自然体

 海馬君はやはり発達障害だった。

 海馬君が診断書を持ってきてくれたから分かることができた。

 私が次に何をすればいいのかなんて、分かりきってる。

 特別学級にいれてあげることだ。

 そこなら、いじめられることも、無理に笑うこともない。

 海馬君のお母さんにもこの前の電話で許可を取っている。

 あとは、クラスのみんなに伝えることだけだ。

「みなさん。」

「海馬君が、特別学級に行く事になりました。」

 みんなポカンとしてた。

 意外とみんな普通の子供だと思っていたのか?

 一人が笑い始めた。

 それに釣られて、みんな笑い始めた。

 お菓子で釣られる子供のように。

「今更かよ。」

「遅くね?」

「先生馬鹿なの?」

 海馬君も笑ってた。

 たぶんだけどみんなの言っている意味は分かっていない。

 私はみんなに言う。

「静かに!」

「遅いとかありません。」

「今が動くには最速です。」

 みんな一瞬静かになったが、また笑い始めた。

 その笑いを止めることはできなかった。

 特別学級まで歩く私と海馬君。

「海馬君。ごめんね。」

「最後にあんなに笑わせちゃって。」

 海馬君はなんでごめんねなの?と聞いてきた。

 その時、私は涙した。

 笑われる意味さえ、分からないで笑っていたのだと分かってしまったから。

 私は、海馬君を救えたのだろうか。

 いや、救えなかったのだろう。

 本当の意味で、救うことはどんな人に行っても難しいのに、分からない海馬君にやろうとするのは、とても、難しいと思うから。

 私は、大人として毅然とした態度でいたかったのに。

 痛くなっただけだった。

 自然体が一番いいのかもしれない。

 海馬君のように。

 自然体なのが。

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