストラトスがテレマコスに同行し、馬車でスパルタへ向かう。ミネルヴァは鷲の姿で去り、ネストルは彼女の神性を悟る。


4


 テレマコスとピシストラトスはスパルタに到着し、メネラオスとヘレネの宮殿で歓迎される。メネラオスはトロイ戦争でのオデュッセウスの活躍(トロイの木馬など)を語り、彼がカリプソの島に幽閉されていると明かす。ヘレネもオデュッセウスの勇敢な行動を回想。メネラオスは自身の帰郷の苦難(エジプト漂流など)を語り、テレマコスに励ましを与える。一方、イタカでは求婚者がテレマコスの旅に気づき、待ち伏せを強化。ペネロペはテレマコスの危険を知り、悲嘆に暮れるが、ミネルヴァが夢で彼女を慰める。


5


 物語はオデュッセウスの視点に移る。ゼウスはヘルメスに命じ、カリプソにオデュッセウスを解放するよう伝える。カリプソは不満ながら従い、オデュッセウスに筏を作る材料を提供。オデュッセウスは筏を完成させ、オギュギア島を去るが、ポセイドンが嵐を起こし、筏は破壊される。海で漂うオデュッセウスは、女神イノの助け(魔法のヴェール)でスケリア島に漂着。疲れ果てた彼は木の葉に覆われて眠る。


6


 オデュッセウスはスケリア島(ファイアキア人の島)で目覚める。ミネルヴァはファイアキアの王女ナウシカに夢で洗濯を促し、彼女を海岸へ導く。ナウシカはオデュッセウスを見つけ、裸でみすぼらしい彼に衣服と食事を与える。オデュッセウスは礼儀正しく振る舞い、ナウシカに王宮へ案内される。ミネルヴァは彼を霧で隠し、町での好奇の目を避ける。


7


 オデュッセウスはファイアキアの王アルキノオスと王妃アレテの宮殿に到着。ミネルヴァ(市民に変装)の助けで歓迎され、豪華な宴に招かれる。オデュッセウスは自分の名前を明かさず、漂流の苦難をほのめかす。アルキノオスは彼を客として厚遇し、船での帰郷を約束。オデュッセウスは宮殿で休息する。



8


 アルキノオスはオデュッセウスのために宴と競技会を開催。ファイアキアの若者たちが走り、レスリング、円盤投げなどで競う。オデュッセウスは挑発され、円盤投げで圧倒的な力を示す。吟遊詩人デモドコスがトロイ戦争の歌(トロイの木馬など)を歌い、オデュッセウスは涙を流す。アルキノオスは彼の正体を尋ねるが、オデュッセウスはまだ明かさない。


9


 オデュッセウスは自らの名前を明かし、トロイ陥落後の冒険を語り始める。まず、キコネス族を襲撃するが、部下の欲深さで反撃を受け、各船から6人を失う。次に、ロトス食い人の島で、部下がロトスの実を食べ、帰郷の意志を失うが、オデュッセウスは彼らを船に連れ戻す。続いて、キュクロプス・ポリュフェモスの洞窟に閉じ込められる。オデュッセウスは酒でポリュフェモスを眠らせ、熱した杭で目を潰し、羊に隠れて脱出。逃げる際、名前を明かしたことでポリュフェモスが父ポセイドンに復讐を祈り、オデュッセウスの漂流が始まる。


10


 オデュッセウスは風の神アイオロスの島に到着し、順風と風の袋を贈られるが、部下が袋を開け、暴風で漂流。次に、ライストリゴネス族(人食い巨人)の島で11隻の船と部下のほとんどを失う。一隻でキルケの島にたどり着き、キルケが部下を豚に変える。ヘルメスの助けで魔法を解き、キルケと一年を過ごす。キルケはオデュッセウスに冥界で予言者テイレシアスに相談するよう助言。

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