第4話 犯人A


 近くの大学に通う学生が、荒れ果てた廃墟を見ながら話し合っている。

 そうなのだ。正しくあの事件以来時間が止まってしまった祖父母の家、そう今井家はあの仲睦まじかった笑顔の絶えなかった頃が、まるで噓のように荒れ果て静まり返っている。


「オイ!この家1年前に一家惨殺事件があった家だろう?なーんか不気味なんだよなあ。深夜に自販機でタバコ買おうと、この辺通るけど……ゾゾゾーッと血の気が引くんだよな。ダチの話によると時折火の玉らしきものがゆらゆら揺れているってもっぱらの噂さ」


 快楽殺人(かいらくさつじん)とは、殺人自体が快楽で、最初は小動物、例えば猫などを殺すことに刺激を受け、そんな自分に苦悩しつつも一方で猫を殺すだけでは満足できなくなって次には解体を始め、やがては人間の殺人へと移行して、快楽を得る目的で殺人を行うが、それでも…殺人だけでは物足りなくなって、殺人と遺体損壊を行う場合がある。


 実は…岡崎市の「鳥川ホタルの里 」付近の橋の上から田村陽子さん75歳が、何者かによって橋の欄干から下に突き落とされた事件があったが、驚くことに田村陽子さんの遺体には体を切り裂かれた痕がクッキリと残っていた。この犯行は只の殺人事件に留まらない。遺体を切り裂き内臓を見ようとした形跡があった。要するは人間の体の中を見たくて快楽殺人を行なった可能性が浮上して来たのだ。


 それも「鳥川ホタルの里 」を訪れた見物客をあざ笑うかのような、「俺の正体を明かして見ろ!」と言わんばかりの大胆不敵な行為。


 山々コンビが怒りに震えている。


「忌々しい犯人目💢💢💢絶対犯人を捕まえて見せる!!!」

「許しがたい犯行です💢💢💢」


 🌃✨ ✨ ✨ ✨ ✨🌃


「ネズミに蛇、更には猫の解体を行ったが、やはりどうしても……人間の体の中が見てみたい。可哀そうだが、どうにも出来ない。欲望の歯止めが利かない。クックック!何よりも血を見ると興奮してゾクゾクする。ふっふっふっ!はっはっはっは!ああああああああ!興奮する。もっともっと……」


「ヤヤッ止めておくれ!キャ――――――――――――――――ッ!」

 

 こうして…意識が遠のく中、田村陽子さんの体は切り裂かれていった。


 それにしてもこのような正体不明の恐ろしいサイコパス犯人Aは、どのような半生を送ってきた人物なのだろうか?



 犯人Aは多くの山林を持つ地元有数の資産家で兄妹2人の長男として生まれ、小中学校時代は野球部で活躍し、中学時代には野球部の主将を務めた。また特に英語が得意で、2000年4月に入学した県立高校(県内トップの進学校)では「クラスの上位15番以内に入る成績」を維持しており、高校時代まで地元では「スポーツ万能の優等生」として名を知られていた。一方で両親は子供に甘く、妹が体が弱く喘息もちで犯人Aに期待が集中して勉強の為だと言えば「小遣いを欲しがるだけもらえるような家庭環境」で育った。


 高校を卒業した犯人Aは「教師か公務員になりたい」と大学受験に臨んだが、志望していた筑波大学の推薦入試に加えて第二志望の愛知教育大学にも不合格と立て続けに失敗し、滑り止めのつもりで受けた私立大学のⅯ大学教育学部にしか合格できなかった。犯人Aは大学受験に失敗して以降は「こんなⅯ大学ではたとえ教師になっても尊敬されない」と大きな挫折感を味わい、このころからは高校時代までの友人たちと音信不通になり同窓会にも出席しなくなった。また3流大学にしか入れなかったのに「俺は筑波大学を推薦で受けたほどの人間だ。お前らとは違う」と同級生を見下しつつ、授業にはほとんど出席せず飲酒・ギャンブルにのめり込んだが、4年生になるとかつて見下していた同級生たちが国家公務員・都道府県職員として就職した一方で自身は留年が確実となり、強い挫折感を抱えていた。

 

 犯人Aは強い挫折感のせいからなのか、いつの頃からか人の苦しむ姿を見て興奮するという性癖を持つようになった。それと関連して衝動的に暴行を加えないと情緒不安定に陥るという性癖があった。なので彼女とデート中に首を絞めて苦しむ姿にオーガズムに達するという厄介な性癖の持ち主だった。


 こんな歪んだ性癖へと走るきっかけとなったのは、少年時代に読んだある連続快楽殺人を主題とした推理小説の中で、犯人が少女の首を絞めて失神させる場面に性的興奮を感じたのが始まりとされている。この小説を読んだことをきっかけに、人を窒息させて死に至らしめることで、快楽を得ようという性的欲求を抱くようになった。


 犯人AはIQ128と非常に高く、30年以上前の出来事も絵画のように細かく描写することもできた。


 そういった中で、2017年12月頃に自殺系サイトに目をつけた犯人Aは、多重債務(すでにある借金の返済に充てるために、他の金融業者から借り入れる行為を繰り返し、利息の支払いもかさんで借金が雪だるま式に増え続ける) やいじめなどを苦にした自殺志願者を「集団自殺しませんか」と言葉巧みに騙し、なぶり殺しにすることで自殺を「手伝い」、自らは死刑になる形で後を追う、という「無理心中目的の説得ずくの快楽殺人」という手口に及んだ。


 更には2018年3月頃犯人Aは、インターネットの自殺サイトを利用して知り合った女性B子((当時25歳)を、同日午後8時30分頃、河内長野市加賀田の山中に連れ出し、停車中のレンタカー内でB子の手足を縛った上に鼻と口などを複数回塞ぐなどして繰り返し失神させた。その後、午後10時頃にB子の鼻と口を塞いで窒息死させ、衣服をはぎ取った後にB子の死体を近くの河原に掘った穴に遺棄した。


 B子を殺害後、犯人AはB子の遺族から現金500万円を脅し取ろうと計画。翌日午後0時48分から午後1時09分頃、誘拐と見せかけ河内長野市内の公衆電話とB子の携帯電話から脅迫電話をかけたが、現金を得ることはできなかった。


 犯人Aの手口は巧妙で、自分へ警察の捜査が及ばないように被害者を騙して自殺サイトの使用履歴をパソコン上から削除させたり、「玄人(=自殺未遂経験者)からの助言」として遺族宛てに遺書を書かせたりし、殺害についても被害者を苦しめるために何度も被害者の口を塞いで失神させては蘇生させたり、ラップフィルムやゴム手袋を利用して証拠を残さないようにしていたりと悪質であると言われている。更には被害者を殺害する様子を写したビデオテープや、被害者の苦しむ声が録音されたテープも自宅倉庫から押収された。


 こんなとんでもない男だが、河内長野市内の犯行が多かったが、どうも……亡くなった祖父母の家がその近辺にあるらしく、近辺一帯の道路事情に精通していたようだ。


 停車中のレンタカー内で被害者の手足を縛った上に、鼻と口などを複数回塞ぐなどして繰り返し失神させては蘇生させたりを繰り返す。その後鼻と口を塞いで窒息死させる手口が多かったが、最近は殺害方法も大胆かつ巧妙になり残酷さも増してきている。


 殺人空想が増大して行き「体の中が見たい」そんな恐ろしい境地に達してしまっていた。


 だから…この2つの事件は1つは田村陽子さん事件だが、お茶に睡眠薬を混ぜ飲ませて眠らせ身体を切り裂き、生きている内臓を目の当たりに興奮してオーガズムに達していたようだ。


 どうも……調べていく内に田村陽子さんと犯人Aは顔見知りだったらしい。だから疑いもなくお茶を飲みながら出掛ける事も出来た。


 殺害方法は益々大胆かつ残酷に様変わりして行った。


 これは犯人のサインかもしれない。

 次から次に快楽殺人に及ぶ自分を、タガが外れて益々悪質兼巧妙になる自分の行動を止めて欲しくて、この様な大胆な行為に出ているのかもしれない。


「昨日の午後9時過ぎに岡崎市の「鳥川ホタルの里 」付近の橋の上から田村陽子さん75歳が、何者かによって降下に突き落とされました。今現在も懸命な治療が行われていますが、予断を許さない状況だと言われています。全く酷い話です。あんな丁度『鳥川ホタルの里 』から帰路につく車でごった返している状況下、よくそんな大胆な行動がとれたものです。更には満点の星と、月明かりと、蛍の灯りに照らし出され、ハッキリと突き落とされる場面をこの目で見たという住民の訴えも判明しました」


 更には、小5男児が祖父の家に行くと言って昼過ぎに家を出た後、ある男と偶然出会った。男は男児に対し「青色に黒と黄色に赤の超綺麗な蝶々あげるからついておいでよ」といって近所の高台に誘い出し、その場で絞殺して側にあった廃墟に遺体を隠した。そして…次の日、その男は前日の殺害現場の廃墟を訪れ、男児の遺体の首を金のこぎりで切断、頭部のみ家に持ち帰った。翌朝、被害男児の頭部が愛知県岡崎市✕✕町の空民家の庭で発見された。目は見開かれていた状態だった。


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