第6話 初陣
夜の街に、報道のライトが集まっていた。
数台の中継車が並び、レポーターたちが慌ただしくマイクを手に走り回っている。その背景には、黒い液体を撒き散らして絶命したアンノウンの巨体があった。
「はい! 現場では今、新たなヒーローによってアンノウンが討伐された模様です!」
レポーターが興奮気味にマイクを握り、カメラに向かって声を張る。
「こちらをご覧ください――あの巨大な怪物を、一撃で!」
モニターには翔真がスーツ姿で腕を振り抜く映像が繰り返し流れていた。
ビルを駆け上がり、鋭い爪のような手で怪物を断ち切るその姿は、まさに怪物以上の異様さを放っていた。
その光景を、街頭ビジョンで見つめる人々。
「すげー……」「あれが噂のヒーローか?」
「マジで人間? あんな化け物相手に……」
ざわつきと、少しの恐怖。
だがそれでも、大多数は安堵の声を漏らしていた。
一方、翔真は黒瀬に連れられ再び装甲車の中にいた。
スーツは自動的に解除され、金属の装甲が次々と身体から剥がれていく。
途端に寒気と吐き気が込み上げ、翔真は口元を抑えて吐きそうになる。
「落ち着け。お前は良くやった」
黒瀬が書類をめくりながら、淡々と告げた。
「……俺、あれを……殺したんだよな……」
声がかすれて震える。
手を見下ろせば、まだどこかに怪物の血の匂いが残っている気がした。
「殺した? ――いや、守ったんだ」
黒瀬は顔を上げ、わずかに口元を緩めた。
「お前が倒さなければ、あの街区の人間は全員死んでいた。誰もが今日眠れるのは、お前のおかげだ」
言葉だけは優しい。
でもその瞳は冷たく、ただ任務の成果を確認する色だった。
「ヒーローってのは、そういうものだ。……覚えておけ」
車の窓越しに外を見ると、遠くに自分が戦った場所が見えた。
清掃車や軍の車両が集まり、道路は規制線で封鎖されている。
(俺が……守った、のか……)
脈打つ心臓が痛かった。
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