ホメロス「オデュッセイア」 🅽🅴🆆!

✿モンテ✣クリスト✿

トロイア戦争から『オデュッセイア』に至るまでのあらすじ


 ホメロスの『イリアス』は、トロイア戦争の10年目を描き、アキレウスとアガメムノンの対立やヘクトルの死を中心に物語が進むが、戦争の終結やトロイの陥落には直接触れていない。トロイの木馬の挿話は、『オデュッセイア』の回想や、後の文学(例:ウェルギリウスの『アエネイス』)および神話的伝承で補完される。この挿話は、トロイア戦争の決定的な勝利をもたらした策略として知られる。


 トロイア戦争は、トロイの王子パリスがスパルタ王メネラオスの妻ヘレネを誘拐したことで始まった。アカイア人(ギリシャ諸国の連合軍)は、メネラオスの兄アガメムノンを総大将に、トロイを10年間包囲した。『イリアス』はアキレウスの怒りとヘクトルの死で終わるが、戦争はまだ続いていた。伝承によれば、アキレウスがパリスの矢に踵を射抜かれて死に、パリス自身も死に、ギリシャ軍は勝利への道を見出せずにいた。


 ここで、イタカの王オデュッセウス(『オデュッセイア』の主人公)の知恵が光る。彼は「トロイの木馬」作戦を考案した。これは、巨大な木製の馬をトロイへの贈り物として偽装し、内部にギリシャ兵を隠す策略だった。ギリシャ軍は船をテネドス島に隠し、撤退を装った。トロイ人は木馬を戦勝の象徴と誤解し、城内に引き入れた。夜、木馬から出てきたオデュッセウス、メネラオス、ディオメデスら精鋭が城門を開き、隠れていたギリシャ軍が突入。トロイは略奪と破壊の末に陥落し、滅亡した。オデュッセウスの狡猾さがこの勝利を可能にした。



 トロイ陥落後、ギリシャ軍は戦利品を分け合い、故郷への帰還を開始した。しかし、『オデュッセイア』第三巻でピュロスの王ネストルが語るように、帰還は多くの試練を伴った。神々の介入と人間の過ちが英雄たちの運命を複雑にした。ゼウス(神々の王)とミネルヴァ(アテナ、知恵と戦いの女神)は、ギリシャ軍の行動(特に、トロイでの略奪や神への敬意の欠如)に不満を抱き、帰還を妨げる試練を与えた。


 アガメムノンとメネラオスの兄弟間の対立が問題を悪化させた。アガメムノンはミネルヴァをなだめるための犠牲を捧げるべきだと主張したが、メネラオスは即時帰還を望んだ。この対立で軍は二分され、一部はアガメムノンに従い、残りはメネラオスやオデュッセウスと共に出航した。ネストルはピュロスに無事帰還したが、他の英雄は嵐や神々の怒りに見舞われた。メネラオスはエジプトに漂流し、ディオメデスはアルゴスにたどり着いた。アガメムノンは帰郷後、妻クリュテムネストラとその愛人アイギストスに裏切られ殺された(『オデュッセイア』第三巻で言及)。


 オデュッセウスの帰還は特に過酷だった。トロイの木馬の成功で名声を得たが、戦争中の行動が海神ポセイドンの怒りを買った。特に、キュクロプス(ポセイドンの子ポリュフェモス)の目を潰したことが、ポセイドンの報復を招き、オデュッセウスの10年にわたる漂流の主因となった。



『オデュッセイア』は、トロイア戦争から約10年後、オデュッセウスがカリプソの島に幽閉されている場面から始まる(第一巻)。彼がイタカに帰れない理由は、ポセイドンの敵意(キュクロプス事件による)と神々の試練にある。物語冒頭では、ゼウスとミネルヴァがオデュッセウスの運命を議論し、ミネルヴァが彼の帰郷を支援することを決める。ミネルヴァはメンテスに変装し、オデュッセウスの息子テレマコスを励まし、父の消息を求めてピュロスとスパルタへ旅立つよう促す。


 一方、イタカでは、ペネロペ(オデュッセウスの妻)が求婚者たちに悩まされている。テレマコスは成長し、父の不在中に家を守るが、求婚者たちの傲慢さに苦しむ。『オデュッセイア』は、テレマコスの旅(テレマキア)とオデュッセウスの漂流の物語が並行して進み、最終的に父子の再会と求婚者たちの討伐へと向かう。



『イリアス』はトロイア戦争の終結を描かず、『オデュッセイア』はオデュッセウスの漂流の詳細を冒頭で説明しない。この唐突な開始は、ホメロスの叙事詩の特徴である。当時の聴衆はトロイア戦争の伝承を熟知しており、木馬の挿話や戦争の背景は前提知識として共有されていた。そのため、『オデュッセイア』はオデュッセウスの帰郷の試練に焦点を当て、過去の出来事は回想や対話を通じて徐々に明らかにされる(例:第三巻のネストルの語り、第九巻以降のオデュッセウスの回想)。


 オデュッセウスが帰れない理由(ポセイドンの怒り)は、物語の中で徐々に明らかになるが、第一巻ではカリプソの島での幽閉が強調され、ポセイドンの敵意は背景としてほのめかされる。この構造は、物語の緊張感を高め、聴衆の好奇心を掻き立てる効果を持つ。


 トロイ陥落後、オデュッセウスは12隻の船と部下を率いてイタカを目指した。しかし、ポセイドンの敵意と神々の試練により、旅は過酷なものとなった。以下は、『オデュッセイア』で語られる冒険の概要である。


1


 オリンポスの神々の会議で、ゼウスはオデュッセウスの運命を議論する。アテナは彼がカリュプソの島に囚われていることを訴え、帰還を助けるよう主張。ポセイドンの怒りで海を彷徨うオデュッセウスに対し、ゼウスは解放を命じる。一方、イタケでは求婚者たちがオデュッセウスの館を占拠し、財産を食い潰し、妻ペネロペに結婚を迫る。アテナはメンタに変装してテレマコスを訪れ、父の消息を探るためピュロスとスパルタへの旅を促す。テレマコスは求婚者の傲慢さに立ち向かい、集会を招集して彼らの無礼を非難するが、嘲笑される。ペネロペは織物の計略で時間を稼ぎ、夫の帰還を信じる。アテナの導きがテレマコスの決意を固め、彼は旅の準備を始める。求婚者のリーダー、アンティノスとエウリュマコスの策略が家の危機を深め、物語はオデュッセウスの帰還とテレマコスの成長を並行して描く。神々の対立と人間の希望が交錯し、冒険の幕が開く。


2


 テレマコスはイタケの集会で求婚者たちを糾弾し、父オデュッセウスの消息を探す旅を宣言する。求婚者は彼を嘲り、ペネロペの再婚を迫るが、テレマコスは屈せず、決意を新たにする。アテナがメンタに変装し、船と忠実な乗組員を用意。テレマコスは母ペネロペに旅を隠し、夜に密かに出航する。ペネロペは求婚者の圧力に耐え、機織りで時間を稼ぐが、裏切り者の侍女に策略が漏れる恐れがある。求婚者のアンティノスはテレマコスの旅を妨害しようと画策し、エウリュマコスが同調。ゼウスが二羽の鷲を送り、テレマコスの旅に神の加護を示す。アテナの支援が彼の勇気を支え、物語は若者の自立と家の危機を描く。イタケの混乱とテレマコスの決断が、父の帰還への希望を繋ぐ。


3


 テレマコスとアテナ(メンタに変装)はピュロスに到着し、老王ネストルに歓迎される。ネストルはトロイ戦争の記憶を語り、オデュッセウスの知恵と勇気を称えるが、彼の消息は知らない。メネラオスのスパルタ行きを勧め、息子ペイシストラトスを同行者として付ける。テレマコスは父の栄光に希望を見出しつつ、不安を隠せない。アテナは神聖な儀式で彼を導き、旅の安全を確保。ネストルの歓待はピュロスの繁栄と秩序を映し、イタケの混乱と対比される。求婚者の不在が一時的な平穏をもたらすが、テレマコスの旅は父の運命を明らかにする第一歩。物語は若者の成長と、トロイ戦争の英雄たちの絆を強調し、神々の導きが希望を繋ぐ。


4


 テレマコスとペイシストラトスはスパルタに到着し、メネラオスとヘレネの豪華な宮殿で歓迎を受ける。メネラオスはオデュッセウスがカリュプソの島に囚われていると語り、テレマコスに希望を与える。ヘレネはトロイ戦争の逸話を語り、オデュッセウスの木馬の計略を称える。宴の席で二人は涙を流し、過去の戦友を悼む。一方、イタケでは求婚者がテレマコスの旅を知り、アンティノスが船を待ち伏せして殺害を計画。ペネロペは息子の出発に動揺し、アテナが夢で彼女を慰める。メネラオスの歓待とヘレネの物語がテレマコスの決意を強め、求婚者の陰謀が物語の緊張感を高める。神々の導きと人間の策略が交錯し、オデュッセウスの帰還への道が遠く感じられる。


5


 ゼウスがヘルメスに命じ、ニンフのカリュプソにオデュッセウスの解放を伝える。カリュプソは彼を愛し、永遠の若さを約束していたが、神々の命令に従い、渋々同意。オデュッセウスに筏を作るための道具と食料を与え、涙ながらに見送る。彼は筏でイタケを目指すが、ポセイドンの怒りで嵐に襲われ、筏は粉々に。海で漂うオデュッセウスを海の女神レウコテアがヴェールで救い、フェアキアの岸に導く。アテナが彼を眠らせ、休息を与える。カリュプソの愛とポセイドンの敵意が対比され、オデュッセウスの不屈の精神が試される。神々の対立が彼の運命を左右し、物語は帰還への第一歩を描く。フェアキアへの到着が新たな希望を点す。


6


 オデュッセウスはフェアキアの岸で目覚め、アテナの導きで王女ナウシカと出会う。ナウシカは川で洗濯をする少女たちと驚くが、裸で現れたオデュッセウスの礼儀正しさに心を動かされ、衣服と食事を与える。アテナがナウシカに夢で洗濯を促し、間接的に出会いを演出。ナウシカは彼を父アルキノオスの宮殿に導く道を教え、町での振る舞いを助言。オデュッセウスはアテナの霧に守られ、フェアキアの町へ向かう。ナウシカの純粋な優しさとオデュッセウスの慎重な態度が物語に温かみを加え、フェアキアの平和な文化がイタケの危機と対比される。アテナの介入が帰還への道を開き、物語は新たな展開へ進む。


7


 オデュッセウスはフェアキアの宮殿に到着し、女王アレテと王アルキノオスに請願者として迎えられる。宮殿の黄金と青銅の装飾、豊かな庭園に驚きつつ、身分を明かさず旅の苦難を語る。アレテは彼の話に心を動かし、アルキノオスは船と贈り物で帰還を助けることを約束。盛大な宴が開かれ、フェアキア人の歓待がオデュッセウスの希望を高める。アテナは霧で彼を町に導き、変装で好意を引き出す。フェアキアの平和と繁栄はイタケの混乱と対比され、物語は帰還への準備を進める。オデュッセウスの慎重さと王の寛大さが調和し、アテナの導きが次の展開を予感させる。


8


 アルキノオスはオデュッセウスのために盛大な宴と競技会を開催。吟遊詩人デモドコスがトロイ戦争の木馬の物語を歌い、オデュッセウスは過去の傷を思い出し涙を流す。フェアキアの若者たちが走り、レスリング、円盤投げで競い、オデュッセウスは槍投げで圧倒的な実力を示す。アルキノオスは彼を称え、帰還のための船と財宝を用意。デモドコスの歌が再びトロイの落城を歌い、オデュッセウスは感情を抑えきれず、身分を明かす準備をする。アテナが彼を支え、フェアキア人の敬意を高める。過去の栄光と現在の試練が交錯し、物語はオデュッセウスの冒険の核心へ進む。フェアキアの繁栄が帰還への希望を強める。


9


 オデュッセウスはフェアキアの宴で冒険を語り始める。トロイを出た後、キコネスを襲撃し勝利するが、略奪の遅れで反撃を受け仲間を失う。ロトス食い人の島では、果実の誘惑で仲間が帰還を忘れるが、オデュッセウスは強引に連れ戻す。キュクロプス島では巨人ポリュペモスに捕らわれ、洞窟で仲間が食われる。彼はポリュペモスを酒で酔わせ、「誰もいない」と名乗り、目を焼き潰して逃亡。船で脱出するが、ポリュペモスに呪いをかけられ、父ポセイドンの怒りを買う。アテナの知恵が彼を救い、物語はオデュッセウスの機転と勇気を強調。キュクロプスの野蛮さと人間の知恵が対比され、冒険の過酷さが帰還を遠ざける。


10


 オデュッセウスは風の神アイオロスに歓迎され、すべての風を閉じ込めた袋を贈られる。イタケに近づくが、仲間が袋を開け、嵐で再び海へ放り出される。ライストリゴン人の島では人食い巨人に船を壊され、ほとんどの仲間を失う。キルケの島に漂着し、彼女の魔法で仲間が豚に変えられる。ヘルメスがオデュッセウスに魔法を防ぐ草を与え、キルケを説得。彼女は仲間を元に戻し、一年間の愛と歓待を提供。キルケは冥界への旅を助言し、アテナが道を導く。人間の欲望と神々の介入が物語を複雑にし、オデュッセウスの交渉力と忍耐が試される。キルケの魔法と愛が冒険に深みを加える。


11


 キルケの助言でオデュッセウスは冥界へ旅立ち、予言者テイレシアスに相談。テイレシアスはポセイドンの怒りと求婚者の運命を予言し、帰還には試練が待つと警告。母アンティクレイアの死を知り、彼女との対話で悲しみが深まる。アガメムノン、アキレウス、アヤックスらトロイの英雄たちの亡魂と語り、戦争の無常を振り返る。ヘラクレスやオルペウスも現れ、冥界の厳粛さが描かれる。アテナとヘルメスが旅を導き、帰還への決意を固める。冥界の暗さとイタケの希望が対比され、死と生のテーマが物語に重みを加える。オデュッセウスの精神力が試練を乗り越える鍵となる。


12


 キルケの警告を受け、オデュッセウスはセイレン、カルュブディス、スキュラの危険な試練に挑む。セイレンの歌に誘惑されるが、船員に縛られ脱出。カルュブディスの渦を避け、スキュラに六人の仲間を奪われる。トリナキア島でヘリオスの聖牛を船員が食べ、ゼウスの雷で船が壊滅。オデュッセウスだけが生き残り、カリュプソの島に漂着。アテナとキルケの助言が彼を支えるが、仲間たちの欲望と神の罰が悲劇を招く。試練の過酷さがオデュッセウスの孤独を強調し、物語は帰還への道の厳しさを描く。自然と神の力が人間の運命を試す。


13


 オデュッセウスはフェアキアで冒険を語り終え、アルキノオスの船でイタケに送られる。アテナが彼を眠らせ、財宝と共に島に上陸させる。洞窟に財宝を隠し、アテナが乞人に変装させ、豚飼いエウマイオスの小屋へ導く。エウマイオスは彼を歓待し、オデュッセウスの不在を嘆く。一方、テレマコスはスパルタから帰還し、アテナの導きで求婚者の待ち伏せを回避。エウマイオスの小屋へ向かい、父との再会が準備される。フェアキアの平和とイタケの危機が対比され、アテナの介入が復讐の計画を進める。物語は帰還と正義の回復へ向かう。


14


 乞人姿のオデュッセウスはエウマイオスの小屋で歓待を受け、クレタ出身の旅人として偽の身の上話を語る。エウマイオスはオデュッセウスの忠実な召使いとして、主人の不在と求婚者の暴虐を嘆く。アテナが変装を維持し、オデュッセウスは求婚者の悪行を詳しく聞く。彼の忍耐と知恵が試され、復讐への決意が深まる。エウマイオスの質朴な忠義はイタケの混乱と対比され、物語に温かみを加える。求婚者の傲慢さが家の危機を際立たせ、アテナの導きが復讐の準備を整える。オデュッセウスの慎重な探りが物語を次の段階へ進める。


15


 アテナがテレマコスにイタケへの帰還を促し、求婚者の待ち伏せを警告。テレマコスはメネラオスとヘレネに別れを告げ、予言者テオクリュメノスを連れて帰る。オデュッセウスはエウマイオスと語り、召使いの忠誠と過去を知る。テレマコスはアテナの導きで無事イタケに到着し、エウマイオスの小屋へ向かう。求婚者はテレマコスの帰還を知り、アンティノスが殺害を企てるが、アテナが守る。父子の再会が目前に迫り、物語は復讐の準備を加速。エウマイオスの忠義と求婚者の裏切りが対比され、テレマコスの成長が物語に希望を与える。


16


 テレマコスがエウマイオスの小屋に到着し、乞人姿のオデュッセウスと再会。アテナが彼を本来の姿に戻し、父子は涙の抱擁を交わす。オデュッセウスは求婚者の悪行を聞き、テレマコスと復讐を計画。武器を隠し、秘密を守るよう指示。エウマイオスはペネロペにテレマコスの帰還を伝え、求婚者の動向を探る。アテナが父子を導き、復讐の準備が整う。父子の絆は求婚者の傲慢さと対比され、物語はクライマックスへ向かう。テレマコスの成長とオデュッセウスの決意がイタケの再生を予感させる。


17


 テレマコスは家に戻り、ペネロペと再会。彼女は息子の無事を喜び、父の消息を尋ねるが、テレマコスは秘密を守る。オデュッセウスは乞人姿でエウマイオスと町へ向かい、ヤギ飼いメランティオスに侮辱され蹴られる。館では求婚者のアンティノスが彼を嘲り、椅子を投げるが、オデュッセウスは耐える。アテナが彼を励まし、求婚者の本性を探る。ペネロペは乞人に会いたいと望むが、オデュッセウスは慎重に待つ。忠犬アルゴスが主人の帰還を認め、死にゆく場面が物語に悲しみを加える。テレマコスのくしゃみが復讐の前兆とされ、物語は正義の回復へ進む。


18


 乞人イロスがオデュッセウスを侮辱し、求婚者の前で拳闘を挑む。アテナが力を与え、オデュッセウスはイロスを一撃で倒す。求婚者は笑いものにするが、アンティノスは敵意を募らせる。ペネロペが求婚者に姿を見せ、贈り物を求めるが、結婚を拒む。アテナが彼女の美を高め、求婚者の欲望を煽り、復讐の舞台を整える。オデュッセウスは召使いの忠誠を試し、エウリュマコスの嘲笑に耐える。イロスの敗北はオデュッセウスの力を示し、ペネロペの策略が求婚者を惑わす。物語は復讐の緊張感を高め、アテナの導きが決戦を近づける。


19


 オデュッセウスは乞人姿でペネロペと対話し、クレタの旅人として偽の物語を語る。ペネロペは夫の消息を聞き、夢で鷲がガチョウを殺す前兆を話す。看護婦エウリュクレイアがオデュッセウスの足の傷跡に気づくが、彼は秘密を命じる。ペネロペは求婚者との弓の競技を計画し、勝者に結婚を約束。オデュッセウスは競技への参加を決め、復讐の準備を進める。アテナが彼を導き、ペネロペの希望とオデュッセウスの忍耐が物語の緊張感を高める。エウリュクレイアの忠義と求婚者の傲慢さが対比され、決戦前夜の雰囲気が描かれる。


20


 オデュッセウスはゼウスに復讐の前兆を祈り、雷鳴が響く。求婚者は宴を続け、アテナが彼らの心を狂わせる。テレマコスは武器を隠し、父と共謀。テオクリュメノスが求婚者の死を予言するが、嘲笑される。ペネロペは夫の帰還を願い、悲しみに沈む。オデュッセウスは召使いの忠誠を試し、裏切り者を見極める。アテナの導きが復讐の準備を整え、求婚者の無礼が頂点に達する。父子の結束と神の前兆が物語をクライマックスへ導き、正義の回復が目前に迫る。


21


 ペネロペがオデュッセウスの大弓を出し、求婚者に12の斧の穴を射抜く競技を提案。勝者が彼女と結婚する。求婚者は次々に弦を張れず失敗。テレマコスが試みるが、父の意を汲み止める。乞人姿のオデュッセウスが弓を取り、容易に弦を張り、的を射抜く。求婚者は驚愕し、テレマコスが父と共闘の準備。アテナが彼を導き、復讐の舞台が整う。ペネロペの策略とオデュッセウスの実力が物語の頂点を準備し、神々の支援が勝利を確実にする。求婚者の無能さとオデュッセウスの力が対比され、決戦が始まる。


22


 オデュッセウスは乞人の姿を捨て、求婚者を弓で討つ。アンティノスを喉に射抜き、テレマコス、エウマイオス、牛飼いピロイティオスが加勢。求婚者は武器庫に走るが、テレマコスが武器を隠していた。エウリュマコスが和解を求めるが拒否され、全員が討たれる。裏切り者のメランティオスは捕らえられ、残酷に処罰。ペネロペは戦闘を避け、部屋に留まる。アテナがアイギスの盾で守り、勝利を決定づける。血と正義の対決が物語の頂点を描き、オデュッセウスの復讐が家の奪還を果たす。イタケの秩序が回復し、物語は解決へ向かう。


23


 オデュッセウスはペネロペと再会し、求婚者の討伐を告げる。彼女は慎重に彼を試し、寝床の秘密(動かせないオリーブの木の柱)を尋ねる。オデュッセウスが詳細に答え、信頼を得る。夫婦は涙の抱擁を交わし、20年の試練を乗り越えた愛を確認。アテナが夜を延ばし、二人の語らいを許す。エウリュクレイアが喜び、忠実な召使いが館を清める。テレマコスは父の勝利を称え、家族の絆が再生。ペネロペの慎重さとオデュッセウスの忍耐が対比され、物語は和解と愛の勝利を描く。イタケの平和が戻り、帰還が完成する。


24


 ヘルメスが求婚者の魂を冥界に導き、アガメムノンとアキレウスが彼らの運命を語る。オデュッセウスは父ラエルテスと再会し、農園で質朴な暮らしに触れる。求婚者の親族が報復を企てるが、アテナとゼウスが介入し、戦いを止める。オデュッセウスとテレマコスは親族と対峙するが、アテナが和平を確立。イタケは調和を取り戻し、オデュッセウスは新たな旅を予感しつつ、家族との再会を喜ぶ。ラエルテスの愛とペネロペの忠義が物語に温かみを加え、神々の導きが人間の運命を完成させる。物語は希望と再生で終わり、冒険の余韻を残す。



『イリアス』はヘクトルの葬儀で終わり、トロイの陥落は描かれない。伝承では、アキレウスがパリスの矢に踵を射抜かれて死に、パリスも死に、アカイア軍は膠着状態に。オデュッセウスが「トロイの木馬」作戦を考案し、木馬に兵を隠してトロイに贈り、夜に城門を開きトロイを陥落させる。勝利後、アカイア軍は帰郷を始めるが、ミネルヴァやポセイドンの怒りで試練に直面。アガメムノンはクリュテムネストラに殺され、メネラオスはエジプトに漂流。オデュッセウスはポセイドンの敵意(キュクロプス事件)で10年間漂流。『オデュッセイア』はトロイ陥落から10年後、オデュッセウスの帰郷を描き、『イリアス』の出来事を回想で補完。両作品は戦争の栄光と帰郷の苦難を対比し、英雄の人間性と神々の影響力を探る。

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