Ice lolly4⋈③
*
屋上の日陰になった場所で起きた出来事は、
何度も夢かもしれないって思った。
だけど……。
――――
――――心に絡まったリボンほどいて。
私は伏せ寝をしたまま両目を見開く。
あれは夢じゃない。
完全に告白してた。
その後のことがよく思い出せないけど……。
まさか勢い? で人生初の告白をしちゃうなんて。
それくらい
私は右手に乗っけていた顎を離し、その手に顔を埋める。
ああああああああああああ。
どうしよう……。
今日月曜日で明るくなったら高校行かなきゃいけない。
高校休みたいよ。
だけど
これ以上、心配かけられないよ……。
「おい、ありす」
私は顔を上げる。
グレーの長袖のTシャツに長い黒色のアンクルパンツの
「…!?」
なんで、
「…え、バイトは?」
「誰かさんのせいで今日は早く上がった」
「そうなんだ…」
玄関の扉開く音、全く聞こえなかった……。
…って、あれ?
私は首を傾げる。
「誰かさんのせい?」
「お前以外に誰がいんだよ」
サァーッと私の顔が青ざめていく。
私の…せい?
だとしたら物凄くマズい。
私は立ち上がる。
「…じゃあ
「しなくていい。ここにいろ」
私の体が、まるで氷のように固まる。
え……。
「作ってくる」
作るって何を?
そして10分後。
さっと炒めて煮たカレーには豚こま切れ肉に玉ねぎとえのきだけが入っていて、スプーンが突っ込まれている。
「え、しゃびしゃび…」
「短時間で作ったから失敗したわ」
私はふふっと笑う。
「
「うるせぇ、忘れろ」
「つーか、笑えんじゃねぇか」
あ……。
もしかしてこのカレー、私を元気づける為にわざと失敗して……。
「何抱えてるのか知んねぇけど」
「空腹じゃ眠れねぇだろ」
「飯はちゃんと食え」
「それで食ってる時くらいは今みたいに笑ってろ」
何それ……。
そんなこと言われたら涙止まらなくなっちゃうよ。
「ったく、泣いてんじゃねぇよ」
「……理由聞かないの?」
「お前が話したくなった時に聞くわ」
私の胸がきゅっと痛む。
そんな時は、きっとこない。
でも高校に行く元気出た。
「…
「なんだよ?」
「一緒に夜更かししてくれてありがとう」
お礼を言うと、
*
カレーを食べ終えた私は部屋に戻ると、鞄のチャックを開けてスマホを取り出す。
スマホの時計を見たら2時。
よし。
「…
私は
『
送れた……え!?
私はドキッとする。
マナーモードで良かった…。
じゃなくて、どどどどうしよう。
落ち着いて、私。
とにかく出よう。
私はドキドキしながら電話に出て、右耳にスマホを当てる。
「…何?」
あ……、
もうだめかもしれない。
私は両目の涙が零れ落ちないようにぐっと堪える。
それでも、私、諦めたくない。
「…今日の放課後、屋上で待ってます」
*
そして放課後。
ガチャッ。
私は屋上の扉を開ける。
あ…
私はセーラー服のピンクのリボンをぎゅっと両手で押え、
両目をぎゅっと瞑る。
胸がドキドキで壊れそう。
電話では結局返事もらえなかったけど、きっと来てくれるよね…?
ガチャッ。
屋上の扉が開く。
「…!」
「…3日間、ベランダで待ってた」
「あ……」
私の両目が潤む。
待っててくれてたんだ…。
「…俺に言ったこと覚えてるか?」
「うん…」
「…言ったら、もう戻れなくなるけど」
「…
今までの関係には戻れないってことだよね…。
ここで拒否れば
だけどそんなの無理。
「いいです」
夕日に負けないくらい真っ白な下弦の月がキラキラと輝く。
「――――俺も」
「
え……。
私は驚きの余り、その場で崩れ落ちた。
言葉がもう何も出てこなくて、
両目から大粒の光が零れ落ちて止まらない。
「…出会って8日」
「…こんなに好きになるなんて思わなかった」
「…これからも
お願い、口動いて。
「うん…」
「
言えた……。
「…あー、うん」
「…やべぇ、嬉しすぎて言葉になんねぇ」
「……
「…
「はい」
「…俺がここでしたこと覚えてる?」
「…?」
「それがよく思い出せなくて…甘さを感じたような…」
「…そう。じゃあ」
「…今から思い出させてやるよ」
え……。
しゅるっ。
顔が熱い。
首から汗が垂れて…。
ふわっ……。
ほどかれたリボンがスカートの上に落ちる。
あ……リボンが……。
髪掻き分けられ……。
爽やかな甘い香りと
唇がゆっくり近づいてきて……。
両瞼を閉じ、眉が下がる。
ふわっと唇が重なった。
「んっ……」
とろけるような刺激的なキスで、
心に絡まったリボンも甘くほどける。
“…ほどいてほどかれる関係”
少しずつほどいて、
ほどかれて、
完全にほどけた先に、
“…プラス秘密多め”
私の脳裏を
一緒にいてくれたら嬉しいな。
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