英雄はヤンデレに依存した〜婚約破棄?権力脅し?かかってこいよ微塵斬りにしてやる(隣のヤンデレ極道女子がなぁ!)

黒猫の餌

泥棒猫を駆除せねば

西宮琴音 篇

第1話 遠い所へ逝った弁護士

「琴音さん今月もこのお薬を寝る前にコップ一杯、飲んでね」


ニコニコ顔のお医者さんはいつも同じ薬を処方する。


ヤブ医者ではないらしいけれど小学3年生から約8年間も通院して何もならない......もしかして不治の病とか?


--いや、そんな訳ないか。


身体は何処も痛くないし、体調不良で学校を休んだ事もない超健康体の私。それでもママとパパは必ず月末に日本で一番大きいこの聖央病院に連れて行く。


「先生、いつもありがとうございます。あの良ければこちらを」


ママは三連休を利用して遊びに行った名古屋港水族館のお土産をお医者さんに渡した。


「なんと!丁寧にありがとうございます。名古屋に行かれたのですか」


「娘の婚姻も近いですのでなるべく家族の思い出を沢山取ろうと思いまして......運転は大変でしたがね」


パパが「例え1秒でも琴音といる!」と言うから新幹線を使わないで気合いで車を運転してくれた。眠気覚ましのガムやドリンクを浴びるほど飲んでいたのは可哀想だったけど・・・イルカのショーも楽しかったな。


「そうか、琴音さんの婚約者もそろそろ戻って来られる頃か。寂しくなるけど、幸せにね!」


「......ありがとうございます」


一度も会ったことのない婚約者と結婚なんかして幸せになれるとは思えないけれど、ここで反論してもまた親子喧嘩になるだけ。


「あっ!そうそう。敦史からよく君の名前を聞くけど、としてこれからも仲良くしてやってね」



“友達”か......



宮島 敦史みやじま あつし君は私と同じ小、中、高で実は今年からお付き合いをさせて貰っている。


『浮気』だって、十分わかっているし何年も悩んだ。


けれど、私の学生生活の殆どが写真だけでしか見たことのないブサイクな男性の婚約のせいで“恋愛”を妨げてきた......


私だって友達みたいに自由に恋愛したいし、学生でしか出来ない色んな経験を積みたい。


それが罪というなら私の人生は?アイデンティティは?



何もない、と思う。



もしかしたら婚約者の男性は良い人なのかも知れないけれど、今まで会ってもない人にこれからずっと人生を牛耳られるのは嫌だ。


だから、私は私の“好き”を否定したくない!


敦史君やクラスメイトにその事を何度も相談してようやくクラス内だけでは敦史君とのお付き合いが認められた。


でも普通は当人の意思だけで付き合えるものなのに、婚約者のせいでクラスに根回しや了承してもらわないといけないなんて余りにも辛い......


いつかはママとパパにバレるからその時までに婚約破棄を考えてはいる。敦史君もお父さんの顧問弁護士に相談してくれたらしい。


なんでも『婚約契約書』や不貞行為、敦史君との肉体関係がある場合は賠償金を支払う必要があるらしい。


ただ弁護士さん曰く、今回のような私の同意がない婚約や相手方に社会通念上、問題がある場合はダメージを少なく解消出来るそうだ。


詳しく話を伺うために私と敦史君で弁護士事務所の方へアポと相談料の10,000円を持って訪ねたけれど事務所は閉鎖されていた。


なんでも一身上の都合で弁護士連合会から退会したらしく弁護士の活動は法令上、もう出来ないらしい......


そんな事もあってクラス以外では敦史君とお付き合いしていることは内緒になっている。敦史君のお父さんも仲の良い友達としか思っていないはず、だよね?




「宮島先生〜やはりぃ〜西宮琴音はぁ〜貴方の御子息と浮気しているようですねぇ〜」


西宮家が病院に来る前の日、私は病院の院長室で国の諜報員から報告を受けていた。


息子の敦史が琴音さんに恋慕を抱いていた事は薄々だが勘付いていた。


人間も生き物なのだから異性を好きになるのは当たり前だが、今回はどうしてもその恋を否定しなればならない。



「宮島先生のぉ〜顧問弁護士さんにぃ〜婚約破棄を相談していたようですぅ〜」


「......前嶋弁護士は」


弁護士さんはぁ〜なんでもぉ〜世界一周が夢だったようでぇ〜遠い所へ逝ったようですぅ〜」


「......っ?!」



やはりそこまでするのか。


例え息子に蔑まれようと、親としての縁を切られようと、私はその恋を全力で否定せねばなるまい。



--息子は殺させない



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