第4話 明日も、ダンジョンはコンビニの裏にある
コンビニの裏口をくぐったとたん、世界はあっさりと日常に戻った。
自動ドアが「ピンポーン」と鳴る。
ちょうど、店員が焼き鳥を並べていた。
「……マジで、帰ってこれた」
その夜。アコウは自分の部屋にいた。
制服のままベッドに倒れこみ、天井を見つめる。
「ダンジョン、夢、スライム……観覧車バトル……」
「ないわー!! 現実味ゼロ!!」
でも、剣の感触はまだ手に残っていた。
そして、何より――
胸の奥で、“何か”が動いていた。
「……夢かあ」
ぽつりとつぶやく。
あの“ユメダマ”や“未来の自分”とのやりとりは、夢の中にしてはリアルすぎた。
でも、現実にしては――ちょっとだけ、優しすぎた。
机の引き出しを開ける。
そこには、小学生の頃の「マンガノート」がしまってある。
表紙には、ヒーローものの落書き。
“アコウ先生 さく”と殴り書きされている。
「……あのとき、バカにされて、隠したんだよね」
描くのが好きだった。
でも、「どうせ無理だよ」って、最初に言ったのは、自分だった。
アコウは、そっとノートを開いた。
描きかけの1ページ。ギザギザの線、ムチャクチャな構図。だけど、すごく楽しそうな線。
「なんで……これ、やめちゃったんだろ」
ふと、スマホが光った。通知は一件。
《お疲れ様!成長したアコウ様へ、次の試練をお届けします》
「ユウか!!なんでメール使ってんの!!てかなんでアドレス知ってるの!?」
思わずスマホを布団に投げる。
でも、笑っていた。
「……明日、ノート持ってってみようかな」
ダンジョンに、じゃない。学校に。
“描いてみたんだ”って、誰かに見せてみようかなって、少しだけ思った。
そんなアコウを、天井のポスターが見下ろしている。
かつて憧れた漫画家のサイン入りポスター。もう色あせている。
でも、その中のキャラは、いまだに笑っていた。
そして、夜が更けていく。
明日も、ダンジョンはコンビニの裏にある。
夢の続きを、見る勇気があるなら
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます