第2話傷

電車に揺られふるさとを目指す。

あまねの目が、窓に映る。

虚ろな目に高校の記憶が、蘇る。


放課後の教室。

埃っぽい空気にあまねの声が、震える。

「ゆづきが、好き。」


ゆづきの目が、揺れる。

一瞬、顔と胸が熱くなる。でも、好奇な視線が刺さる。

誰かの囁き。

「レズ? 気持ち悪い」

ザワめく教室内にゆづきの声が響く。

「あまね、冗談きついって! やめなよ、そういうの!」

みんなが笑う。

あまねは俯く。

陰口が始まり、下駄箱には「レズ死ね」と書かれた手紙。


心が、壊れる。

___


夜、ゆづきの部屋。

鏡に映る自分。「私、庇っただけ…だよね?」

母の声が、頭に響く。

「素敵な男と人と結婚して、幸せになるんだよ。」


友だちからの疑問

「ゆづ〜、あまねと付き合ってるの?いつも一緒だよね」

ゆづきは拳を握る。

あまねの笑顔が、胸を刺す。

「好き、

なんて言えない。」

すすり泣くか細い声が部屋の中に響く。

___


あまねは学校の廊下を歩く。

冷たい視線が、向けられる。

「あまね、レズなんだって〜」「まじ?キモ」

母の声。

「あまね、女の人が好きなの?ママ友から聞いたけどやめてよね。お母さん恥ずかしくて外に出られないわ。」

恥ずかしいって何?私の事なのになんで母が恥ずかしく思うのだろうか。


「私は、異物。」

恥ずかしい思いをさせてしまってごめんなさい。


心が、閉ざされる。

ゆづきを想うたび、胸が痛む。

でも、愛は消えない。


電車の窓に、涙が滲む。

あまねは目を閉じる。

地元の駅が、近づく。

波の音が聞こえてきた気がする。

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