『俺は何だ?』
目が覚めた瞬間、何かがおかしいと気づいた。体が重く、動かすたびにぎこちない軋みが響く。視界はぼんやりとしていて、色はくすみ、まるで世界が薄い膜越しに見えるようだ。指を動かそうとしたが、指はない。代わりに、硬く尖った何か——まるで鎌のようなものが、ゆっくりと地面を引っ掻いた。
周囲の空気はひんやりと湿り、鼻を刺す土と腐葉の匂いが強い。立ち上がろうとしたが、足は異様に細く、頼りない。なのに、体を支える力は妙に強い。首を振ると、頭部に奇妙な突起が揺れる感触。触角? いや、そんなはずはない。だが、触れるたびに周囲の振動や匂いが鋭く伝わってくる。
遠くで、巨大な影が動いた。人間だ。だがその動きは緩慢で、まるで俺を気にしていないかのようだ。声を上げようとしたが、喉から出るのはかすかな擦れる音だけ。言葉にならない。代わりに、体が勝手に反応し、素早く地面を這う。驚くほど速い。だが、なぜか這うたびに体が地面に擦れ、硬い外殻がカチカチと音を立てる。
暗がりに身を潜めた。そこは狭く、湿った隙間だった。体を丸めると、まるでその空間にぴったり嵌まるような感覚。だが、安心はできない。遠くから、低い唸り声のようなものが聞こえる。獣の気配だ。そいつの鼻息が近づくと、俺の体は本能的に硬直した。
空腹が襲ってきた。どこからか、腐った果実のような甘ったるい匂いが漂う。体が勝手にそちらへ向かうが、足元に妙な感触。糸のようなものが体に絡みつき、動くたびに締め付ける。慌ててもがくが、絡まるばかりだ。罠だと気づいたときには、すでに身動きが取れなくなっていた。
背後から、巨大な影が迫る。鋭い目と牙。俺をじっと見つめるそいつの気配に、全身が震えた。俺はもう、かつての俺じゃない。何か別の、ちっぽけで、ひ弱で、でもどこかしぶとい生き物だ。だが、一体何だ?
分かった人は、コメント欄で教えてくれ。
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