第21話 背負う

タクミが死んだ朝。

リビングの空気は沈みきっていた。


でも、俺の中では、それとは別の熱が沸騰していた。


「なぁ……」


静かに、でも強く声を出した。


「神谷レン。お前……なんでミコトを煽ったんだよ」


ユズハが顔を上げた。

ミコトは肩を小さく震わせたまま、視線を下げていた。


「お前があんなこと言わなければ、ミコトは……」


「惚れなかった、って?」


レンの目がわずかに細まる。


「それは、違うんじゃない?」


「ふざけんな。

惚れる感情ってのは、そんな簡単に──」


「簡単じゃないよ。

でも、彼女はずっと惹かれてた。

それが昨日、俺の言葉で──ほんの少し、背中を押されただけ」


「だからって、タクミが死んでいい理由になるのかよ!」


「違う」


その瞬間だけ、レンの声に色が消えた。


「……違うよ。死んでいいなんて思ってない。

でも、“感情を抱いたこと”を否定するのは、もっと酷いと思う」


「…………っ」


言葉が詰まる。

たしかにミコトの想いは、昨日急に湧いたもんじゃない。

ずっと、抑えてたんだ。


だからこそ、レンの言葉で溢れてしまった。


(──惚れてしまった)


それだけ。

それだけで人が死ぬなんて。

どうかしてる。


「だったら……お前はその“背中を押した責任”を、どう取るんだよ」


レンは、少し黙った。


そして、紅茶をひと口。


「背負うよ。全部、背負ってるつもり」


「口だけなら、いくらでも言える」


「だったら──一緒に探そうぜ」


レンが、ゆっくり言った。


「このルールを作った奴を。

“惚れたら死ぬ”なんてルールを“正しい”ってAIに教えた奴を。

……俺たち、誰の感情の中で踊らされてるのか、突き止めよう」


俺はしばらく黙っていた。

でも、その視線だけは逸らさなかった。


「タクミの死を無駄にする気は、ねぇ」


レンが静かに微笑む。


「いいね。やっぱり、レイは主人公だ」


クソ、こいつ調子狂う。


でも──このゲームの向こう側にある“誰かの価値観”に、俺ももう気づき始めてる。

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