お迎え

祖母が亡くなって、もうすぐ四十九日になる。


生前、「死ぬ前には“お迎え”がくる」と言っていたのを思い出す。

「白い着物を着た人が枕元に立つのよ。あれは怖いわぁ」と笑っていた。


俺はその夜、リビングで寝落ちしていた。

ふと目を覚ますと、暗闇の中に人の気配があった。


白い服を着た、小さな子ども。

こちらを見つめ、にっこりと笑っている。


「……ばあちゃん?」


声をかけると、スッとその姿は消えた。

……怖かった。でも、もしかしたらお迎えに来た祖母なのかもしれない。そう思って寝直した。


翌朝、母が言った。


「近所の○○さん家、昨日の夜に赤ちゃん亡くなったらしいわ……生後まもなくて、やっと歩けるようになったところだったのに……」


ああ、じゃあ――。


昨日、俺のところに来た“お迎え”は。


間違えたんだ。






【解説】


この話の怖さは、「誰が迎えに来たのか?」ではなく、「誰を迎えに来たのか」にあります。



・ 「お迎え」は死者を迎える存在。

 →語り手は最初、祖母が“迎えに来た”と思い込むが、違う。

・ 登場したのは白い服の小さな子ども。

 →祖母ではない。「誰かの死」に関係している。

・ 翌朝、母から「近所の赤ちゃんが亡くなった」と聞かされる。

 →子どもの霊が誰かを“迎えに来ていた”と推測できる。

・ 最後の一文「間違えたんだ」がすべてを覆す。

 →霊が本来迎えるはずだった人を間違えた。つまり、語り手が“本来の迎え先”だった可能性が示唆される。

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