第9話 最終章エピローグ
――願いを、祈りに 祈りを、かたちに――
夜が静かに降りるころ、ホールの灯が落ちた舞台袖に、ひとつの小さな冊子が置かれていた。
表紙には、タイトルも作者名もない。けれど、柔らかな手触りの紙に包まれたその中には、「言葉では届かない想い」が、確かに息づいていた。
それは、ある人が“過去の自分”から抜き出した、ひとつのメモの切れ端から始まった。
破れたページには、震える字でこう綴られていた。
願いを、祈りに
祈りを、かたちに――
言葉にするには幼すぎて、
痛みを正直に見つめるには苦しすぎて。
けれど、誰かのために変わりたいと思えたその日から、そのメモは“歌”になった。
彼が描き続けた物語が、
彼女が支え続けた心が、
そしてもうひとりの「彼女」が、
確かに守り続けた時間が、
全てこの曲に織り込まれていた。
⸻
🎼 Lost Language(失われた語源)による歌詞と翻訳(パンフレットより)
⸻
※一部の失われた語源を翻訳しようと試みたメモがページの隅に記されている。
⸻
Leisha falem, noreti sa nohr.
願いの名を呼ぶ、届くことなき空へ
Tymera ar cainel, yurin lesha.
傷跡の音に、祈りが宿る時
Faurim ne lira, nol eiven tera.
形にはできない光を、まだ掴もうとしている
Nar falem…
けれど願う…
⸻
最後のページには、
ただひとことだけ。
願いを、祈りに
祈りを、かたちに。
その言葉だけは、
すべての人に、確かに届いた。
観客の誰かが「泣いた」と言った。
ある人は「まるで自分の物語だった」と。
誰かの歩んだ“Rewrite”の道は、別の誰かの“Blue”をも照らしていた。
スポットライトが落ちたその先で、
彼はそっと手を伸ばした。
隣には、彼女がいた。
そしてもうひとりの彼女も、どこかで微笑んでいるような気がした。
願いは、祈りになった。
祈りは、やがて――かたちになった。
⸻
🌟完
『0号室の2人』外伝・ 零〜二幕〜 @milla1201
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