第5話 木の魔神の国、エルドリオン
「リエルちゃん、あなたの最初の任務は、精霊林で採れる月光草を取ってくることよ。少し遠い所にあるから、アルジャスさんに魔力について詳しく教えてもらうといいわ」
「なっ!俺様もおつかいについて行かなきゃならねぇのか!?」
アルジャスは露骨に嫌そうな顔をして、カチカチと歯を鳴らした。
「しょぼすぎアル」
それにシャオも同意する。強い魔物と派手な戦いをするのだとばかり思っていた面々は、明らかな落胆の色を浮かべていた。
「そんなにがっかりしないで頂戴。月光草は魔力に敏感で、持ち帰る為には繊細な魔力制御が必要なの。普通の冒険者なら苦労しないのだけれど、魔力のコントロールがまだできていないリエルちゃんにとっては、成長の糧になる任務だと思うのよ」
アリスは諭すように優しく言った。
彼らが月光草を取りにギルドを出て行くのを見て、冒険者たちは興味津々でその背を見送った。
先程までの敵意に満ちた視線は、いつの間にか興奮と期待に変わっていた。
「アルジャスの兄貴が子供を連れて草取りに行ったぞ!!信じられない!!」
『アルジャスの兄貴』はどうやら皆に慕われているようだ。
「なぁサメ男、あとどのくらいでその精霊林って所に着くアルか?オイラ達、もう随分歩いたと思うぞ」
リエルの肩の上で揺られながらシャオは尋ねた。単調で何も変わらない景色に、早くも痺れを切らしてしまったようだ。
「あと1時間ちょいってとこだな。ま、俺様が本気を出せば10分もかからねぇが!ガハハハハ」
「私だって本気出せば5分くらいだし!」
「ガキンチョの魔力なら無理な事はないが……今の状態だと、暴走した力に呑み込まれて魔物になるのが関の山だぜ。お前さんは魔力がありすぎる。魔神になっちまうかもな」
「魔神……悪くないね」
悪役になって冒険者を震え上がらせるのも良いかもしれない。リエルは下衆な笑みを浮かべ、この世界を滅ぼしてやる!と拳を振り上げた。
「おっと、魔神ってのを勘違いしちゃいけねぇぜ。魔神と魔物はほぼ別物と考えて良い。魔神級にもなると相当な知性を持つ個体が多いンだ。やがて奴らは気が付く。見境なく人間を襲うよりも人間と共存した方が効率が良いってな」
アルジャスは顎をさすりながら語る。
「人間ってのは命が惜しいもんだ。だから魔神と仲良くする為なら多少の不自由は厭わないって奴らが多い。
魔神も人から供物を頂戴できて都合が良い。それに魔神は強ぇからな、魔神の周りには魔物が寄って来ねぇんだ。そんな訳で、人間達は魔神の周りに集まって暮らすようになった。
それがどんどんデカくなって国っつー単位になったんだ」
彼は指を折りながら続ける。
「今現在、この世界には5つの国がある。
木の魔神の国『エルドリオン』
火の魔神の国『ヴァルクスラ』
土の魔神の国『グランデロス』
金の魔神の国『アウリスタ』
水の魔神の国『リュミエール』
この国は木の魔神の元に集った人間達の国、エルドリオンだ」
「難しい話だった」
「オイラ、この国の魔神と話してみたいアル!」
「シャオは弱っちくて無理だから、最強の私が話す!」
「オイラが本気を出せばオマエなんてちょちょいのちょいアル!」
各々が好き勝手に感想を言い合う。するとアルジャスが深いため息をついた。
「それがなぁ、そんな呑気なこと言ってる場合じゃねぇんだ。この国は今大ピンチなんだぜ。
なにせその魔神様の力が急激に弱まってきてンだ。このままじゃ魔神は理性を失い、魔物と共に大暴れ。そうなりゃ俺様達の先祖が築き上げてきたこの国が一瞬で御釈迦になっちまう」
「嘘!?早いことこの国から逃げ出さないと!」
アルジャスは、回れ右をして逃げようとするリエルの首根っこを掴み上げた。
「ガキンチョ、ハルクの泉で倒れてる所をベルモンドに助けてもらったんだってな。恩を仇で返す気か?」
「じょ、冗談だって……」
「ハァ、ならいい」
アルジャスの魔の手から解放されたリエルは、彼の背に向けてべーっと舌を突き出した。
「それで、原因は何なの?」
国ごと滅ぼされては困る。私の伝説はまだ序章なのだから。私にできることならやってやろうじゃないの!
そう心の中で拳を握りしめ、荒い鼻息と共に尋ねる。
「鋭意調査中だよ、クソがっ!」
「まだ見つかってないんだね」
リエルは哀れみを込めて言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます