第2話 社会の授業(ダンジョンの起源)
「おはおはー!」
「おはよう〜」
「おはよう、うさぎ〜」
相変わらず元気なクラスメイトだ。
お調子者も多いけれど私にとっては家にいる時よりも気が楽になる大切な場所。
そんな場所に私の最愛の彼氏も居るのだから楽しいに決まっている。
「琴音は今日弁当なのか?」
「まだ朝なのにお昼の心配するの?食いしん坊ね」
敦史君は痩せ型だけど筋肉がある方で、細マッチョ。前に腹筋と胸筋を触らせて貰った時はピクピク動かして思わず爆笑したっけ......
「“食は命なり”っていうだろ?それよりも朝から社会とかだるいなぁ」
「うん、なんかこの学校だけカリキュラムおかしいよね?」
私達の通う桜蘭高校のカリキュラムは私が入学した時に変更されたようで、かなり偏った教科になっている。
______________
月-木曜日
SHR(ショートホームルーム)
金曜日
LHR
1時限目 社会(ダンジョンの歴史)
2時限目 社会(礼儀作法)
3時限目 社会(ダンジョン知識)
休憩 15分
4時限目 体育(ダンジョン実技)
昼休み 1時間30分
5時限目 数学
6時限目 英語
______________
これで3年間も固定されている。
国語とか、化学など他の高校にはあるのに桜蘭高校にはない、というよりなくなった。
一応、進路調査で必要な科目がある人は休日に近間の大手予備校で講師がしてくれる。無償という事で3年生の受験が控えている先輩には羨ましいという声もあるらしい。
私は看護師になって敦史君と同じ職場で働ければなぁ〜と思っているから予備校には行っていない。むしろ、その時間すら敦史君とデートしたいくらい。
それに今週末には--
「はーい!お前らおはよう!さっさと席につけや」
豪快に教室のドアをスライドさせて入ってきたのは
「はい、お前達が席に着くまで2分30.11337秒も掛かりました。よって社会は小テストを行いまーす!」
「横暴だ!」
「せめて前日に言ってください!」
「こうなったらストライキだ!!」
ストライキは......労働者の権利だよ......
「おうおう、社会の先生に向かってストライキとは......今井、お前放課後に補習ね」
「そ、そんな〜!」
「「「あははははっ!!!」」」
--こんな幸せなクラスに入れて本当に私は幸運だ。
「さてと、学校からの連絡事項は特にないが担任として言っておくことがある」
真剣な表情になった先生を見てクラスメイトも姿勢を正す。
「お前らは自由だ。来年になれば成人になり更に行動の自由が約束される。学問、進路、そして......恋愛もだ」
「ただ、自由には“危険”が伴う。よく大人が“責任”というが、それは違う。“責任”が取れるほどの財力や権力、能力があれば良いがそれは総理大臣くらいだ。表面だけ見て軽々しく“自由と危険”を取るなよ。何かあれば相談しろ!いいな?」
前田先生の深みのある発言で朝から重苦しい雰囲気に包まれた教室だけれど授業は淡々と進んで行った。
ただ、いつもの事ながらどの授業でも私は必ず問題を当てられる。
「では西宮、ダンジョンの起源を簡潔に答えろ」
「はい。ダンジョンはこの世界ではない異世界から輸出された事で誕生しました」
「正解だ。良い回答だが、なぜ異世界からダンジョンが来たのかも述べられれば満点だな」
元々ダンジョンは地球にはなかった。
ある時、地球人が異世界に勇者として召喚されて行ったそうだ。そしてその時に異世界側の能力が召喚術を通して地球にまでやって来て幾つものダンジョンが生成された。
異世界は勇者を手に入れ、地球は異世界の魔法やダンジョンの源を手に入れたのだ。
--悲しい事に魔法の実用性はなかったけれどね。
手から炎を出したり水を操ったりする事は出来たので当時は大騒ぎになったそうだ。
御伽話の魔法が使えるという事で『火力発電は魔法から生み出した炎で!』や『水流を操って発電!』、『いじめの復讐で魔法使用か?』などなど世間を騒がせたのも束の間。
--魔法はショボかったのだ。
タバコに火をギリギリ付けられるか、否かレベルの炎しか出なかった。更に水は、ほぼ汗だった。
レベルアップすれば強力になると思い、ダンジョンに篭った者も居たが全く変わらないマッチより弱い炎しか出なかった・・・
______________そして最悪の結論が世間を騒がした
魔法の研究所よりもむしろSNSではかなり調査が進み、ある一つの疑問が出ていた。それは--
『元より魔法が使える異世界人が対処出来ない事象を抑えるために異界の勇者を召喚する必要があった。つまり、地球人が地球で魔法を使ったところで威力は下方修正される』
魔法の価値が下落した事を受けてダンジョン管理は困難を極めたそうだ。
異世界転移により地球には無価値の魔法、害悪のあるダンジョンが残された。
これがダンジョンの起源だ。
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