デスゲームという遊戯

テルン

第1話 21回目

「んー...ん?」


 彼女、茅結ちゆの目に知らない天井が映し出される。


「知らない天井。ここは、どこ?私は――茅結ちゆ。」


 ひとりでなにをやっているのだろう。

 むくり、そんな効果音が似合いそうなゆったりとした起き上がり方をする。


「なに、これ」


 起き上がる時、彼女自身の細く、色白としたふとももがよく見えた。


「スカート、短いな」


 圧倒的なまでのミニスカートだった。だがそれを茅結自身が好んで履いているわけでも気分転換で履いているわけでもなかった。

 そういうなのだ。

 今回ならばミニスカートに制服、つまりは陽キャJK的なものである。茅結自身、高校に行くべき年齢であるが、着慣れてはいなかった。

 辺りを見渡すとそこは広い部屋だった。

 今、茅結自身が寝ているベッドとちょっとした机と椅子、その3つの家具しか置いていなかった。


「罠はなし、と。」


 まぁ当たり前である。しょっぱな寝起きで罠なんかにかかったらも面白くないからだ。

 それだとしても、警戒しない理由にはならなかった。

 部屋を出ると長い廊下に出た。

 茅結はすたすたと早歩き程度のスピードで歩いていく。

 道中には部屋の扉が何枚かあったが、入ろうとはしなかった。

 その中なんて大方想像ができていた。

 そして、歩いて歩いて、歩いて、ある一つの大きな扉の前にでた。

 茅結はその扉をゆっくりと引いた。

 ...開かなかった。

 茅結は首をかしげながら次は押してみることにした。

 すると扉はキィと甲高い音を出しながらゆっくりと開く。


「...押すのか。」


 そんな言葉をこぼし部屋を見渡す。

 部屋の中には大きな円形のテーブル一つに7個ほどの椅子が並べられてあった。

 ...まだ誰も来ていないようだった。

 茅結は入口から反対の椅子に座り、他の人が付くのを待った。


  ◇◇◇


「え?え?何、何ここ!」


 無駄に目立つ金色の髪を持った少女、由良ゆらは目を覚ますなりパニックを起こした。


「ねぇ!誰か、誰かいないの!?ここ、どこぉ!」


 一人部屋で大声を出すが、その声は無駄に広い部屋の壁に反射し、消えてゆく。

 その後、由良は落ち着きを取り戻し、とりあえず部屋を出てみることにした。


  ◇◇◇


「――え?え?何、何ここ!」


 そんな声で目が覚める。


「誰だよ叫んでるやつはよぉ」


 顔にいら立ちの表情を見せる少女、小熊こくまが一人、大きなキングベッドに横たわっていた。

 彼女はまた目を閉じ寝ようとするのだが隣の部屋の声があまりにもうるさく到底小熊には眠ることはできなかった。


「一回絞めてやろうか」


 小熊は自身の肉体に似合わない服装のことなど気にせず部屋の扉を押した。


  ◇◇◇


 手足は細く、ピンク色の長い髪を持ち、人形のように整った顔立ちをした、まさに美少女がその部屋で寝ていた。


「んあ」


 変な声とともにその美少女、百花ももかが目を覚ます。


「...」


 百花は部屋を見渡し、自身の服装も確認する。

 ベッドの下、机の中、シーツのすき間すべてをくまなく観察していた。

 その姿は後ろから見ればあまりにも滑稽でスカートの中まで丸見えになっていたが百花は一切気にしていなかった。


  ◇◇◇


 一人、廊下を歩いている少女がいた。

 彼女は誰よりも早く起き、広間に誰もいないことを確認すると長い長い廊下をあてもなく歩いていた。


「...物音がした、...気がする...多分」


 彼女は自身が感じ取ったものを何も信用していなかった。

 目に映るもの、触ったもの、聞き取ったもの、他人から伝えられたもの。

 この世のすべてと言っても差し支えないほどのものを疑問視し信用していなかった。


「と、とりあえず行ってみよう」


  ◇◇◇


 あまりにも臆病な彼女は大きな扉の前にいた。

 開けていいのかダメなのか。逆に開けないとそのうち死ぬようなことが起きてしまうのか。

 そのような可能性を考えれば考えるほど体が動かなくなる。


「ひなののダメな癖!」


 一人称は自身の名前だった。そのため毎回名乗りを上げなくとも周りに名前は知られていた。


「なんでひなのは!」


 自分を責めた、その瞬間扉が勢いよく開けられる音がした。

 ひなのは目の前の大きな扉を見たがそれが開けられたわけではなかった。

 後ろを振り向く。そこには熊のようなでかい体と筋肉を備えたたくましい女性がいた。


「お前かぁ?ぎゃんぎゃんわめいてたのは」


 ひなのの視線の先にはいらだった顔をした小熊の姿があった。


「さ、騒いでない!ひなの、そんな声聞いてない!というかあなた誰!」

「私は小熊だよ。さぁ、眠りを邪魔した制裁を――」


 するとまた一つ扉が開けられる音がした。

 そちらに視線を飛ばすと、壁に手を当てながらゆっくり歩いてくる金髪の少女の姿があった。


「あーー!!人だぁ!よかったー!ここどこなんですかぁ!?」


 名も知らない少女はひなの達を見るなりそう叫んだ。


「お前か、私の眠りを邪魔したのは」


 小熊は拳をゴキゴキ鳴らしながら金髪の少女に近づいてゆく。


「え?え?な、なんなんですか?ちょっと!?ち、近づかないで!」


 金髪少女は小熊がいる逆の方向へ後退する。


「ちょっ、ひなの、喧嘩はよくないと思う!」


 ひなのは止めに入ろうとするがトレーニングも特にしていない人が強靭な肉体を持った女性に敵うはずもなかった。


「や、やめろーー!!」


 金髪少女がそう叫んだ瞬間だった。また一つ扉が開く音がした。


  ◇◇◇


 茅結は廊下で起きていることが気になり、とりあえず部屋から出てみることにした。

 ギィィと音を立てながら大きな扉は開かれる。

 そしてその視界に飛び込んできたのは、、


「なにいちゃついてるの?」


 熊のように大きな図体を兼ね備えた女性が金髪の少女に絡んでいる姿だった。


「あの、なにやってるの?これ」


 茅結は傍観している少女に話しかける。


「ひ、ひなのは何もわからない...。いきなりこの小熊さんって人がこの金髪の人に殴りかかって、止めようとしたんだけど...」


 茅結はめんどくさい奴がいるなぁなんて思いながらとりあえず対処することにした。


「とりあえず、無駄な体力消費はやめて欲しいね」


 金髪少女に乗っかってる小熊とかいう女性の首元をつかみ、勢いよく引っ張る。


「うぉっ!」


 その瞬間、熊のような大きな体が後ろにのけ反る。

 その場にいる全員が目を疑った。

 腕は細いし、筋肉質でもなさそうな病弱そうな女の子が自身の一回り、二回りもでかい女性を軽々と払いのけたのだ。


「どうかした?」


 茅結は不思議そうに見つめてくる少女3人に問いかける。

 だが返答はなかった。


「...とりあえずこっちに来て」


 流れで茅結が先導することになってしまったが、別に経験がないわけではないため言うべきことなどに特に迷うこともなかった。

 すると遠くから声が聞こえる。


「す、すいませんー」


 どんくさそうな、気弱そうな少女だった。


「何か音がした、気がするんですけど...何かあったんですか?」

「...いや、何も、それより君もおいで。話をしよう。」


 そうして茅結含め5名が大きな部屋に集まった。


――――――――


 少しした後、扉が開かれる。


「あれ?もうこんなに人がいる」


 ピンク色の髪を持った美少女だった。

 茅結と美少女の目が合う。


「「...あっ」」


 それ以上は何も発さず空いている席へと座った。


「...あ、あと一人ですか?」


 気弱そうな少女が聞く。


「さぁ、どうだろうねもしかしたらもう―」


 小熊が答える。


「想像でものを言わないほうがいいと思うな」


 茅結がそう言う。


「ひなのもそう思う!」


 元気いっぱいにひなのが賛同する。


「見に行きませんか?部屋に。」


 金髪の少女が提案を出す。


「じゃあ行こうか」


 そうして茅結たちはまだ来ていない一人を迎えに部屋へ向かった。


―――――――


「うぅぅ」


 部屋から何やらうめき声が聞こえる。


「みんな聞こえたよね?」


 廊下にいる6人の少女たちは確認を取る。

 そうして茅結が先導を切り扉を開けた。


「きゃあっ!!」


 乙女の声だった。

 ベッドの上で座り込み、豊満な胸とほぼ丸出し状態のふとももを隠していた。

 茅結は痴女なのではと思ってしまった。


「えーと、大丈夫?」


 茅結が問う。

 それに対し、豊満な胸を備えた痴女は顔を赤らめながら言う。


「うー、知らなかったんです。まさか、まさかこんな、は、は、ハレンチな服を着せられるだなんて!」


 初心者はこういう反応なのか。と廃れに廃れた心の持ち主である茅結は感心した。


「とりあえず、別の部屋に行こう?そっちの方が広いし」


 この部屋も7人入るのには十分すぎるくらい広いのだが、それでもあっちの部屋の方が雰囲気というかそういうのがいい気がしたためそう促した。


「...わ、分かりました」


 痴女は立ち上がる。

 ...茅結の首が痛くなるくらい見上げないと顔を見れなかった。


「身長高いね」


 豊満なバストに長い背、太いとは言い切れないふともも。刺さる人にはばっちり刺さるような、まるでモデルだった。


 ――――――


「それじゃあ自己紹介と行こうか」


 ようやく7人全員集まったところで茅結が進行を進める。


「誰からやる?」


「「「「「「...」」」」」」


 自主性がないなぁなんてことを思う。


「しょうがない、私から。」


 そうして茅結は立ち上がる。


「プレイヤーネーム、茅結ちゆ。こののクリア回数は20回。よろしく。」


 そうして茅結の左に座っている金髪の少女を見る。


「え?私、か。えーと、由良ゆらです。ゲームはこれで3回目。とりあえず生き残れればなんでもいいです。...よろしく」


 そうしてまた左へと順番が進む。

 熊のような大きな体が動く。


小熊こくまだ。今回で15回目。よろしく――」

「ひなのはひなの!クリア回数は...えーと、確か5回!」


 小熊が言いきったのと同時に立ち上がり自己紹介を始める。


「とりあえず、茅結ちゃんに付いてく!」


 そうして不信感が半端ない、気弱そうな少女が立つ。


「ど、どうも。碧音あおねです。クリア回数、なんだったかな...16?17?多分そのくらい。」


 そしてさきほど迎えに行った痴女が立つ。


「えーと、やっぱりこれデスゲームなんですね...。名前はもえ。街中で声をかけられたと思ったらいつの間にかこんなところに居ました...。初めてです。こんなの...」


 なんだかかわいそうな気もするがそんなことは気にせず最後の七人目になった。

 そうして手足が細く、まるで人形のような整った顔をした美少女が立ち上がる。


「私は百花ももか。クリア回数は―」


 その瞬間、百花の顔がにやける。


「―21回です。よろしく」


 そうしてみんなそれぞれの自己紹介が終わった。

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