19話.コツコツ発掘、発掘と地下迷宮の歴史と


19話.コツコツ発掘、発掘と地下迷宮の歴史と



 カンッ、カンッ、鋭い音が連なっていく。


 カンッ、カンッ、鋭い音を重ねていく。


 ケンゾウさんを見送ってから、俺は脇道に入って発掘作業をしていた。『おみおくり』じゃないよ?ケンゾウさんはあと五十年は生きてそう。多分殺そうとしたって死なないだろう。


 ケンゾウさんは恐らくかなり強い。総合レベル20以上はあるんじゃないかな?伊達に五年間も探索者をしてはいないだろう。


 地下迷宮が一般公開された時は、かなり危険なこともあったと聞いた。みんな手探りでやってたわけだし、今のように探索者の試験も無かったから、危ないやつも中には居たはずだ。


「もともと冒険者が夢だったケンゾウさんはそう言うのも含めて冒険だって言うけど。俺には無理だな。ないない」


 叩き上げと言ってもいい。黎明期を駆け抜けてきた人たちは、実力でも精神面でも猛者ばかりだろう。


 質実剛健と言うのだろうか。中身のある強さ。そんな人たちに少しでも俺は近付きたい。危険なことは避けたいけどね。


 そんな俺が今やっているのが発掘だ。一定の間隔でピッケルを持ち上げ、振る。叩く音を聞きながら、よりベストなやり方を探っていく。



 地下迷宮における発掘の歴史は長く、一般公開前にまで遡る。


 始まりは投石による魔物の討伐事例が発見されてからだ。投石はその当時では唯一、魔物を倒せる武器だったため、みんな必死でそれを集めようとした。


 しかし地下迷宮の石は外に持ち出しても意味が無い。ただの石になってしまい、魔物を倒せなくなってしまうのだ。それによる事故もあり、その事は地下迷宮界隈で、即座に周知されたと言う。


「これを投げれば倒せる!って思ってた物が魔物を素通りして、しかも敵が向かってきてたらパニックだろうな。……もはや罠じゃん」


 魔物を倒すための石は結局、潜ってから逐一集めなくてはならない。そこで、より効率よく集めようと考えられたのが発掘だった。


 魔物は持ち込んだ装備では触れることさえ出来ないが、壁は違う。そもそも地下迷宮の物に触れたり歩いたりは出来ていたのだ。ならそれを壊す事も出来るだろうと。


 結果として、ただ石が採れるだけでは無く、鉄鉱石を始めとした色んな素材が採れる事もわかり、今ではギルドによって、市場マーケットの相場で買い取って貰えるようになったわけだが。各種税金は消費税のように、その都度引かれるらしい。


「そういうところは余念がないマメだもんな。その勤勉さ、もっと別のベクトルで発揮して欲しい」


 一般公開以前の地下迷宮の歴史で、私たちに明らかになっている事は少ない。これまでの情報もギルドの公式ページや、ギルドで配布されている冊子などで分かる事ばかりだ。


 いったい何があって一般公開に踏み切ったのか。そもそも地下迷宮はいつ、どうやって出来たのか?謎は尽きない。


「まあそこまで興味は無いんだけどね。考えても分からない事だらけだろうし」


 俺が強くなって、稼げる場所があるのなら、今はそれだけで充分だ。そこにどんな思惑があろうが無かろうが、どうにか出来るものでも無し。

 それは地下迷宮に限った話では無い。色んな闇があり、色んな思惑や悪意があって、誰かが支配し、支配されている。現実って怖いよね。


 カンッ、カンッ、と辺りから響く音で、自分の手が止まっていることに気が付いた。他の人が岩壁を掘っている音や、投石訓練をしている音が微かに聞こえる。


「みんな頑張ってるな。呆けてる場合じゃ無い。俺にとっての現実はここなんだ」


 ケンゾウさんも言ってたじゃないか、内側に広がる世界を見ろと。内側の自分を見ろと。


 身体を磨いて、スキルを磨いて、ちょっとした稼ぎと自家製の野菜と。そんな健康的な暮らしが丁度いいんだ。


 身体器用のスキルを発動してピッケルを振るう。新躰強化がレベル5になって暫くだ。そろそろだと思うんだよな、身体器用も。



 

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田スダ 知春チハル


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.5

・身体器用 Lv.4

・進退強化 Lv.5

・息 Lv.2

・気 Lv.2

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