第15話
今日は6月17日。27度目の俺の誕生日だ。これといって何か日常に変化があるか、といわれたら何も無い。ただ、スーパーでちょっと高い酒とお菓子を買って帰ったくらいだ。真っ暗な家に着き、1540と打ち込みドアを開けた。
「おかえり、聖くん」
ドアを開けると、真っ暗な玄関に弦が座っていた。危うく、荷物を落としかけた。
「弦……心臓止まるかと思った。なんで電気つけてないんだよ」
「聖くんをびっくりさせたくて」
俺を驚かそうとしてる弦も可愛いが、俺的には電気つけて待ってて欲しかったなと思う。なんだかんだ弦とはすれ違いの日々だった俺は、荷物をその場に置き、久しぶりに会えた弦の身体を抱きしめる。
「聖くん、ちょっと苦しい」
「うん、でもこれくらいしないと弦のこと感じられない」
柔軟剤やシャンプーなどの微かな香りのなかに、香る弦の匂い。決して体臭がきつい、とかそういうことではない。けど彼女から香る香りは、俺の心を満たしてくれる。
「聖くん、満足した?」
「ううん、まだ」
「早く冷蔵庫に生ハムしまわないと腐っちゃうよ」
そう言われて、俺はスーパーで買い物をしてから帰ってきたんだということを思い出す。弦に会ったことですっかり頭から抜けていた。にしてもなんで生ハム買ったことわかったんだろう。
「聖くんのことだもん。なんでもわかるよ」
「俺も弦のことなら、なんでもわかるって言いたい。けど、今みたいに心の中まで当てられる気がしない」
まだ抱きしめてる俺を弦はくすくすと笑っているが、そんなに面白かったか?
「ふふ、聖くん外ではキメッキメなのに、私の前だとこんなに犬みたいになっちゃうの可愛い」
「わん」
「はーい。じゃあ良い子の聖くんは一緒にお部屋入りましょうねー」
ふざけた俺にも優しく接してくれる弦は、やっぱり天使だ。きっとこの世に存在しないくらい清らかな存在なんだ。
弦に再三、生ハム腐るよ?って言われて、冷蔵庫を開けると俺の好物だらけだった。しかもタッパーに詰められて、作り置きされている。下の方には、きっと誕生日だからと買ってきてくれたケーキの箱が入っていた。きっと中には弦の好きなフルーツタルトと俺の好きなガトーショコラが入ってるんだろう。
「弦……ありがとう」
「えーなんのことー?私は聖くんが大好きで、勝手にやってるんだよ?私がいなくなったら聖くんは、ご飯もまともに食べないじゃん。ちゃんとした食生活送ってほしいなぁ」
たしかに、俺は弦が最近料理をこうして作り置きしてくれるようになってから、同僚に気づかれるくらいには顔色が良くなった。弦のおかげだ。
「俺には弦が必要なんだよ」
「私も必要だけどそういうことじゃないんだよー!ま、ご飯食べようか。用意するから、聖くんはスーツ着替えて来な」
「ありがとう。お言葉に甘えてそうする」
今回の誕生日のディナーは27回あったうちの、3位くらいには輝く感動の連続だったことをここで表明しておく。
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