第8話「……やっぱり、あたしらはバンドだろ」
アビとの冷戦は3日続いた。
スタジオにも行かず、学校でも目を合わせない。
まるで中学生カップルの喧嘩みたいだ――って、自己ツッコミしながらも、胸のもやもやは消えない。
昼休み、購買で買った焼きそばパンをかじっていると、視界の端にアビが現れた。
「……それ、半分よこせ」
「は? なんで?」
「バンドメンバー割引」
「そんな割引ねーよ!」
久々の掛け合いに、ちょっとだけ頬が緩む。
でも、まだ素直になれない。
放課後、アビが私を強引に音楽室に引っ張り込む。
机の上には、ベースと、私が書きかけて放置した歌詞ノート。
「……これ、続き、書けよ」
「なんであんたが知ってんの?」
「おまえがロッカーに入れっぱにしてたから。開けたら“LOVE is the bond of perfection”って出てきて笑ったわ」
「笑うな!」
でもアビはすぐに真剣な目になった。
「ベスティ、猫さんに影響されるのはいい。でも、それだけじゃダメだろ。おまえの声は、おまえが一番知ってんだから」
その一言で、胸の奥がじんわり温かくなる。
私はノートを手に取り、アビの目を見て言った。
「……じゃあ、あんたも手伝えよ」
「しゃーねーな。ほら、コード進行はこうだ――」
ベースの低音が響き、私のメロディがそれに重なる。
音楽室の外は夕焼け色。
不器用な二人の音が、少しずつ重なっていく。
曲が終わった瞬間、アビが言った。
「……やっぱり、あたしらはバンドだろ」
「うん。絶対、売れてやる」
笑いながらも、私は心の中で泣きそうだった。
つづく
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