第37話 聖杯の真実
朝露がまだ残る早朝、ルシファーが血相を変えて駆け込んできた。
「大変よ!」
黒いネグリジェが乱れ、白い肌が露わになっている。
「聖杯が...変化してる!」
「変化?」
真一が飛び起きる。
慌てて聖杯の保管庫へ向かうと、確かに異変が起きていた。
黄金色だった聖杯が、七色に輝いている。
「これは...」
アルケミアが驚愕する。紫のパジャマ姿のまま、計測器を取り出した。
「魔力数値が異常!」
「通常の1000倍以上!」
* * *
「どういうこと?」
エリザベートが聞く。黒のネグリジェから、豊かな谷間が覗いている。
「分からない...でも」
ルシファーが古い書物を開く。
「待って、ここに記述が」
『聖杯は七つの願いを叶えた後、真の姿を現す』
「七つの願い?」
「今まで何回使われた?」
セラフィーナが指折り数える。純白のパジャマが、朝日に透けている。
「美月ちゃんので一回...」
「いや、違う」
リリスが鋭く指摘する。黒のベビードールが、考え込むように揺れる。
「過去にも使われてるはず」
* * *
ルシファーが歴史を調べ始めた。
「千年前の大戦...一つ」
「500年前の大飢饉...二つ」
「300年前の疫病...三つ」
「他にも細かいのがあって...」
「美月ので六つ目!」
アルケミアが叫ぶ。
「あと一回使われたら」
「真の姿に!?」
その瞬間、聖杯がさらに激しく輝いた。
『我、目覚めたり』
聖杯から、声が響いてきた。
「喋った!?」
* * *
『永き眠りより覚めん』
『七つ目の願い、近し』
「ちょっと待て」
真一が聖杯に話しかける。
「お前は何者だ?」
『我は世界の調整者』
『バランスを保つ者』
「バランス?」
『然り。願いと代償により』
『世界の均衡を保つ』
セラフィーナが理解した。
「だから等価交換...」
「世界のバランスを」
『しかし、七つ目の願いは特別』
聖杯が不気味に輝く。
『それは我を解放する』
* * *
「解放って...」
嫌な予感がした。
『我は器に縛られし者』
『七つ目の願いにより』
『この世界を作り変える』
「作り変える!?」
全員が驚愕した。
「それって...」
『新たな世界の創造』
『古き世界の破壊』
「ふざけるな!」
真一が怒る。
「世界を壊させるか!」
『それが我が使命』
『千年周期の更新』
『逆らうことはできぬ』
* * *
重い沈黙が流れた。
あと30日で封印が解け、誰かが願えば世界が終わる。
「どうする...」
美月が震え声で聞く。白いワンピースを不安そうに握っている。
「簡単よ」
エリザベートが決然と言う。
「誰にも使わせない」
「30日間、完全防衛」
「でも...」
「他に方法はない」
アルケミアも同意する。
「聖杯を破壊することは不可能」
「なら、守り抜くしか」
* * *
作戦会議が始まった。
「まず、情報を制限する」
リリスが提案する。
「七つ目の願いのこと」
「誰にも知られちゃダメ」
「そうね」
セラフィーナも頷く。
「パニックになるわ」
しかし、ルシファーが不安そうに言う。
「でも、もう噂は広まってる」
「聖杯の異変に気づく者も」
案の定、その日の午後。
各地から使者が殺到した。
「聖杯を見せろ!」
「我々にも権利がある!」
* * *
「まずい...」
真一が頭を抱える。
各国の代表が、聖杯を要求している。
「冷静に話し合おう」
エリザベートが仲裁に入る。
「聖杯は危険すぎる」
「だからどうした!」
帝国の代表が叫ぶ。
「我々の願いを」
「叶える権利がある!」
「でも、世界が...」
「構わん!」
「新しい世界を作る!」
話し合いは平行線だった。
* * *
その夜、真一は考え込んでいた。
「どうすれば...」
「真一様...」
美月が寄り添ってくる。柔らかい胸が腕に触れた。
「私のせいで...」
「違う」
真一が優しく言う。
「これは運命だったんだ」
「でも...」
その時、ファントムが現れた。
「暗い顔してるわね」
黒いボディスーツで、窓枠に座っている。月光を浴びて、妖艶なシルエット。
「ファントム...」
「一つ、提案があるの」
* * *
「提案?」
「聖杯を盗んで」
「別の次元に隠す」
「別の次元!?」
ファントムが微笑む。
「私の秘密の一つ」
「次元を超える力がある」
しかし、ルシファーが首を振った。
「無理よ」
「聖杯は、この世界に縛られてる」
「持ち出せない」
「そう...」
ファントムも諦め顔。
でも、真一は閃いた。
「待てよ」
「聖杯が持ち出せないなら」
* * *
「みんなを集めてくれ」
30分後、全員が集まった。
「俺に考えがある」
真一が話し始める。
「聖杯は七つ目の願いで」
「世界を作り変える」
「なら、その願いを」
「俺たちでコントロールする」
「どういうこと?」
セラフィーナが聞く。
「30日後、封印が解けたら」
「すぐに俺が願う」
「『この世界を、より良い世界に作り変えろ』と」
全員が息を呑んだ。
「それは...賭けね」
エリザベートが言う。
「でも、他に方法はない」
こうして、運命の30日間が始まった。
次回予告:
「世界中から聖杯を狙う者が!」
「30日間の防衛戦!」
「やべー女たちの団結力が試される!」
第38話「聖杯防衛戦」、開戦!
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