『旅の小話:御主人様が寝静まった後の相棒』
「それじゃあリル、私寝るね」
「はい、お休みなさい。ティゼル様」
少しだけ、私の秘密を話しましょう。私、精霊リルの、御主人様には内緒にしている事を。
私の"秘密の時間"はティゼル様と国に滞在している時のみ訪れます。そして、時分は必ず夜。我が御主人であるティゼル様が寝静まった後で始まるものです。ここで1つ勘違いしないで欲しいのが、私は別に変態ではない という事です。私が精霊という存在である事と、ティゼル様とは契約を交わし合った相棒であり彼女とは一心同体に近いものである事。この2つの因果関係から私の"秘密の時間"は生まれています。
ちなみに、"秘密の時間"なので、御主人様には私のやっている事は特に伝えていません。伝えた場合、まだ年齢的に未熟な彼女はきっと顔を真っ赤に染めて取り乱すに決まっていますから。精霊の魔力補給は主に草花から という話はそこに少しだけ付け加えるのならこうなります。
ー契約を交わした者同士なら、精霊は人から魔力を補給する事が可能。いずれこの事実は彼女に伝えるつもりですが、今はまだ、私だけの秘密という事で。
さて、
△▼△▼
宿屋のベッドの上。先程私にお休みの挨拶をして、ふかふかのシーツに、白い枕に頭をうずめて
旅路の最中は普段ずっと隠しているものである、彼女の存在する輝く証。私は始めてその姿を見た時から鮮烈に灼きついて離れた事はありません。端的に言ってティゼル様大好きという話です。
ティゼル様に合わせるようにその三角形を折り畳むミミと、長い川を形成するように白いシーツの上を垂れている長く丸い尻尾。川といえば、ティゼル様の黄色い髪も滑らかに流れているようで見入ってしまいますね。それと、ティゼル様が布団を被っていないのは寝ている最中に蹴飛ばしているからです。布団さんはベッドの端に追いやられて少し可哀想でした。寝相の悪さは御主人様補正で見なかった事にしています。
寝顔が本当に天使のようでした。
ティゼル様が呼吸をする度、私の方が緊張でどうにかなってしまいそう。頬に触れたら赤ちゃんのように柔らかそうです。ーって駄目駄目私!こういった妄想ばかりだと変態に成り下がります。私は変態ではありません。ティゼル様を愛している彼女に従順な相棒精霊なのです。(既にやばい事には気付いていない)
私のすべき事は御主人様に接近して、魔力を少々頂くだけなのです。
……と、いう訳で。
私はある魔法を発動します。
ちょっとした大魔法です。これの存在は、まだティゼル様にはお話しもお見せもしていません。何故なら、とても驚かれるかもしれず、一度に使用する魔力も多大だから。魔力補給と矛盾していると思われるかもしれませんが構いませんし関係ありません。御主人様への愛に勝るものは存在しないのです。(くどいですが変態的な意味ではなく)
「ティゼル様、失礼します……」
そうして私はベッドへ近付いてー。
△▼△▼
私が変なのか、それともリルが変なのか。どっちかは分からない。けれど、1つ言える事は国に滞在してる間、リルは時々しどろもどろになる事が多い。特に私が起床したタイミング。リルは何か言いたげに、でも渋っているような変な態度になる。
寝てる間の事なんてほとんど記憶が無い。私の場合は眠りが深いからね。だから寝相が物凄く悪いから怒ってるのかなー?なんて思って聞いたりもしたんだけど……。
「リル、私の寝相のせいで怒ってる?もしそうだったら、ごめんね?私改善するからー」
「は?寝相?何の事ですか?というか私怒ってないのであしからず!」
「あしからず!?……やっぱ怒ってるじゃん」
「ティゼル様は存在が罪なんです」
「私何かしたの!?」
"ぷんすか"しながらそんな事を言うから、私も訳が分からない。照れ隠し?のようにも見えるけど……リルは私が寝ている間に何をやっているのだろうか。
うーん……相棒で精霊なリルの事が分からない……。
『旅の小話:御主人様が寝静まった後の相棒』END
【補足】
今回は小話ですが、少し後のお話の導入のような感じになっています。
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