第5話クラスLINE

クラスの雰囲気が少しずつ和らいできた頃、誰かが言い出した。


「クラスのLINEグループ、作んない?」


そうして自然に“1年B組”のグループが立ち上がり、

QRコードが黒板に貼られた。


私は迷いながらも、スマホをかざす。

「グループに参加しました」の通知が鳴った瞬間、

なぜか少しだけ緊張した。


アイコンが並び、あいさつが飛び交う。

「よろしくー!」「高坂です、仲良くしてね」

私も一応、簡単な自己紹介を送った。


するとその日の夜、思いもよらない通知が届いた。


相澤 湊さんがあなたにメッセージを

送信しました。


鼓動が跳ねる音が、スマホ越しに聞こえそうなほどだった。


湊:ごめん、今日の数学のノートちょっと見せてもらえる?


たった一行なのに、何度も読み返してしまう。

なんて返そう。

「いいよ」だけじゃ素っ気ないかな?

でも変に丁寧でも変かも……


詩:全然いいよ!明日持ってくね!


湊:ありがと。助かる!


それだけの会話で、スマホを胸にぎゅっと抱きしめてしまった自分が、

ちょっとだけ情けなくて、でも確かに幸せだった。


ふと思い立って、ノートを開く。

少しでも見やすいように、余白に小さな解説を書き加える。


そうする自分を「やめなよ」って、心の中の誰かが言う。

期待するなって。

ただのクラスメイトだって。


でも、そう言い聞かせても止まらない。

明日、ノートを渡す瞬間のことを想像して、

まるでプレゼントを選ぶみたいにページを整える自分がいる。


名前で呼び合っていた幼い日々は、もう昔のこと。

けど、スマホ越しの「湊」という文字は、

今もちゃんとそこにある。


画面を閉じたあとも、

心の中ではずっと通知が鳴り続けていた。

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