Ice lolly5⋈① ネクタイほどいて。
…これが限界。
心に絡まったリボンが甘く、
弾けた。
*
「行くぞ」
7月9日の朝。
――――俺も
――――
――――今から思い出させてやるよ。
昨日の屋上での事を思い出し、ボッと顔が熱くなる。
あれから結局、眠れる訳もなくて、
深夜もベランダで
だけど袋のままのサワー味のアイスキャンディー受け取ろうとしたら指が触れて落としちゃって……。
慌てて拾ったけどドキドキして食べることも、
こんなんで今日、大丈夫かな……。
「おい、ありす?」
「…うん」
私はローファーのかかとを踏んだ状態で一歩前に進む。
ぐらっ……。
「きゃっ…」
「ありす!」
「危ねぇな」
「靴、ちゃんと履けよ」
「うん、ごめんなさ…」
「お前、シャンプー変えた?」
私はドキッとする。
「あ…うん…」
「今まではフルーティーな香りだったけど」
「夏だし爽やかな香りの方がいいかなって…」
え……
「そーかよ」
「遅刻する。行くぞ」
「あ、うん」
私は黒のふわロングのウィッグに触れる。
シャンプー変えたのマズかったかも……。
*
「…
昼休み。屋上で
直接髪に触れられた訳じゃないのに、心臓がドキドキで壊れそう。
「え、な、なんで…」
「昨日と香りが違う」
「あ、うん…」
私は複雑な顔をする。
「…なんかあった?」
「
「シャンプー変えたの失敗だった」
「バレるの時間の問題かも……」
「…
「え、あ…写メあったかな」
「
「あんまり撮りたがらなくて…」
「ちょっと待ってね」
私はスカートのポケットからスマホを取り出して写真のアプリをタップする。
「あ、あった」
「…………」
「
「…イケメンだな」
「うん」
「
「…
「あ、うん」
「…そう」
「…写メ、俺以外に見せんなよ」
「…絶対秘密だから」
「秘密…」
「そう、秘密」
「わ、分かった…」
私は短く答えるとスマホをスカートのポケットに入れた。
「…じゃあ、
「…俺のネクタイほどいて」
私の顔が一気に熱くなる。
「え……」
「…約束のシルシ」
「…なんてな」
ふわっ……。
私は
「…まだ出来ません」
声が、震える。
「…これが限界」
「…あー、少しずつ進もうって思ってたのに」
「…無理だわ」
「んっ…」
昨日と同じとろけるような甘いキスなのにドキドキしすぎて倒れそう。
ドサッ……。
「…大丈夫か?」
「あ…うん」
「…このままのが安全だな」
…?
安全?
「…
…口?
こうかな?
え……
強く絡んで離さない。
「んぁっ……」
私の心に絡まったリボンが甘く、弾けた。
え……。
何、今の声……。
私?
あ……どうしよう。
「…今日はこのくらいにするか」
「あ、うん」
私はゆっくりと起き上がる。
「…
私はバッと顔を背けた。
あ……。
「自分で取るので…大丈夫」
「…そう」
怖くて見れないよ。
私は
「教室、戻るね」
「…
私は屋上から出て行く。
「…あー」
*
「…はぁ」
5限の音楽の授業を終えた私はため息をつきながら3階の階段を降りていた。
音楽の授業、何やってたのか全く覚えてないや。
なんで私、あんな声…。
思い出す度に、
恥ずかしくて、たまらない。
2階の廊下が見えた。
「
女の子の声が聞こえ、私はドキッとする。
え…
「…何?」
「好き。私と付き合って」
私は両目を見開く。
え、え、告白…!?
ドクン、ドクン、と私の胸が嫌な音を立てる。
「…悪いけど興味ない」
ツインテールの女の子が
胸がズキンッと痛んで、
心に絡まったリボンが、複雑に絡まっていく。
やだ。
やだやだやだ。
私はハッとして右手で自分の口を押さえる。
……あ。
私、なんでこんなこと思って…。
屋上で、顔、背けたくせに。
私、ヤキモチ妬いてるの?
「え~誰とも付き合ってないんでしょ?」
「だったらいいじゃん?」
「軽く付き合ってみよーよ」
「興味わくかもしんないし」
「…それはねぇわ」
「…俺が興味あるの、星だけだから」
「え~、天体に興味あるの!?」
「何それ~、かっこいい!!」
ツインテールの女の子は
顔が熱い。
星って、私のこと?
ぐらっ…。
「あっ…」
私は階段から足を踏み外した――――。
階段横に隠れていた
「大丈夫?」
一瞬見つめ合うと、
「冷たいな」
「ほんと徹底してるね」
「…………」
私は黙る。
「ごめんね、助けたのが俺で」
「ううん、助けてくれてありがとう」
他の女の子に
今すぐ私が触れたい。
いっぱい触れられたい。
「…あの
「ん?」
「後で
「放課後、屋上に来て下さいって」
「分かった。伝えておくよ」
屋上に来て。
そしてもう一度、
私に深くて甘いキスをして。
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