第10話宴
「もうやめてくれ!!」
叫んだ瞬間、下腹部に鋭い刃が刺さった。
「う…」
俺はそのまま地面に倒れ込む。
「良い戦いだったぞ、人間」
最後に見た景色は――互いに傷だらけ、ボロボロの自分とホロウレインだった。
そして意識は、静かに消えていった。
次に目を開けると、空高く、青空が広がっていた。
目の前には虹の道。
「ここは…?」
直感で、ここが“天国”だと分かった。
諦めて下を向きながら虹の道を歩き出した時――
「あっちに行くな」
声の方向を見ると、懐かしい面影を見せる人影が後ろから指をさしていた。
「ちゃんと見ろ」
瞬きをした瞬間、青空は真っ赤に染まり、虹の道は血の川に変わった。
「三途の川…か?」
「そのまま行けば後悔するぞ」
「じゃあどうすれば?」
「俺の後ろを歩け」
「誰だよ?」
「味方だ」
「え?」
「いいから行け。まだお前は、この先に進むには若すぎる」
俺はその人影の後ろを歩き続けた。
歩きながら振り返ると、人影は笑みを浮かべる。
「ああ、俺はいつでもお前の傍にいる」
「分かった」
やがて視界がぼやけ、次の瞬間、巨大な葉っぱで覆われた天井が目の前に広がった。
「え?」
「おい、人間、起きたぞ!!」
「親方に知らせろ!!」
泥人形のような少女モンスターがせわしなく動き、次にガラスでできたモンスターが水の入ったお皿を持ってきた。
「お気づきになられたのですね、人間さん」
「なんで俺は助かってる?」
「レイン様に傷をつけたのは貴方で二人目です」
「二人目?」
「はい。ずいぶん前になりますが、もう一人、レイン様と戦った人間がいて、その際にこの布や包帯を下さったのです」
見ると、俺の体には包帯が巻かれていた。
「介抱してくれたのか?」
「ええ、レイン様のご命令で」
外に出てみると、モンスターたちが騒いでいる。
「お!!起きたか、人間!」
ホロウレインが俺に気づき、手招きした。
「ほれ、お前の分」
「何これ?」
「エールだ。ゲート内で発酵する特殊な植物や鉱菌から作った、異世界ビールだ」
「子供でも飲める?」
「大丈夫だ」
「美味い」
ホロウレインと話をするうち、俺は少しずつ希望を取り戻した。
「俺のこと、教えるべきか?」
「ああ。正直に話せ。ここのモンスターは人間と争いたくないのだ」
俺は少しだけ希望を抱きながら、自分の話を始めた――
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