五話 灼熱の炎と絶望

 一瞬だった。目の前が熱くなり、灼熱の炎が襲いかかる。左に跳躍して躱わすと、先程居た場所は既に炎に呑まれていた。

 

 「なるほど、良い因子持っているじゃん」

 「武器なんかを使ってるお前の異能は大方、エンチャントか身体強化系だろ!」


 炎を纏いながら獣のように笑いヘルマンがそう言う。

 

 「まぁ、合ってるね」


 脳が胡桃と同等の大きさだと思っていたが、思ったよりも知能は低くはなかったか。


 「そんな雑魚雑魚異能で俺を倒せる訳ないだろ!焼き尽くしてやる!」


 ヘルマンが愉快そうに口元を歪めると、纏う炎が一段と大きくなる。

 確かに身体強化系の異能やエンチャント系の異能は現代の発展した科学技術で簡単に再現できる為、その因子を持つ者の大多数は、他の因子持ちよりも低く見られてしまう。

 ヘルマンの手元に頭ほどの火球が数個現れる。


 「炭になれ!」

 「そう熱くなるなよ」


 ヘルマンの手元から放たれる火球が俺に襲いかかる。

 放たれる火球は全て直線的で全てを完璧に見切り必要最低限の動きで躱わす。


 「こんなものか?」


 そう嘲笑するように俺が笑うと、ヘルマンが憤怒の形相で両手を頭の上に掲げて人よりも大きな火球を作り出す。


 「リゼ指揮官!止めてください!」


 ヘルマンが作り出した火球を見て青ざめたシェイラが必死にリゼに訴えるが、リゼに軽くあしらわれる。


 「ジィィン!!舐めるんじゃねぇ!!」


 ヘルマンがそう叫ぶと俺に向かって火球を振り下ろすのと同時に一瞬で近くの岩壁飛びつきに岩壁に片手の指をめり込ませて静止する。

 火球が当たった地面が大きく爆発して地面が大きく抉れる。

 火球を避けて岩壁に佇むジンの姿を見たシェイラが安堵する。


 「おいおい、殺すつもりだっただろ?一旦頭冷やそうぜ」


 そうヘルマンを見下ろしながらそう言うと、ヘルマンが驚きを隠さない様子で自分を見上げる。そのままヘルマンに笑いかける。


 「はい、お返しだよ」


 そうヘルマンに言った後にめり込ませた指で岩壁を抉り取り軽く握り締めて砕く。

 地面に着地をするのと同時にヘルマンの膝に向かって砕いて粒状になった礫を投げて、散弾のように広がる。

 高速で投げられた礫がヘルマンの膝を中心に当たり、当たった部分が血霧に変わる。その後も勢いを落とさずに飛び、ヘルマンの背後の地面や岩壁に当たり穴だらけになる。


 「ヤッベ、やりすぎちゃった、まぁ良いよね?ヘルマンも俺を殺すつもりでやってきたし。でも一応謝っておくよ、ごめんね」


 太腿の真ん中から下を無くしたヘルマンが何が起こったか分からないように地面に這いつくばり、自分を見上げる。

 数秒後自分の脚が大きく欠損した事に気づき声にならない叫び声をあげる。

 その様子にシェイラが顔を青くして怯え、アッシュが目を見開き、フィオナが顔を赤くしてジンに詰め寄ろうとする。ジンに詰め寄ろうとするフィオナを押し留めてリゼがヘルマンに近づく。


 「勝負ありだな。あとジン、可哀想だぞ」


 リゼがそう俺に窘めるように言うとヘルマンの欠損した脚に手を翳す。リゼの漆黒の虹彩が白く輝き周りに散らばった肉片や血がヘルマンの脚に集まり、時間が巻き戻るように再生し、そのまま破けた服までも元通りになる。ヘルマンが驚き脚を動かし、よろよろと立ち上がる。


 「再生?回復?の異能?」

 「んー違う」


 フィオナの問いを否定して、リゼが立ち上がる。


 「私の異能は時間の巻き戻し。ザイファ教会因子所持者異能能力査定課による認定は特色。授けられた名は『白銀の砂時計』だ」


 リゼが特色認定された者だけが所持する煌びやかで細かい装飾が施された指輪が括り付けられたネックレスを服の下から引っ張り出して言うと皆が息を呑む。

 

 「『白銀の砂時計』って国内に三名存在する特色のあの?」

 「うん、そうだよ」


 リゼがアッシュの問いにいつものような軽い声色で黄金の指輪を弄りながら答える。

 

 「ジンは知っていたの?その....リゼ指揮官が特色だっていうこと?」

 「知ってるよ」


 シェイラが酷く驚きながら俺に聞いてくる。まぁ驚いて当然だな。あんな朝っぱらから酒を飲み怠惰を貪る人が特色だとは思わないだろう。


 「ああ、知ってたよ」

 

 そうシェイラに言うとシェイラが興奮を隠しきれない様子でリゼに近づく。


 「あの!握手して良いですか......?」


 シェイラがリゼに恐る恐る手を差し出して、握手を求める。


 「良いよ、シェイラちゃん可愛いから大歓迎さ」


 リゼがシェイラに笑いかけながらそう言うと差し出された手を握りブンブンと上下に激しく振る。

 

 「さて、他に握手をしたい人〜」

 「「「........」」」


 シェイラ以外の者はどうやらまだ立ち直れていないようだ。

 可哀想に、国内に三人しか存在しない人類を超越した神にも等しいとさえ言われる特色が、あんなロクでなしだもんな。


 「........いないみたいだね」


 リゼが大袈裟にガックリと項垂れる。


 「まぁ、じゃ次は誰と誰かな?最低一回は誰かと模擬戦するよ。それと手加減とかしなくても良いよ、例え死んでも元どうりだから。大抵の人は正気を失ってたけど」


 悲しげな表情から一変明るくリゼがそう言う。最後の部分だけ声が小さかったが、気にしないでおこう。

 しばらく沈黙が続いた後にシェイラがおずおずと手を挙げる。


 「私の次行きます」

 「よし、シェイラ誰とやりたい?」


 そうリゼが言うと迷いなくシェイラが俺に歩み寄ってくる。


 「ジンとやります」


 シェイラの赤く澄んだ目に見つめられる。ヘルマンの有り様を見ても尚自分に挑んでくるとは。

  

 「シェイラちゃん流石にやめた方が良いよ.....」

 「やめません!もう決めました!」


 シェイラがそう言うとアッシュが慌てた様子で説得しようとするがシェイラは毅然とした様子で応じて引く様子はない。

 そうシェイラが言うとリゼの双眸が細まり、興味深げにシェイラを見つめる。


 「よし、じゃあジン相手にしてあげて」

 「はい」


 リゼにそう返して、シェイラと向かい合う。シェイラの赤い双眸をじっと見つめる。


 「よろしくね、ジン」


 シェイラがそう言って俺に微笑みかける。

 思わず笑みが溢れる。


 









 

 読み難いと思ったので、一人称を修正しました、本当に拙い文章で本当に申し訳ないです。

 これから精進していくので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 間違いの指摘や改善点などがありましたらコメントをお願いします。

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