私と魔女と人狼と

馬人

プロローグ

 私の世界には人狼がいる。

 これは、少し前に、私の姉から聞いた話だ。

 この世界には人狼という生き物がいる。

 それは人間と良く全く同じ目をしていて、人間よりも少しだけ力が強くて、人間にはない特殊な能力を持っていて。

 そして、肉が大好物。

 人間だって、ぺろりと食べてしまう。

 「怖いよ」

 この話を聞いた時、幼い私は姉にそう言った。

 「大丈夫」

 姉は、にこやかにそう答えた。

 そんな人狼から人間を守るために、この世界には魔女がいるのだと。

 人間を守るため、魔法を揮う、七人の魔女たちがいるのだと。

 だから、私は心配しなくてもいいんだと。姉はそう言ってにこやかに笑った。

 かくして、今でも私の世界は回る。

 ぐるぐるぐるぐる。上に載るものを振り落とすように。

 姉の、何気ない世間話のように。

 その裏に、失ったものはしまい込んで。

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