第5話 由走兵

「大丈夫ですか?」


不意に声をかけられてちょっとドキッとした。


「は、はい、大丈夫です、、、」


目の前にはとても綺麗な若い女性が立っていた。


「あなたは、burger counter《バーガーカウンター》の店主ですよね。なぜこんなところに?」


「え、あ、知ってるんですか?」


「はい、良く家族と訪れていますよ。とてもおいしいです」


「あ、ありがとうごさいます、、、!」


びっくりした。

この間の門番長といい結構自分の店に来てくれている人は多いんだなぁ。


「ちなみに貴方は?」


恐る恐る彼女がどういう人なのか聞いてみる。


「私ですか?そんな名乗るほどの者じゃないのですが、、、」


出たー、本人は無自覚だけど本当は結構ちゃんと凄い人が言うお決まりの定番セリフ、『名乗るほどの者じゃない』

これ言ってる時点で『名乗るほどの者じゃない』どころか『堂々と名乗れるほどの者』なんだよなぁ。


「私は一般の由走兵ゆうそうへいです」


あぁれ、普通だった。


由走兵ゆうそうへいっていうのは国家を中心に街中を守っている傭兵よりも立場が下でいろんな地方の街の外を基本自由に周っていて厄介事やトラブルの鎮静に携わっている。

まぁ、人の捉え方によるけど、基本的に由走兵ゆうそうへいは給料が少ない代わりに戦争や危ないところに駆け出されない結構自由な職で、それでも最低限の生活はできるので最高の職だ!っていう人もよく見かける。

まぁ、人によるけどなぁ、、、(2回目)


「それで、なぜこんなところにいるのですか?」


「えっと、食材調達です。食材にはこだわりがあって、自分自身で採りにいって厳選した食材を使いたいんです」


「なるほど、どうりであなたの作る料理はどれも美味しくてオリジナリティが高いのですね」


さらっと褒められてなんだか嬉しい。


「まぁ、ここに食材調達にくる料理人はあなたが初めてですが、ガイラ地方の東エリアには調達に行く料理人はたくさんいますし、ここだから侵入禁止という原則もないので、そのまま続けてもらっていいですけど気をつけてくださいね」


「何にですか?」


「最近は魔物の活性期です。怪我とかしないように気をつけてくださいね!」


そうか、今は活性期だったか。

活性期というのは、魔物がより凶暴になる時期のこと。原因はよくわかってないけど、学者によるとこの時期によく咲く花の花粉が魔物に敏感に反応して正気を吸ってしまうとか。

となると、この期間は『麻婆山まーぼーざん』に行くのは無理そうだな。まぁ最初から行く気はなかったけど。


「ちなみになんですけど、私も通告が入らない限り自由なので一緒に行ってあげてもいいですけど」


「えっ?」


急な提案のびっくりした。

確かに、この時期に安全に食材調達をするにはある程度守ってくれる人がいると安心して集中できる。

しかもこの時期はすぐに終わるわけではないので、レストランの食材在庫に影響が出るかもしれない。

だとするなら、、、


「お願いしてもいいですか?」


「ん!いいですよ!」


彼女はとても快く受け入れてくれた。

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