第9話 田中のたたかい

龍鹿市に向かう前に作業所に電話しなきゃ。

順治がスマホを取り出すとちょうど着信が鳴った

♪海と自然豊かなこの町で〜♪

順治たちが住んでる島の町歌だ。島が大好きで着メロにするくらいになっている。


「はい、山崎です」

「山崎くんお疲れ様。実は伝えたいことがあって電話したんだよね」

「なんですか?」

「実は田中くんが入院した。どうも病気が再発したみたいでね」

「そう、だったんですね。わかりました。お大事にって伝えてください」

「まだ面会はできないけど病院は伝えておくから。2週間くらいしたら会いに行ってあげなよ」

「はい。あと明日以降の作業所なんですけど…」

順治は作業所に欠席の連絡をいれたあと玲奈が用意したリムジンに乗り込み龍鹿市に向かった。


「何者なんだ君は」

田中は病院の個室でじぶんそっくりな男に話しかける。物理的に侵入が不可のはずの場所にたつソレを見ても冷静でいられたのは自分の幻覚であると自覚してるからだろうか。

「オラハオラダデ」

「え、山ちゃん?いや違う、お前誰だ!」

ソレは山崎順治に風貌の似た男に変化した。しかし顔は曲がり肌も荒れており、酢っぱい悪臭を放ってる。自分がしってる順治ではない。

「オバエハオラヲフミダイニシテオラガイキヅライシャカイヲツクッタ。ツグナイヲウケロ」

「何をわけのわからないことを…ウッ!」

突然田中の脳内に膨大な情報が流れ込み気を失い…自分が半透明になりとある世界をみていることに気がついた。


「あれは…誰だ?」

田中と親しげに話す女性、どうも親族なのだろう。そこで田中は喫茶店を開きしあわせそうに暮らしていた。

その客に順治のお父様も来客している。しかし彼は自分の知ってる顔よりやつれていた

『田中くんに嫉妬して頭がおかしくなり他者に迷惑をかけ続ける生活をしている』そう聞こえた


「これが…僕の都合のいい世界だとでもいいたいのか?」

「ソウダ。オバエハオラヲフミツケテヒトリダケシアワセモノ。オバエコソゴーニンヤロ!」


「…君が望む世界はなんだ。この世界の順治くんはそれなりに幸せだと思うが。それより君が振る舞いたい世界があるのか」

「ミセテヤル」


またも視界が歪み新たな世界に飛ばされたようだ

「あれは…なんで島の砲台が現在も稼働してるんだ?」

田中たちが住む島は旧海軍が設置した砲台跡が多数存在し、戦争遺構マニアが観光に来る。

そんなものが現在も稼働しているのだ。


ここは戦争に勝利した世界。布酢怒に都合のいい世界。抗うものを徹底的に弾圧したファシズムの嵐が吹き荒れる世界である。

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