第20話

 事故に遭って1日経った。軽くびっこ引きながらじゃないと歩けないから、歩くのが遅くなってしまうのはしょうがないと思う。そんな軽い思いで俺は過ごしていた。俺は足を捻挫したくらいの思いだったんだが、同僚はもっと深刻に捉えてたみたいでとても心配された。


正直びっくりした。俺なんかいくらでも代わりがきくし、正直死んでも心配なんてされないだろうと思い切ってたからだ。


「昨日はアーロが落ち込んで、仕事に支障をきたしてたぞ」


同期のカレルがコーヒー片手に、俺にそう言ってきた。


「は!?あのアーロが!?」


アーロはお調子者で有名だからこそ、俺が轢かれかけたくらいで大袈裟な、と思ってしまった。だけど、仕事に支障をきたすってことは全体に迷惑をかけたってことだ。俺は各所に謝りに行くべきか?と考えていたところに、アーロが出社してきた。


「ヒジリー!!心配したんだぞ!!お前轢かれたっていうし」


「轢かれたって言っても、自転車とぶつかったって表現の方が近いから」


「ま、まぁ無事そうで良かったわー。でもお前の隈やばいよ?」


隈?と思う。朝、顔を洗ったときに顔は見たけど、隈なんてなかった気がする。いや、隈って自分でわからない気がするし、アーロの言う通りひどいんかな。


「アーロの言う通りだわ。たしかに隈やばい」


「ええ?カレルまで?……俺そんな不摂生とかしてないと思うんだけど」


「やっぱり事故に遭ったショックはあるんじゃないか?」


ショックかぁ、と思う。個人的には事故に遭ったショックよりも、朝起きて弦がいなかったことの方がショックが大きかったような気がする。


「あ、そーそー。俺昨日ツルさん?に会ったかも」


「何で俺が会えなかったのに、アーロとは会えてるんだよ」


正直羨ましくてしょうがなかった。よくハンカチを噛み締めて泣く、なんて表現があるけど、それをしたくなる気持ちがわかってしまった。


「真顔怖。いや、スーパーで買い物してて、変な男に絡まれてたから助けたんだよ」


「……なんだ、ありがとう」


カレルがヒジリは相変わらず感情の起伏が激しいなぁって後ろで言ってる。


(うっせ)


始業時間になってしまったので、おしゃべりは終わってしまったがとりあえずアーロに何度も感謝をして俺は仕事に集中することにした。何か言いたげだったアーロのことは無視したけど、別にいいよな?

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