第13話

「えっと、まず落ち着いてください霜月さん。これには色々と事情があって」


 本当に色々とあってこうなってしまった上に、頭の整理が落ち着いていないので冷静に話をできない。


「ごめんなさい、乃蒼ちゃん。でも、私も幸君とお話ししたくて」

「....お話しするだけなら、抱きしめなくてもいいよね?早く佐々木君から離れて」


 とじっと無機質な目を雪花さんへと向ける。


「あとちょっとだけ。もうちょっとだけさせて?今、とってもいいところだったの」

「ダメ、絶対だめだから」


 とそう言って僕たちがいるベッドまで近づいて僕と雪花さんを無理やり離そうとお母さんを引っ張るが、お母さんの力が強く、反動でそのまま流れるようにお母さんに押し倒されるような形になってしまう。


「あっ....幸君」


 雪花さんは先ほどと同じような蕩けた視線を僕へと送ってくる。


 本当にマズイ、色々と。


 トイレも限界に近いし、雪花さんは興奮してるし、霜月さんは無機質な目から殺気の籠った視線へと変化し、今にも雪花さんを殺してしまうのではないかっていうくらいになってる。


 僕の頭はショート寸前である。


「お母さん、今すぐ離れないともう二度と佐々木君の事は家に呼ばないからね?今度は、私と二人っきりで勉強したり、遊んだりすることにするからね。二度と会わせないから」


 霜月さんがそういうと、ぴたりと動きが止まる。


「ゆ、幸君は私と会いたいもんね?」


 ここは好機だ。


 ショート寸前の頭をフル回転させて僕は言葉を捻りだす。


「雪花さんがどいてくれないなら、僕は雪花さんと会わないし嫌いになっちゃうかもしれません」


 僕がそういった途端、先ほどの事が嘘だったかのように僕から離れてベッドの上に正座する。


「ご、ごめんなさい。おねがいだから、きらいにならないでねゆきくん。おねがいだから」


 若干の涙目で幼児のようにそう言葉を発する雪花さん。


 好意を抱いてくれている人に対して嫌いになるは流石に言いすぎだっただろうか?


「全然言いすぎじゃないし、佐々木君はお母さんの事を嫌いになってくれても全然いいからね?」


 と霜月さんは殺気を抑え、今はジトっとした目をお母さんに向けてそう言った。


「....それと、佐々木君。お母さんの事、雪花さんって呼んでるんだね」

「えっと、それは」


 話がまたややこしそうになる予感がする。


 僕の膀胱ももう破裂寸前だ。


 ここは....


「ごめんなさい、霜月さん。ちょっとトイレ」


 僕は光の速さで雪花さんの部屋を出て、急いでトイレに向かう。


 そこでしたトイレは人生で一番の安らぎを与えてくれたのは言うまでもなかった。

 






 

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