第2話 開始1分

教科書49ページ。

一発で開いたページには世界の写真がある。


インドっぽい女性の服。

後でこの写真から『読み取る』みたいな問題が出るんだろうな、とか思う。


社会の授業の流れはこう。

導入、音読、授業プリント、まとめ、だ。


まずは導入。

最近隈田が調子にのって使っている

電子黒板に教科書と同じ写真が載る。


「この写真からわかること、わかる人。」


日本語おかしくね。

それより今週から授業内発表を増やそうみたいな

活動のせいでやたら発表させたがる。


面倒だが今、手を挙げなければ教室中から視線を集めてしまう。


頭より少し上に指先が来るよう手を挙げる。

当たるな...


心臓の鼓動が微かに聞こえる。


「じゃあ坂田。」


ふぅ。

緊張の中でも最底辺の緊張だろうと自分で思う。


「ありがとう、じゃあ他なんかありますか?」


活動では一つの授業で

一回手を挙げれば良いので

教室の半分以上が手を下げる。


「ちょっと。みんな手下げすぎ。いいわかった、一回手挙げてくれてる人手下げてー。」


あ、やってしまった。

説教開始の合図がなった。


背もたれから背中を離し、聴いている風に

机の下で右手で左手で触る。


時計をチラチラ見ながら、「はよ終われ」

と言いまくる。


「〜わかった?」 

「はい、じゃあ続きやるけど。」


やっと終わった。それでもまだ授業は開始3分。

インドは今早朝ぐらいだろうか。



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