ER:MoA

あごだしからあげ

　※この物語はフィクションです。作中の人物、団体は実在の人物、団体と一切関係なく、また法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

ようこそ、狂人よ。

私の名前はシルヴィア。

この度は私の用意した戦闘演算システム“エンドレスロール”の戦闘技能検証プログラム“MoA”にご参加いただき、本当にありがとうございます。

おや……？

あなたは、フィリアが熱心にリソースを割いていた……そう、確か“マイグラント”と言ったはず。

であれば話が早い。

エンドレスロールがどういったものかも、よくわかっていると思います。

ですが、あなたのような狂人が、この物語をまた眺めていることでしょう。

チュートリアルということで、私が説明したいと思います。

“エンドレスロール”はその名の通り、世界のあらゆる事象を記録し、そのデータを元に様々な可能性を演算、戦い合わせるシステムです。

あるはずのない未来、有り得たかもしれない未来、巡り合わなかった強者……そういったものをぶつけ合わせ、最強の可能性を見出す。

それが、エンドレスロールの役割です。

ええ、あくまでもシミュレーション……仮にあなたが負けても死ぬことはない。

ですが、実感できる焦燥、勝利の感覚、それらは現実とそう変わりません。

そろそろ本題に移りましょう。

今回の相手は、ガイア製薬の一般的な探索部隊です。二足歩行兵器“ディヴァルキューレ”数機、隊長となる四脚騎兵“エインヘリアル”で構成された、世界樹海での一般的な作戦行動の最小単位部隊となっています。

それでは、検証を開始しましょう。

　エンドレスロール　？？？

　周囲が明転し、ここが金属質の広大な正方形の内部だということがわかる。左腕の強化パイルバンカーの蒸気を上げながら装着し、前方に突然現れた二足歩行兵器四機と、四脚騎兵が一機を捉える。

「敵を捕捉！」

　二足歩行兵器の内の一機が叫び、四機がそれぞれ動き出して散開しながらアサルトライフルを連射し、四脚騎兵がその場で構えてグレネードガンを放ってくる。こちらは瞬間的ブーストを左に行いながら全身のブースターを解放し、全速力で突進して二足歩行兵器を蹴り飛ばし、素早く反転しながら四脚騎兵にチャージした強化パイルバンカーを激突させて一撃で姿勢を崩し、それを踏み台にして加速しつつ右手のアサルトライフルを放って二足歩行兵器を一機墜とし、右肩の二連グレネードキャノンでもう一機墜とし、チャージした強化パイルバンカーを再び四脚騎兵に当てて吹き飛ばし、それで最後の一機を破壊する。

『ふむ……流石、フィリアがあそこまで執心していただけはありますね。この程度では相手にならないようです。

　わかりました。

　次からは良質なデータを得られるよう、なるべく強敵を用意しておきましょう。

　今回の検証を終了します。お疲れ様でした』

　視界が暗転していく。