ハナノニワ/死にたい気持ちが花になる話

4to

第1話 死神は美しい花がお好き




君は知っているだろうか?


人が死を願う時に咲く花のことを。




うずくまり、動けなくなり、時には涙を流す人間たち。そんな時足元に咲く花、それは、『僕たちが連れて行ってもいい』合図だった。


僕たちはそれが彼らの足元が動かなくなるまで咲くのを待ち、動けなくなることを見計らって花の根ごと連れて行く。あちらに。


美しい花に囲まれた最期は素敵だ。だけど、根っこが邪魔だといつも思う。花は美しいのに、足を絡め取られた根は綺麗じゃない。


僕のポリシーに反するなといつも思っていた。



ある時僕は気がついた。

動けなくなるまで咲いてしまう前に、摘んでしまえばいい。


引き寄せられる花の気配、1人の人間の足元の蕾が花開く。真紅の花は、目に鮮やかで僕は嬉しかった。一つ、また一つと摘むたびに花は美しさを増すようだった。




そうだ、これで庭を作ろう。


そう思い立って、僕は摘んだ花を水につけた。少しずつ、少しずつ根は育つ。

よく育ったところで土に植えてやると、嬉しそうに夕露を垂らして答えてくれた。


それから僕は、僕を呼ぶ人たちを見つけては花を摘んだ。乱暴に根ごと連れて行くこともできたけど、彼らを見ていて僕はいつも思っていた。最期を決めるのは僕じゃないだろう、と。





「君の死にたいは、まだ”弱い“よ」



ある時そう告げた制服姿の少女は、目を見開いて諦め切った顔をしていた。



ここで強引に連れて行くと、上からも褒められるけれど、僕はそうしたくないんだ。何故かって?

救いのヒーローになるなんてまっぴらごめんだからさ。僕はただ美しいものを見たり集めたりするのが好きなんだ。


僕が欲しいのは、庭を賑わせてくれるその美しい花だ。

庭を彩り、葉を採取し、美味しいハーブティーも入れられる。


いつしか庭は色とりどりの植物でいっぱいになっていた。




あの子が呼んでる。


あの日の制服の少女が、そこにはいた。もう制服は着ていない。あの頃より髪も伸びていた。

弱々しく、だけど強い目をして僕を待っていた。


決めたんだね、僕は知っていた。



大きな花束をひとつ、差し出した。

これまで、彼女の足元から摘んで、庭に植えてたくさん花を増やしてくれたその花たちを。

「……なに、これ」

ほんの少し揺れた瞳は、僕をまっすぐ見つめた。

「君のこれまでの”死にたい気持ち“の全部だよ」

「こんなに綺麗なわけないわ」

少女──改め『彼女』は胡散臭そうに苦笑いをした。


「これは、死にたいと思いながら君が生きた回数と同じなんだよ。──…よく生きたね」


僕はそう言って少女の手を取った。




僕の事は、きっと誰も覚えていない。

でも君たちの花が咲いた庭のことを、僕はずっと覚えているよ。

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