マッチング成立

 急いでサイトを閉じ、電源を落としスマホを両手で押さえる。この動作に意味はないだろう。でも本人は必死なのである。押してしまった。しかも誰に押したかわからない。アルコールのせいで手元が狂ってしまったんだ。缶に残ってるビールを一気に飲む。落ち着かない。このまましばらく封印しておこう。


 空き缶を洗いハミガキもした。何もなかったかのように寝よう。これが一番平和だ。ベッドに入るとカーテンのすき間から激しい光が見えた。雷だろう。パジャマのボトムを少し引き上げる。人には言えないが子どもの頃から雷が鳴るとおヘソを隠す癖がある。今でも隠さないと落ち着かない。旦那や子どもが知らないわたしの癖である。


 段々雷鳴が激しくなってきた。ドーンっと激しい音と揺れがきた。どこかに落ちたっぽい。うちのマンションではなさそうだ。このマンションは10階建て「高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない」と建築基準法に定められているおかげで避雷針はある。なので安心だ。建築に詳しかったり興味があるわけではない。安全に住めればどこでもいい。このマンションは中古で買った。駅や小中学校やスーパーに近く、敷地内に立体駐車場が完備されている。これだけ好条件が揃っていれば中古で十分だ。ただお隣りさんがブラジル出身の方で夜に人が集まり騒がしい。夜遅くにベランダで話すのはやめてほしい。何を言ってるかわからないのは怖い。


 またドーンと激しい音と揺れがきた。どこに落ちたか確認しようと思いスマホの電源を入れる。ロックを解除したらピコンっと音がなった。聞き慣れない音だ。


 画面上には「マッチングが成立しました」の文字。手が震えてきた。汗もかいている。どうやらわたしはマッチングというものをしたらしい。


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