第1-2話
「起きろー!もう8時だぞー!……ってあれ?」
「…おはようございます、随分とお元気で…」
「…寝てないのか?」
「家の中にそんなに知らない人が居ると落ち着かないものでね…」
「そう言うな、人生の危機を救ってやるんだから。」
(…改めて考えるとこんな訳の分からない奴に従う自分もおかしなものだが、悪くない感覚だから…それでいいだろう。)
「さて…お前は今日からここで色々学ぶ事となる。」
「…普通の学校じゃないですか。」
「周り見てみろ周り。」
「?」
基本下を向いて歩く彼には人の目線が見えなかったのだろう…人々の注目と喧騒の中心に自分が居ることに…
[見て見て…!あれって…!][ガチ神じゃん…!][隣のは誰なんだろ…!]
制服や巫女服を着た女子ばかりが自分達を見ている。
「…あんた有名人なの?」
「当たり前じゃ、地球ではそこらの小川の神だが…こちらでは巨大な河川の神様じゃぞ?超有名神だぞ?」
「というか…女子ばっかじゃないすか?共学じゃないんすか?」
「この世界は基本的に神に仕える者の修練にあるのだ。故に神と対話できる若い女、巫女が多くなる訳だ…まぁ神々の好みも多少はあるだろうから男は少ないな。全体の10%程度だろうか…」
「…つまり気まずい中孤独に過ごさなきゃあならない訳ですか…」
「わらわと接する様にやりゃいいだろう?それに加えてここに来るのは地球の人間だけではないのだからな、価値観の違う者ばかりだ。」
「あんたは…少しくらい気安くしてもいいって分かったから出来るだけだ…誰にでもこうする訳じゃない。」
(何じゃそりゃ?)
他愛ない会話をしながら向かったのは小さな応接間だ。
「よう!ルォナー!悪いな〜いきなり!」
「ええ、貴方が考え無しなのは昔からですから…もう慣れましたよ。」
(やっぱこの人は周りを振り回すタイプなんだな…)
「…貴方も大変ですね、彼女は大変お転婆な神ですから…」
「オイッ」
「はい、神様って皆こうなんですかね?」
「オイィ?」
「私も神族の端くれではありますが…一概に否定は出来ません…」
「え?な、なんか…スイマセン…」
「オイ!私がマトモじゃないみたいじゃないか!?」
「神など殆どがマトモではありませんからね、人からすれば私もそうでしょう…」
「まぁ今ん所平気ですよ…」
「…こほん、今回貴方は神の眷属としての修練を修める事となります。まぁ、そこまで厳しいものではありませんから…」
「そうだぞ?昔と比べて随分甘くなってな!昔は頭のおかしな修練者に溢れてたから苦行三昧でな…そこら中が血の池になってたぞ?神が止めなきゃ勝手にやり始める奴ばっかだったぞ?」
「…」
甘くなったとは言うが、彼女達の基準だろう…そんな中で僕は生きていけるかな?
────────────────
「…というわけで、今日はクラス選定程度だからすぐ終わるさ。」
「行ってきますけど…あんまり期待しないで下さい。」
(…とは言っても何を学べばいいんだ?俺はこういう事の基礎すら知らないんだぞ?掛け算を知らない奴に九九をやれって言ってる様なもんだぞ?)
「は〜い、最後尾はこちらで〜す列に並んでくださ〜い。」
列の先では現代的な器具による検査がされている。採血や視力に身長体重の測定…
(どっからどう見てもフツーの健康診断じゃねぇか!どういう事?)
なぜか受けさせられた健康診断…男子が少ない為か全く並ばずに済んだのは幸運だ。
「それでは、結果が出るまでお待ち下さい。」
(………その場で結果出るんだ…!?見た目はあんまり変わんないけど文明的には地球より遥かに凄いんじゃ…)
「巫宮さ〜ん」
「あぁ…はい。」
「あなたは
「はい…」
(来てみたのはいいが、暗い雰囲気だ…何ともいけ好かない感じだ。)
ドアを開く…ドアノブは氷の様に冷たい。
「おや…?今年は思ったよりも生徒が多い…」
そこに居るのはボロボロの黒い外套を着て、フードを深く被った見窄らしい者だ。
(…貧乏神にでもなるのか?)
周りのクラスメイトも殆どが不安げな暗い表情をしている。肌を全く見せず、フードの下にある筈の顔が見えないのだから…確かにあれは不気味な姿だ。
「ふむ…時間だな。自己紹介をしよう…」
そう言って少しフードを捲ったその姿は…
(…骸骨か。)
真っ白なしゃれこうべが瞳孔を光らせ、笑みを浮かべていた。壁に立て掛けられている大鎌と黒い外套…死神の看板とも言えるグリム・リーパーそのものだ。
「ワタシはロンデッド・ロディア…ご覧の通り、死神だ。気軽にロン先生とでも呼ぶといい。」
(もしかしなくても死神に適正があるって事だろうけど、雰囲気が暗いな…)
「今学期はこの冥クラスにここまで多くの者が集まったのは喜ばしい事だ。冥界の管理者はいつでも人手が不足しているからな…さて、そろそろオリエンテーションに…む?」
何やらファイルをペラペラとめくっては首を傾げている…
「…配布プリントを忘れたのでちょっと持ってくる。その間にお互い自己紹介でもしておくといい。」
(…堅苦しいイメージだが意外とポンコツなのか?)
「ふぃ〜…」
隣に座っている女子が大きく息をする。
「いや〜…凄い存在感だねぇ!本物の死神を目の前にすると凄く気圧されるね!」
「…?」
反対に座っている生徒は別の生徒と会話している…つまりこの人は俺に話しかけてきている…
(初対面の相手だぞ!?というか凄い陽のオーラ!陰気でジメついたこのクラスの雰囲気にそぐわない…!雷みたいに眩しいぞ…!)
「お、俺です?」
「うんうん♪私はミント・フィロ、よろしくね♪」
(う〜ん…暗い雰囲気の清涼剤だぁ…だからこそ余計に気味が悪いな!俺…馴染めるかな?)
続
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