第7話 トランプ関税、計算合っているの?
トランプ大統領が外国に課した高関税ですが、大統領の計算は合っているのでしょうか。
まず、日本からトヨタの自動車を1万ドルで輸入したとします。
すると関税が15%で1500ドルかかるので、アメリカの消費者は1万1500ドルでトヨタ車を購入できます。
購入価格が+15%なので、消費者には+15%ぶんの税負担が発生します。
では、日本側から見てみます。
トヨタが1万ドルの自動車を輸出してアメリカで売れたとします。日本から送り出す価格は1万ドルであり、これにアメリカから関税が課されることはありません。つまり輸出額自体は1万ドルのままです。
では、貿易収支を考えます。
日本から送り出すときの価格は1万ドルのままです。ですので日本が損するとなると、「販売台数が減る」以外にありません。
アメリカが購入するときの価格は1万1500ドルですから、すでに貿易赤字が15%増えることになります。そして関税として1500ドルつまり15%がアメリカ消費者から徴収するので、1万ドルのトヨタ車を販売すると1万ドルにつき1500ドルが連邦政府の懐に入ります。
つまり、高関税を課すことでさらに貿易赤字が拡大してしまうのです。そのうえでアメリカ消費者から連邦政府は15%歳入が増えることになる。
ということは、現在の外国に高関税を課す貿易は、それだけでアメリカの貿易赤字を拡大させます。高関税で連邦政府が潤ったとしても、その原資はアメリカ消費者が負担しているのですから、アメリカ消費者はインフレに悩まされることになります。
そこでトランプ大統領は販売業者に「関税ぶんの値上げをするな」とアメリカ小売大手ウォルマートを恫喝しました。
もし関税ぶんの値上げがなされなければ、販売業者が15%の関税ぶんの利益が吹き飛びます。小売業でもとくにウォルマートは薄利多売のモデルなので、15%を全額負担すれば経営破綻します。
それによって失業者が増えます。
価格に反映させれば単純計算で15%ぶんの売上が減ります。
消費者の懐から関税の原資が出てこないのですから。
もしトヨタが1万ドルの自動車を8700ドルで輸出して、高関税ぶん値引きして輸出すれば日本の貿易黒字は15%目減りしますが、アメリカ消費者は1万ドルの販売価格のままで損もしなければ得もしません。
輸入業者としても8700ドルで輸入できるので安く仕入れられますが、販売価格が1万ドルのままですから、販売台数は減りもしなければ増えもしません。輸入業者は1300ドルを輸入関税として連邦政府に支払います。
トランプ大統領の狙いはこの方式なはずですが、これはWTOが規定する「ダンピング」であり違法です。
つまりトヨタがいかに法を犯して「ダンピング」しようとも、アメリカ消費者の助けにはならないのです。
しかも販売台数が維持できてもトヨタは13%減収します。
「ダンピング」に走るとトヨタですら経営が傾きかねません。
ですので「ダンピング」などせず、堂々と1万ドルで輸出して、アメリカ消費者に1500ドルの関税を払わせるべきなのです。
それがアメリカ消費者にとってトランプ大統領への不満となり、結果として中間選挙での共和党惨敗への道を切り開くことになります。
もし中間選挙で共和党が惨敗して議会が捻れれば、トランプ大統領はレームダックに陥ります。
そうなればトランプ関税を維持できなくなるのです。
アメリカの自動車会社で、現在のトヨタ車以上に売れる自動車が現れないかぎり、アメリカ消費者は1500ドルの高関税を払い続けなければならないのですから。
もしトヨタ車が13%の販売台数減になった場合、連邦政府の貿易赤字は15%減りますが、関税収入自体も15%減ります。
つまり、貿易赤字を減らしても、減税の財源とするべき関税収入自体が細ってしまうのです。
恒久的な財源として「関税」を当てるべきではないことの証左です。
高関税が機能すればするほど、財源が減っていきます。
トランプ大統領は、目先の利益としての「関税」に目がくらみ、長期的な「連邦政府の財政縮小」に気がついていません。
このままトランプ関税を続ければ、早晩アメリカは破綻すること間違いなしです。
日本に15%関税をかける。単純計算で日本からの輸入額が13%減る。想定した税収が13%減る。ということですからね。
中国の場合は145%という超高関税をかけた挙げ句、レアアースなどを禁輸されそうになり、税率を下げておいて口だけは「100%関税をかけるぞ」と負け犬の遠吠えをしているに過ぎません。
中国のように禁輸になってしまえば、関税収入は0になり、大幅な減収となってしまいます。
中間選挙まで有権者にバレずに持ち込めるはずもありません。
来年まで毎月統計が発表されますからね。
しかしその統計局長をトランプ大統領がすげ替えてしまいましたので、偽りの統計をアメリカ国民に伝え続けるかもしれません。
それでも、アメリカ国民は関税としてアメリカ政府に徴税されている金額を把握すれば、離反すること必至です。
そうでなくとも、トランプ大統領が辞職したときに、大赤字の連邦政府の財政が明らかとなり、連邦政府が破綻するおそれすらあります。
トランプ大統領、その計算、合っていますか?
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