第2話 ネット詐欺

 この頃になると、会社を辞める正社員が増えてきた。

 その中には、

「リストラによって、首を斬られた人」

 あるいは、

「会社に嫌気がさして辞めていく人」

 とそれぞれだが、会社もそれが分かっていたのか、リストラとしてではなく、あくまでも、

「自主退社」

 ということで、社員から辞めるように仕向けるというやり方を考えた。

 それが、

「早期退職」

 というもので、会社側の言い分として、

「今辞めれば、退職金に色を付ける」

 という言い方である。

 特に、

「リストラ候補に名前が挙がっている」

 という人は、なやむことだろう。

 そして、退職に踏み切ることになるのだが、そうなってしまうと、

「失業者が増える」

 という社会問題となるのだ。

 そこで考えられた方法として、

「派遣社員制度」

 というものだ。

 それまでも、職業安定署以外にも、民間で、

「企業あっせん会社」

 というものはいくつもあった。

 その頃は、

「正社員が当たり前」

 という、バブル崩壊以前だったのだが、そのあっせん会社が、軒並み、

「派遣社員のあっせん」

 ということになったのだ。

「会社を辞めた」

 いや、

「辞めさせられた」

 という人たちは。どうなるのかというと、

「路頭に迷うわけにもいかず、いまさら、正社員として雇うところはないだろう」

 と感じ、さらに、

「正社員で入っても、責任だけを押し付けられ、またいつ辞めなければいけない」

 ということになるのかを考えれば、少々給料が安くとも、

「派遣社員の方が気が楽だ」

 ということで、派遣会社に登録し、そこから派遣される形で働くという、体勢が、当たり前になってきたのだ。

 それが、今でも主流ではあるが、だからと言って、

「派遣社員制度」

 というものが、順風満帆だったというわけではない。

 確かに、バブル崩壊の中で生まれた。

「新しい体制」

 ということで、混乱が落ち着いてくれば、

「最初からこの体制だった」

 と思えるほどの社会になってきたのだが、それも長続きはしなかった。

 今でも何とか体制は保っているが、ある時期、

「海外で、金融会社が破綻した」

 ということに端を発し、一気に

「世界的な不況」

 というのが襲ってきた。

 そもそも、

「不況や経済不安」

 というのは、

「定期的に起こるものだ」

 といっておいいだろう。

 実際に、日本においても、

「神武景気」

 などと言われたその後で、不況が襲ってきた。

「オリンピック景気」

 などというのも同じことで。

「一時期、特需において儲かることになるのだが、必ず落ち着いてくるということで、そのために雇い入れた人材が、今度は邪魔になる」

 ということになるのだ。

 それこそ、

「反動」

 というものである。

 実際に、

「バブルの崩壊」

 というものは、

「バブル景気における反動」

 といってもいいだろう。

 それを考えると、

「世界的な不況が起こっても、それは無理もないことだ」

 といえるのだ。

 その時、日本も類に漏れず、不況に見舞われた。

 企業も、

「バブルの崩壊」

 の時のような目に遭いたくはないということで、手を打たなければならない。

 そこで考えられたのが、

「派遣切り」

 というものだった。

 パートなどもそうであるが、

「派遣契約」

 というのは、派遣元である派遣会社と、派遣先である、実際に働く企業の間で、定期的に契約を結び、何もなければ、自動更新ということで、更新を重ねていくものであった。

 しかし、それを打ち切ることはできる。

 当然派遣先の会社で、経営にかかわる問題が起これば、

「派遣を斬る」

 あるいは、

「別の会社に変える」

 などということは、普通に行われていることだろう。

 実際に、

「派遣切り」

 というものが行われ、バブルの時のような、

「たくさんの失業者が街に溢れた」

 ということである。

 しかし、この時は、

「バブルの崩壊」

 とはわけが違った。

 そもそも、バブル崩壊の時期というのは、その前に、

「バブル経済」

 というものがあった。

 つまり、

「やればやるほど給料がもらえて、24時間戦っていたという企業戦士がいた時代だったのだ」

 だから、

「お金はたくさんもらえるが、それを使う暇がない」

 ということで、皆がそれなりの貯蓄というものを持っていた時代だったのだ。

 だから、

「いきなりリストラ」

 と言われても、少しの間は、

「生活に困らない」

 という人もいただろうが、この時に、

「派遣切り」

 というのは、そもそも、

「生活していければいい」

 ということで、

「責任がなく、時間から時間で働いている人」

 から思えば、派遣を切られた時点で、

「待ったなし」

 ということになるのだ。

 もちろん、Wワークというものをしていた人もいるだろうが、そうではない人にとっては、

「たまったものではない」

 ということで、結局は、

「どの時代でも、立場が弱い人間が、損をする」

 ということになっているとして、諦めるしかないのだろうか?

 さすがに、年末などの寒空で、皆公園の野宿などということになるとかわいそうということで、ボランティアによる、

「炊き出し」

 などが行われているというシーンをテレビなどで見たものである。

 だから、本来であれば、

「派遣社員も危ない」

 ということになるのであろうが、何といっても、バブル崩壊というものが大きかったからなのか、

「時代の体制を変えることはできない」

 というほどになっていたということであろう。

 しかし、海外などでは、そんなこともなく、利益を挙げていて、社員の給料も上がっているのだが、日本は、まったく前と変わっていない。

 そういう意味で、

「失われた30年」

 などという言われ方をするのだろうが、実際には、どうなのだろう?

 これは、そもそもの、日本固有のやり方としての、

「終身雇用」

 であったり、

「年功序列」

 という考え方が残っているからではないだろうか?

 ただ、だからと言って、

「それが悪いことだ」

 とは一概には言えないところがある。

 というのは、

「会社は、自分を守るためということで行っていることがあるのだが、それを内部留保という」

 この、

「内部留保」

 というのは、読んで字のごとしということで

「会社の蓄え」

 という意味である。

 この内部留保があるから、

「社員に儲けが還元されず、給料が安いまま」

 ということで、さらには、

「商品を安くできない」

 ということで、

「物価の上昇を招く」

 ということになる。

 だから、

「日本という国は、物価はどんどん上昇するのに、給料は上がらない」

 ということで、海外と比較するから、

「失われた30年」

 などと言われるのであった。

 だが、逆に言えば、

「内部留保があるから、助かっている」

 というところも実はあるのだ。

 それが証明されたのは、

「世界的なパンデミック」

 というものが起こった時だった。

 世界的に、道の伝染病が巻き起こったということであるが、それによって、世界は大パニック。

 ほとんどの国は鎖国状態となり、経済は大混乱。そのために、潰れる会社も世界的にはかなりあり、失業者も溢れたのだ。

 もちろん、日本も同じような目に遭っているわけだが、海外に比べれば、

「比較的マシだった」

 という話もある。

 その理由として、

「内部留保が影響しているのではないか?」

 と言われている。

 もちろん、どこまでが本当なのか、信憑性は分からないが、理屈から考えれば、

「会社が金を蓄えていたから、首にする社員が抑えられた」

 といってもいいだろう。

 それこそ、

「アリとキリギリス」

 における

「アリのようなものだ」

 といってもいいかも知れない。

 普段から耐え忍んでいることで、

「いざという時に貯えがあり、その困難を乗り切ることができた」

 とも考えられるわけだ。

 ただそれを、最初から企業は考えていたということなのだろうか?

「ただの怪我の功名にすぎない」

 ということなのではないだろうか?

 それを思えば、

「社会というのは、どこまで信じていいのか分からない」

 ともいえるだろう。

 実際に、

「けがの功名」

 ということで助かる人もいるからである。

 さらに時代がバブル崩壊の時期に、パートに出るようになった女性が、

「男女雇用均等」

 ということを言い出したことで、

「女性の権利」

 というものが大きな問題になってきた。

 そもそも、アメリカなどでは、昭和40年代くらいに、

「ウーマンリブ」

 などという考えがあり、

「女性の権利が叫ばれる」

 という時代があった。

 日本はその時はそこまでなかったのだが、そこから、約30年くらい遅れた形で、

「男女雇用均等」

 ということが叫ばれ出した。

 もっとも、それは、

「雇用だけの問題ではない」

 ということで、

「権利」

 ということで大きな問題になったといってもいいだろう。

 何しろ、職業などで、

「差別的」

 ということで、

「男女差別につながる」

 と、呼び名が変わった職業もあった。

 作者は、そこまでのことに関しては、疑問があるのだが、それは横に置いておいて、

「スチュワーデス」

 という言葉が、

「キャビンアテンダント」

 つまり、

「CA」」

 と呼ばれたり、

「婦人警官を、女性警察官」

「看護婦を看護師」

 などと、

「形から入る」

 ということなのか、そんな風潮があったのだ。

「別に、名前などどうでもいい」

 と思う人がいる反面、やたらにこだわる人もいる、

 もっとも、それは、たぶんであるが、

「マスゴミ」

 というものによる陽動が大きいのではないか?

 と考えられるのではないだろうか?

 かつての、戦争において、元々閣議決定されて始まった、

「大東亜戦争」

 というものを、戦勝国の自分たちの罪を隠すために、

「使用してはいけない」

 と言われ、押し付けられた、

「太平洋戦争」

 という言葉、独立国になってからでも、いまだに使っているというのは、

「当時のマスゴミだけではなく、今のマスゴミにも、その責任があるのではないだろうか?」

 そんなことを考えると、

「今の時代における、男女雇用均等法、本当に、いいのだろうか?」

 と考えさせられるのである。

 そんな時代において、その少し前くらいからであろうか、

「個人情報h後」

 という問題が騒がれるようになった。

 ここには、いくつかの問題が孕んでいると思われるが、その一つとして、まずは、

「パソコンの普及」

 それに伴っての、

「ネットの普及」

 というものがあると考えられる。

 その一つとして、問題となるのは、

「ネット詐欺」

 という問題である。

 かつては、

「オレオレ詐欺」

 さらには、

「振り込め詐欺」

 というものである。

 どちらも、似たような詐欺であるが、まず前提として、

「家族の危機を電話で煽る」

 という手段であった。

 特に、

「オレオレ詐欺」

 というのは、

「息子であったり、孫である人間から電話がかかってきた」

 ということで、相手がまず、

「慌てている」

 ということがミソである。

「いつもと違う声でも分からない」

 という利点もあり、騙す方とすれば、ありがたいことであった。

 その内容として、

「事故を起こしてしまって、治療費がいる」

 ということであったり、

「会社の金を落としたので、弁償しないといけない」

 などといって、ありがちな話で、相手を信用させるということであった。

 しかし、冷静に考えれば、

「おかしい」

 と思えることばかりであり、

「間髪入れずに相手をいかに信用させるか?」

 ということが問題だといっていいだろう。

 詐欺師は、その電話で相手が信じたと思えば、

「○○銀行にお金を、今日中に振り込まないと」

 といってさらに焦りを煽るのだ。

 特に、銀行の窓口は、3時まで」

 ということで急いでいるだろう。

 今であれば、ATMの機械がたくさん街中に設置されていたり、さらには、コンビニで、24時間使えるATMだってあるではないか。

 しかし、今から20年以上も前ということであれば、どうであろうか?

「午後3時までに」

 ということで、

「相手が確認する暇を与えない」

 ということになるだろう。

 実は今でも、似たような詐欺はあり、

「夜の9時過ぎくらいになってから、今日中に振り込まなければ、利用できなくなる」

 という、

「ショートメール」

 が来たりするのであった。

 実際に今でも存在する、ネット詐欺」

 であるが、

 これらの詐欺というのは、実に厄介であるが、

「焦りを狙う」

 ということに掛けては、昔と変わっていないということだ。

 最近のネット詐欺というのは、手が込んできていて、

「銀行振り込み」

 などであれば、ATMを使ったとしても、

「どこで引き出すか?」

 などというのは、分かってしまう上に、

「防犯カメラの映像」

 ということで、すぐに面が割れるということになる。

 しかし、やつらは組織を使っていて。

「引き出し役」

 であったり、

「相手との接触する役」

 というものを、アルバイト感覚で雇うことで、

「犯人にたどり着くためには、かなりの苦労がいる」

 ということで、犯罪を逃れようとしている。

 それこそ、犯罪者と警察との間での、

「いたちごっこ」

 というのが、実に昔から行われていることであり、特に、

「コンピュータの普及」

 というあたりから、その傾向は強いといえるだろう。

 特に、

「コンピュータウイルス」

 と呼ばれるものが普及したことから言われるようになったもので。

「ネットなどを使って相手のコンピュータに侵入し、ウイルス作成者の思いのままに、パソコンをリモートで捜査し、情報を引き出す」

 ということである。

 ウイルスには、最初からプログラムが組み込まれていて、駆除しないと、勝手に、データを取られるというものである。

 だから、

「詐欺集団は、新たにウイルスを送り込み、警察は、それの駆除のために、駆除ソフトを開発する」

「すると、また犯罪者は新しいウイルスを作り送り込んでくるが、今度はまた駆除ソフトを作る」

 という、完全な、

「いたちごっこ」

 を繰り返すことになるのである。

 そして、この時に盗まれる情報が、

「相手の個人情報」

 つまり、

「名前、住所、電話番号」

 の基礎的なものから、

「会社、家族構成、さらには、預金通帳の暗証番号など」

 というところまで根こそぎやられてしまう。

 だから、パソコンが壊れた時なども、その廃棄に際しては、

「完全に、CPUをぶち壊す」

 というところまでしないといけないということは、結構昔から言われていることであった。


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