あらすじ

19世紀のパリ。異国からの留学生Étrangerは毎日、薔薇色の邸宅の前で足を止め、窓辺に佇む「貴族の令嬢」に見とれていた。彼は知る由もない——それが人形師の青年Théo Gauthierが制作した、自身の女装をモデルにした人形(Mademoiselle)であることを。


ある日、Étrangerが衝動的に邸宅に侵入すると、真実は彼の幻想を打ち砕いた。しかし、さらに奇妙な展開が待っていた。Théoはこの作品への賛美に感謝し、自らが人形と同じドレスを着て、本物のMademoiselleとして挨拶に現れたのだ。


Étrangerはこの真実を意図的に無視し、狂喜して「Mademoiselle」と街を散策した。だが彼は気づかなかった——毎回の外出が精巧な時間管理の上に成り立っていたことを。やがてÉtrangerの頻繁な訪問で作品が完成できなくなったThéo。そこへÉtrangerは突然の家庭の事情で帰国を余儀なくされる。


数年後、パリに戻ったÉtrangerが見たのは廃墟となった薔薇の邸宅だった。壁には薔薇のように鮮やかな赤で「Merci」と「Adieu」の文字。中央には朽ちたMademoiselleの人形、そしてクローゼットには空のドレス掛けが——それらが人形師の去就を静かに物語っていた。


そして最終的に、Étrangerは幻影の中でThéoの姿を見るのであった。

(Fin)

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