自分のことをさくら友蔵だと思っている一般狂人男の日常
佐々岡式大回転
第1話「友蔵、夜のパトロール」
夜起きて目覚めたとあと俺はクソみたいな気分になった。
マルコがいねえ。
この異変に気づいたときの俺の心臓の鼓動つったらもうやべえ。バイブレーションくらいの速さの鼓動をドクドクドクドクさせながら俺はベッドから降りて、寝起きのルーチンである青汁プロテインを作ってごきゅんごきゅん飲んで俺はマルコを探しに行った。よく考えたらマルコのママもパパもババアもなにもかもいねえが、そんなことよりマルコだった。マルコが一人で泣いている夜を過ごしてはならねえ。
俺はさくら友蔵。まる子の祖父にあたる人物である。
マルコを救済できるのは俺しかいねえのだ。
×××
最近、この町は物騒である。
よくわかんねえ外国人のクソったれ共が我が物顔でこの町をファッキンウォークしてやがる。マルコは才色兼備文武両道絶対可憐妖艶絶世之美女である。色ボケたクソ外国人共にヴァギナをファックされかねない。そんなことはこの俺、友蔵様がぜってえに許さないのである。にゃああああああん(威嚇)。
もしそんなことが起ころうものなら、いや、そんなことが起こる前に対策するためにも、目についたキチゲエ外国人どもはこの俺様が直々にぶっキルユー。その覚悟を見せつけるためにも、この俺、友蔵は片手に持ったスタンガンをバチバチと光らせてみせた。夜の町歩く人々はみんなこの俺様とスタンガン様にビビりちらかしてやがる。この俺様を邪魔する者は誰もいない。非常に気分がキモチェ~ので、ここで一句。
クソファック
アホカスゴミカス
死ねやボケ
友蔵、怒りのデスロード。
さて、すでに俺の拳は血に塗れている。
歌舞伎町を散策している最中のことだ。クソヤバイ金髪のクソヤバイ入れ墨の兄ちゃんが俺に目を見てきやがったので「なにみてんだゴラ」からの「見てねえよなんだおっさんコラ」「うっせえオラさらっちまうぞガキコラ」「あ? コラ」「コラ」「コラ」「コラ」からの右ストレート顎粉砕である。なにわ殺しの友蔵パンチである。
どうりでさっきからこの町に警官がうろついてやがるな~と思った。俺様のせいである。俺様の友蔵パンチ様がこの町に小さな歪を生んでしまった。はたた、失敬失敬。今日もこの町の平和をがんばって守ってるポリ公殿に敬礼。
しかしそんなことよりマルコだ。マルコを探さねばならない。俺様はマルコがひとり寂しく夜の歌舞伎町で泣いているなんて状況を見過ごすことはできない。
ふと、そのときだった。
目元口元耳鼻と、まるでクリトリスみてえなちっちぇえ鉄ピアスを顔中に巡らせたハーフツインのたぬきメイク女が大久保公園の横でつったっていた。
マルコである。
いやこれ絶対マルコである。
確信した俺、友蔵様は早速マルコに声をかけた。
「マルコや」
「あ?」とマルコ。
どうやら第二次性徴期を迎えたらしくマルコの心はハリネズミである。俺もハリネズミなのでこのままだとジレンマを起こしてしまう。
しかし俺は友蔵。こんなときの大人の対応は心得ている。
「かえろう。家へかえろう。マルコや」
「え、は? なに? こわ、は?」
「なぜ鳥に翼があるともう? なぜ人に足があると思う? それは帰るべき家があるからだ。たとえどんなに自由になろうとも、大河を渡り、国境を超えたとしても、帰るべき場所はたったひとつ、そう、たったひとつしかないんだよマルコや」
「ちょっとまって、え、なに? ほんとなに? え、え、」
「マルコや、ホ別10でええか」
「いいけど」
いいらしいので俺はマルコをつれて家へ向かう。
「おじさん、それほんもの?」
言って、マルコは俺のスタンガン様に目を向ける。
俺は言う。
「ほんものだよ。スタンガン様だよ」
「え、すご。ほんものはじめてみた。え、すご。うわ」
うわってなんや、うわって。しかし俺様絶好調。なぜならマルコが楽しそうだから。友蔵にとってマルコが人生のすべてなのでマルコが楽しそうだったら俺だって超happy。
「ほら、こんなこともできるんだよ」
俺はスタンガンをバチバチっと光らせた。
「え、すご、やば、すご」
マルコがにへらって笑う。一瞬、口の中でうごめくタンの先端のちっちぇえピアスが鈍く光った。マルコは歯並びが悪い。
「えっへっへ」
俺様はスタンガンをバチバチさせる。
「わ、やば」
「もっと光らせられるよ」
「え、マジじゃん。えぐ。えぐすぎ。おじさんえぐすぎ」
「ほら、もっともっと光らせるよ」
「わ~! やば! なにこれヤバすぎ」
「もっともっと光らせられるよ」
「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」
………。
やっちまった。
マルコ、感電死った。
いや、冷静に考えたら俺が悪いわけじゃないんじゃない。俺はただスタンガンをバチバチさせただけだ。そしたらそこにマルコが指つっこんじまって、セックスよりやべえ衝撃を脳に受けながら死にやがった。犬死じゃないかマルコ。おめえどうすんだこれ。
友蔵、ここで一句。
螺旋状に轟く雷鳴に草木萌動
ベンゼン環とホルマリン
ヴィヴァルディの旋律
友蔵、中二病でも恋がしたい。心を落ち着かせた俺様はなんだか腹が減った。いい感じの武蔵家があるし今夜はここで炭水化物塩分塩分過剰塩分パーリナイと思った矢先、ポリ公が俺を羽交い絞めしてきた。
「なんなんですか、なんなんですか」
「確保ォ!」叫ぶポリ公。
「なんなんですか、あの、なんなんですか」
ポリ公は肩のトランシーバーでお仲間におたすけ令をだす。うぃ~ぅお~うぃ~ぅお~。パトカーがサイレンならしながらこちらにやってくる。
ちくしょう! 俺がなにしたってんだよ!
クソ気分だ。ハライセに俺はスタンガンをぽちっと機動させる。ハラショー。
「「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」」
しくじった。俺とポリ公に電撃が走る。
でも案外これが非常にきもちぇ~のでもう一発かます。
ぽちり。
「「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」」
ぽちり。
「「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」」
ぽちり。
「「ばばばばばばばばばばばばばばばばばば」」
俺は連行された。
《つづく》
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