おかし
警察は何してるの!
明らかに虐待だったでしょ!
おかしい。
なにかがおかしい。
確かめないといけない。
あの子供の正体を。
次の日。
私はあの子供を家に招くことにした。
お菓子で釣って。
ダメだと分かっているが、確かめたかったからしょうがない。
うん。
しょうがない。
まんまと引っ掛かったあの子供は居間で座ってお菓子に夢中だ。
そこで私は聞いてみた。
「昨日は何してたの?」
あの子供はこう言った。
「わかんないや。」
「おぼえてないや。」
私は首をかしげた。
何を言っているんだ?
憶えてないはずがない。
だって連れてかれた次の日だから。
私は混乱してた。
そこでもう一度聞いてみた。
「なにか憶えてることはないの?」
あの子供は不思議そうな顔をして、こう答えた。
「そういえばはたつしうがいってゆわれたよ。」
はたつしうがい?
なんだそれは。
もしかして、発達障害なのでは?
よく観察すると、中学生か小学生か分からないぐらいの背の大きさ。
この語彙力。
話し方。
まるで、背の大きさ以外は幼稚園児ぐらいに感じた。
私は、怖くなった。
なにも分からないからだ。
私のしたことがどれ程のことだったのか、分かりたくないからだ。
そんなこと分かっている。
今日、この子供は何を聞かれたのか、どこに連れていかれたのか、分からないだろう。
発達障害だったら、ね。
「おばさんなんでそんなこときくの?」
私は首を振って答える。
「なんでもないのよ。」
「そろそろ学校じゃない?」
「急いだ方がいいわよ。」
この子供は、そっか、とだけ言って家を飛び出していった。
お礼もせずに走り抜けていった。
まるで嵐のような子供だった。
それが発達障害によるものだとしたら、ほんの少しだけ悲しくなった。
頭からあの子供の笑顔が消えない。
私がどんなことをしたのか、分かってしまった気がして、怖くなってしまった。
明日は散歩やめよう。
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