第3話:小鳥遊君は見た!


小説や漫画の世界だけかと思っていたのに……。


「ぁっ……」


姉さん、事件です。


俺は、空を見詰めた。


「イイだろ?」


俺は、見ているワケで……。


そう。


俺の好きなやつのリアル版を。


しかも、キスしてる。


しかも、ディープなやつを。


「……や……ぁ」


「愛してる」


か細い声に、男は睦言を……。


え、エクセレント!


「って、なんでやね」


「しー、気づかれるよ。あの恋人達に」


「ふぐぅ!」


興奮気味に自分自身にツッコミを入れようとした。


だが、後ろにいる誰かに俺は頭を抱えられて、開いている方の手によって口を塞がれた。


しかも、俺、バレないように小さくなろうって、しゃがみ込んでいた。


だから、強く抱え込まれて、後ろの誰かの方に身体の重心が傾く。


しゃがんでいただけなのに、今や完全に尻餅――――と言ってもゆっくりと地面に尻を着いてしまった。


ゆるまった相手の手に、口が自由になって反論しようとする。


「なん」


「しー。だから、恋人達に気づかれちゃう」


続き見てたいんでしょ?


相手はまた手で俺の口を塞いで、耳元でそう呟いた。


「んん!!」


少し遠くで聞える、くぐもった声に我に返った。


そうだった。


静かにしないと、だった。


わかった。と返事をするように、俺の口を塞ぐ手に触れると、それがわかったように解放してくれた。


俺は、ホッと息をつく。


って、誰だ。


後ろの奴は。


そう思って振り振り返ってみた。


「ぁ…音無君?」


そう。


そこには、皆曰く、オタクルックな音無君が俺を見て微笑んでいた。


「コンニチハ。小鳥遊君」


そして、俺の共犯者。


ああ、何か、イヤな予感がする。

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