第24話 斑目ハクア
ゴブリンダンジョンの深層にはとある施設が存在する。
そこはあるのはクランメンバーの生産施設。
「やぁやぁ皆元気かね」
ラウンジに現れたのは長身長髪、眼鏡にジャージ姿の女性。
斑目ハクア。
クランメンバーの1人であるが、彼女がここに来た経緯は少し特殊だった。
彼女のダンジョン職は錬金術師。
とても優秀なのだが、爆発癖があり様々な場所からたらい回しされた結果、このゴブリンダンジョンにたどり着いた。
生産職はスキルや素材を扱う為ダンジョン内に施設を作り作業する。
失敗や事故といった危険も当然あるが、ハクアの起こす爆発は規模が違った。
施設がなくなる程の失敗を頻繁に繰り返すのだ。
それによる施設の作り直しや、貴重な素材の紛失など被害が多く、彼女が生み出す利益よりも損失の方が上回る為、国内のほとんどの生産ギルドから出禁を食らっていた。
そんな彼女を受け入れたのがこのゴブリンダンジョンだった。
すでにボタンという前例があるのでダンジョンで爆発があっても今更なのである。
契約としてはダンジョンの一部を貸し出し、生産物はゴブリンダンジョン経由で販売する形となっている。
それ以外はハクアの行動は放置で施設を壊そうが何しようが関与しない方針だ。
ハクアの錬金術師としての腕は確かで、生産物の売り上げはゴブリンダンジョンの運営費の半分以上を賄えていた。
「コタローくん、また君の体液くれないかい?あ、メイくんのも欲しいなぁ」
「体液って言わないでください。毒ならいいですよ」
コタローとメイの毒液と水は錬金素材として優秀らしく、普段引きこもりのはずが最近せひりにここまでやって来るようになった。
「家に1人コタローくんとメイくん欲しいなぁ」
「ねぇねぇリンは?」
「リンくんは別にいらないかなぁ」
「コタロー、ハクアがひどい」
リンがコタローに抱きつく。
ハクアが来るたびこのやりとりを毎回するのがお約束となっていた。
「ひひ、そういえばもうすぐ私のラボのとこまでは近いんだっけ?そしたら今後は楽できるなぁ」
ハクアのラボがあるのは第14階層。
コタローたちの目指す最下層の1つ前だった。
第14層、ここもまた森の階層だ。
ゴブリンダンジョンは小さいダンジョンなので、コストの都合どうしても階層の環境がワンパターンになってしまうのだ。
ここにはハクアのラボがある。
本人曰く、すぐに見つかるとのことで木の上まで上がり周囲を確認する。
するととある一角だけ穴が開いたように地面がむき出しの場所があった。
おそらくそこにハクアのラボがあるのだろう。
その場所に近づくにつれ、襲いかかってきたゴブリンの数が徐々に減っていく。
正確にはコタローたちがハクアのいる場所へ行くと気づいたゴブリンたちが離れていったのだ。
どうやらハクアの起こす爆発にこの階層のゴブリンたちは巻き込まれているようで、その結果ゴブリンたちはハクアのラボ近くにはいてはいけないと学習したらしい。
コタローたちは自分たちが巻き込まれないことを祈りつつハクアのラボへ向かう。
森が開けた場所の中央にあるログハウス。ここがハクアのラボだ。
建物は頻繁壊れる為、材料が豊富にありすぐに作れるログハウスをラボにしたようだ。
中に入るとそこはきちんとした錬金施設になっていた。
素材は整頓されていて、道具もきれいに配置されていて失敗するような雰囲気ではない。
「やぁやぁいらっしゃい、待ってたよコタローくん」
そんな空間に現れたのはボサボサ頭、くたびれたジャージ姿のハクアだった。
彼女ならやらかしそうだ、そう思える説得力をその佇まいから醸し出していた。
今回ここに来たのはハクアにとある依頼を頼む為だ。
「中々面白いことを考えるねコタローくんは」
依頼内容が気に入ったらしく無事に受けてもらうことができた。
ついでにコタローとメイの毒液と水を納品する。
「やっぱりコタローくんは最高だね。どうだいここで一緒に暮らさないかい?お金の心配ならいらないよ」
「爆発する家に住むのはちょっと…」
「ダメです!コタローさんは渡しません」
「ねぇリンは?」
コタローがハクアに依頼したものは最下層のボス戦の切り札になる予定だ。
完成まで時間がかかるとのこと。それまではゆっくり過ごすことにした。
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